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幸せの在り処  作者: yukko
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忍と数馬②

忍が加賀陽、古谷新、そして、寒川翔と会う日になった。

加賀陽から古谷新の妻も同席したいと願い出られて了承した。

忍も友人の山崎光の同席を求め、同意を得た。


「初めまして。忍の友人の山崎光と申します。」

「初めまして。私が加賀陽でございます。

 隣が古谷新とその妻の葵さんでございます。

 そして、葵さんの隣が寒川翔でございます。」

「葵さん、初めまして。

 私は青木忍でございます。」

「初めまして、忍さん。

 今日は同席を許して下さり心より御礼申し上げます。」

「いいえ。」

「では、忍さん、聞きたいと仰っていたことが何か話して頂けますか?」

「はい………。」

「しーちゃん、頑張って!」

「うん…………あの、私が二度の流産した時のことです。

 随分前のことなのですけれども……………。

 その時、数馬さんはどうしていたのですか?」

「流産……?

 覚えていません。」

「僕は少し記憶があります。

 その頃は大変忙しくて、仕事だったと思います。」

「翔、覚えてるのか?」

「うん、その頃、華蓮が……あ…………。」

「いいです。お話を続けて下さい。」

「はい。華蓮が数馬に食事に行こうっていうメッセージを送ったけど、来てくれな

 かったと憤慨して、僕にメッセージが届きました。

 その頃のメッセージも残っています。

 ご覧になりますか?」

「出来るのなら……いいですか?」

「はい、どうぞ。」

「ありますね。」

「同じような内容のメッセージが多いですね。」

「忙しかったんだと思います。

 忍びさんと結婚して、年数も経ってなかった頃でしょうね。

 その頃は今よりも会社の経営が上手く行かなかった頃だと思います。」

「そうだった! 数馬は社長就任してからより一層忙しかった。」

「他には、ありますか?」

「…………。」

「しーちゃん、頑張れ!」

「………あの……私が入院して退院した日………見たんです。

 貴方方は家で……自宅で……ホームパーティーをしてました。

 どうして、あの時間にわざわざ家で……ホームパーティーを………。

 何故………したのですか?」

「あれは………。」

「あれは、僕から話しますね。」

「あなた、全て話して差し上げて!」

「分かってる。

 忍さん、あの日、僕達は貴女が手術したことを知りませんでした。

 華蓮からメッセージが届きました。

 取引先の社長が家族を大切にしている人で、ホームパーティーでないと商談を進

 めるのが困難だという内容のメッセージで、当日に知らされました。

 僕達が呼ばれたのですけど、数馬の会社のことを思って、僕は数馬の会社の社員

 ではありませんが、参加しました。

 忍さんが入院していることも退院日だということも知りませんでした。

 申し訳ございません。」

「あの……その時のメッセージも僕のスマホには残っています。

 それから、数馬も当日に華蓮から聞いたと言ってました。

 そのメッセージも残っています。」

「ブッキングさせたのは華蓮だったのではないかと僕は思っています。

 僕は遅くなってから着きました。

 数馬は忍さんが帰って来ないことを心配していました。」

「えっ? そうだった?」

「あなた!」

「へっ?」

「うん、そうだったよ。

 まぁ、声は小さいし、僕だけ聞いたのかな。

 傍に居てたのも僕だけだったから………。」

「それでっ! 戸川数馬は何て言ったの!」

「ヒカちゃん。」

「聞かなくっちゃ!」

「はい、聞いて下さい。

 数馬は眉をひそめてスマホばかり気にしていましたけれども……。

 招いた企業の社長を接待しない訳にはいかなくて、そのまま……。

 そのまま時間だけが過ぎてしまいました。

 それからの数馬は忍さん、貴女を取り戻すことだけでした。

 離婚したくないから、どうしたらいいのか………って聞いて来ました。

 忍さんを愛していることに気付かないままだったんです。

 僕から指摘されても、直ぐに分からないようでした。

 信じられないでしょうけれども、数馬は土屋華蓮と男女の仲になった事はありま

 せん。

 華蓮の片思いです。」

「そんな………信じられません。」

「そうでしょうね。それが当たり前です。」

「えっ? どうして、当たり前なんて言い切れるのですか? 葵さん。」

「私は古谷新の妻として少ししか数馬さんにお会いしていません。

 でも分かります。

 華蓮という人を愛していらっしゃる様子はありませんでした。

 華蓮が忍さんを追い出したかったように感じておりました。

 対抗心を燃やしている姿は幾度も見ましたから……。」

「………え、葵、君は凄いな。僕は分からなかった。」

「あなたは鈍感だから………。」

「えっ?」

「あの……私は……見た時、お取引先の方の姿は見えませんでした。

 家で皆さんだけ……でした。

 本当ですか?

