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幸せの在り処  作者: yukko
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静と可那子

岩居静が数馬の傍に居た忍を調査した。

数馬の元妻だと分かった。

父親が数馬の祖父の専属運転手だったことを知り、静は憤った。


「なんということでしょう!

 数馬さんの元妻が、あろうことか運転手の娘だなんて……。

 数馬さんに相応しくありません。

 そんな方だから離婚なさったのね。」


岩居静は父親から数馬を諦めるように言われているが、父親の言葉を無視している。

そして、自分の都合が良い方に捉えている。


「そうですわ。数馬さんのお母様にお願いしましょう。

 あの方が数馬さんに二度と近づかないように……。

 数馬さんのお母様から青木忍さんにお話して頂けばいいのです。」


そして、早速、可那子の元を訪れた。

可那子はこちらで心臓の検査を受けた結果を聞いた後にアメリカへ向かう。

可那子も、もう一度息子と静を会わせて正式な婚約に至らせたいと思っていた。


「静さん、また数馬に会う機会を私が持たせて頂きます。」

「ありがとうございます。」

「それから、忍には私の方から数馬に近づかないように釘を刺しておきます。ご安

 心下さいませ。」

「まぁ、何から何まで本当にご助力頂き、心より感謝申し上げます。」

「まぁ、そのように堅苦しいご挨拶は不要でございますわ。

 何と言っても、私が嫁と呼ぶようになるのは静さんですわ。」

「戸川のおば様………嬉しゅうございます。」

「静さん、もう戸川のおば様ではございません。

 お義母様とお呼び下さいませ。」

「……宜しいのでございますか?」

「はい。」

「では………お義母様………恥ずかしい……ですわ。」

「初々しくて愛らしい嫁ですこと……嬉しいですわ。」


それから、二人は早速、数馬と会う日時を決めた。

数馬不在で……。


◇◇◇◇

そして、可那子は忍の家を訪れた。

車を降りて初めて見る長男の元嫁の実家だった。

降りて直ぐにハンカチを口と鼻に当てた。


「まぁ………こんなに場所ですなんですね。

 エレベーターは何処なの?」

「奥様、こちらの団地はエレベーターがございません。」

「では、どのようにして行くのですか?」

「あの階段を使って上がります。」

「階段ですって………エレベーターすらありませんの?」

「はい。」


階段も狭く……可那子は「こんな所に人が住んでいらっしゃるの?」と執事に聞くほどの驚きだった。

団地を生まれて初めて見た可那子だった。

⦅こんな所で育った忍さんは、数馬の妻に相応しくないわ。離婚出来て本当に良かったこと……。⦆とつくづく思った。

青木弥生の玄関を見て再び可那子は驚愕した。

⦅こんなに小さな玄関ドア、見たこともありません。それに古めかしい錆まで………。⦆と一瞥した。

執事がチャイムを鳴らすと、中から「はい。」と声がして、玄関ドアが開いた、

弥生と忍が出迎えている。


「奥様、わざわざ御出で頂きまして誠にありがとうございます。

 狭い所ではございますが、どうぞ中にお入り下さい。」

「そうさせて頂きます。」

「どうぞ、こちらへ………。」


可那子が通された部屋は六畳だが、団地サイズの畳なので、可那子にとっては四畳半くらいに感じた。

仏壇があった。

その仏壇には弥生の夫の遺影が飾られている。

舅の一郎と数馬を守り死んだ運転手・青木誠二郎の遺影。

それを見た可那子は眉をひそめた。

その部屋の上座に座った可那子は、直ぐに話し始めた。


「単刀直入に申し上げます。」

「はい。」

「忍さん、数馬に結婚相手が見つかりました。」

⦅…………!⦆

「数馬の縁談を私は進めております。

 貴女には二度と数馬に近づかないで頂きたいのです。

 折角お見合いしましたので、破談にはしたくありません。

 お分かりですね。」

「はい。」

「お分かり頂けましたら結構なことでございますわ。

 …………それにしましても弥生さん。」

「はい、奥様。」

「お引っ越されたら如何でしょう。」

「引っ越しでございますか。」

「ええ、数馬の元妻がこのように狭い所に住んでいらっしゃるのは如何なのもか

 と……。」

「ここは、亡き夫と結婚当初から住んでおります。

 この家には……亡き夫との想い出が沢山ございます。

 奥様、これをご覧下さい。

 これは夫が忍の成長を記しました線でございます。

 毎年、この柱に夫が……亡き夫が残した私どもにとりましては大切な想い出でご

 ざいます。

 何卒、お気になさらず………捨て置いて下さい。お願い致します。」

「分かりました。青木誠二郎さんにはお世話になりましたので、少し口を挟ませて

 頂いただけです。

 では、忍さん、数馬の元妻と公言なさいませんよう、お願い致しますね。」

「はい。分かりました。絶対に公言致しません。」

「お守りくださいね。」

「はい。」

「では、御機嫌よう。」

「失礼致します。」


可那子が帰ると、忍は弥生に寄り添い言った。


「お母さん、嫌な想いをさせてばかりで……本当にごめんなさい。」

「忍………嫌な思いって、してないからね。」


そう言って、直ぐに涙を拭いた。


車に乗る前に執事が可那子に聞いた。


「あの……奥様、こちらは如何致しましょう?」

「あら、忘れていましたね。

 そのまま持ち帰りましょう。

 数馬からそれなりに財産分与して貰っているはずですから……。」

「承知致しました。」


執事は500万円入っている封筒を鞄に入れた。

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