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幸せの在り処  作者: yukko
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忍の想い

千代が自室へ入って行ってから、忍と弥生は帰宅した。

車に乗る前に数馬が丁寧に頭を下げて「ありがとうございました。」と言った。

車が戸川本家から出て行くまで数馬は頭を上げなかった。

一緒に居たのに、会話は無かった。

帰る時の「ありがとうございました。」と数馬が言っただけだった。

それが寂しくて悲しかった。

忍は戸川本家で数馬の姿を見た時、胸が高鳴った。

ただ、ひたすら頬が染まっていくのを隠そうと必死だった。

先日のお見舞いの時も同じだった。

目を離すことが出来ず、それを誰にも気づかれないようにしていた。

頬が染まらないように、と思っていた。

そんな中、数馬が庇ってくれた時、忍の胸に暖かいものが流れた。


今日、結婚していた頃、数馬がどんなに大変だったかを次郎から聞いた。

一昌は妻の可那子の願いを叶えたくて、スーパー経営だけ絵ではなく不動産などの多角経営を行った。

その中でも可那子の願いは「オーケストラが演奏する劇場経営」「美術館経営or画廊経営」「乗馬経営」の3つだった。

3つとも一昌は経営した。

土地を買い、建物を建て、そしてオーケストラを作り………美術品を購入し……馬を買った。

その全てに人材が必要だった。

そして、全て破綻した。

費用対効果が無かったのだ。

導入に多額の費用をかけても、回収出来なかった。

この破綻の後で起きたのが、忍の父が亡くなった事件である。

スーパー部門は一郎と次郎が回復させたが、破綻した事業は撤退するしかなかった。

その最中に数馬は社長就任したのだ。

数馬にとって人脈を作ることも今より重要だった。

残った部門からは解雇者を出さないことが数馬にとって大切なことだった。

結婚当初、忍は大学生だった。

二度の流産は数馬にとって悲しかったが、その頃は会社経営が何よりも優先していた。

そして、その頃、数馬の傍に居たのが、土屋華蓮だった。

次郎の話を聞いて、忍は数馬のことを知らなかったと思った。

今は………数馬のことを知りたい!と思っている。

もう忍は自分の気持ちに嘘を吐けなくなってきている。


「数馬さんに会いたい!」

「私から会うのは、いいんだ。」


そう思ったら、忍は今から直ぐにでも会いに行きたくなった。

今日、会ったが、会ったうちに入るのか分からないほど接点が無かった。

忍は「会いに行こう。」と決めていると、それが言葉として口から出ていた。


「忍~、お風呂入って!」

「はぁ~~い。」


忍は明日にでも会えるかどうかを相馬に聞くつもりだ。

恋を一歩前に!

それが今の忍の想いだった。

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