 本当に御取引先の方がいらっしゃったんですか?

 加賀さんは後から入られたんですよね。」

「はい。」

「では、最初からいらしたのは古谷さんと寒川さんですね。」

「はい。」

「本当にお見えになったんですか?」

「はい、お見えになりました。

 ただ、来られる前は僕達だけでしたから……。」

「何時頃ですか?

 忍さんが……その退院された時間は……?

 僕らが数馬の家に着いたのは午前9時半でした。

 お見えになった時間は11時でした。」

「退院は午前10時で、直ぐにタクシーで帰宅しました。

 あ………じゃあ、始まる前?」

「その頃なら大学時代のノリで……それを見られたのですね。」

「そのようです。」

「そっか………申し訳ありません。」

「いいえ…………今更ですけど、知りたくて………。」

「それは、そうでしょう。」


拉致された事件のことを3人は謝った。

謝って済む問題では無い事を承知の上で謝っていると話した。

許してくれなくても当然だと言い切った。

最後に忍が聞いた。


「数馬さんは、どうしてクリニックに居たんですか?」

「数馬は忍さんが出て行ってから精神的に不安定になって……。

 睡眠も取れなくなりました。

 それが酷くなったのが、あの拉致事件でした。

 あの後、数馬はクリニックへ通うようになりました。 

 あの日、火事の日。

 たまたま偶然会っただけです。」

「クリニックに? そんなに前から?」

「はい。」

「数馬さんが……そんな………。」

「しーちゃん。」

「…………………。」

「しーちゃん!」

「……………え?」

「しーちゃん、聞きたかったこと聞けた?」

「うん。」

「じゃあ、お暇しようか?」

「うん。

 あの……今日は御時間を割いて下さり誠にありがとうございました。

 …………数馬さんを……支えて下さい。

 お願いします。」

「忍さん!………こちらこそ、ありがとうございました。」

「僕達が出来ることはさせて頂きます。」

「数馬のことは任せて下さい。」

「では、失礼致します。」

「忍さん、どうかお元気で!」

「皆さまも……。」


忍は数馬の本当の姿を少し見た気がした。


◇◇◇◇

その頃、数馬が入院している病院でひと悶着が起きていた。

両親が来ていた。

一人の若く美しい女性を連れて……。


「初めまして、数馬さん。

 岩居静でございます。」

「お父さん、お母さん、これはどういうことですか?」

「君にピッタリの女性を連れて来たんだ。」

「どう? 美しい方でしょう。

 この方は由緒正しい御家柄なのよ。」

「病院でお見合いですか。」

「場所は、まぁ……なんだがな。時間も限られている。

 先ずはお見舞いを……と仰って下さったんだ。

 妻に迎えるのに相応しい優しい方だ。」

「数馬には令嬢と呼ばれる方がお似合いなのよ。」

「貴女は、こんな政略結婚で良いのですか?」

「………ええ……数馬さんにお会いして……こんな方の妻になれるのなら……

 政略とか、そんなことは気になりません。」

「そうですか。」

「どう、こんな方がいいでしょう。」

「申し訳ありませんが、私は結婚する気はありません。」

「えっ? でも……。」

「何を言うんだ!」

「そうですよ! いい加減大人になりなさい。」

「えっと……お名前を憶えていませんが、お帰り頂きたいのです。

 結婚の意志が無い事はお伝え致しました。

 私はベッドの上ですが、今、仕事をしております。

 早々にお引き取り願います。」

「あの………私は、お仕事のお邪魔をする気がございません。」

「仕事だけではなく、貴女と結婚する気持ちが全く無いと申し上げております。」

「数馬ッ!」

「………な、な、なんてことを!」

「何を騒いでおる。一昌。」

「お父さん、どうしてこちらへ?」

「孫の見舞いに来てはならんのか?」

「あの……こちら様は数馬さんのおじい様で?」

「ええ、そうです。」

「貴女は初めてお目に掛かりますな。

 どなたで?」

「私は岩居静と申します。

 今日は数馬さんのお見舞いに参りました。」

「ほぉ~~っ。」

「おじいさん、この方はもうお帰りになられます。」

「そうなのか、ではお見舞いありがとうございました。」

「え……………あの………。」

「お帰りはお分かりですかな?」

「お父さん!」

「……………失礼します。」

「………静さん、お待ちください。」

「何かあったのか?」

「そ……それは………。」

「数馬! 静さんが帰られたじゃないの!」

「お父さん、お母さん。僕は貴方方にとって何ですか?」

「………え?」

「お父さんのペットですか?」

「数馬…………。」

「私が産んだ子です。」

「僕はお母さんのアクセサリーですか?」

「何を言ってるの!」

「僕は一人の人間で心もあります。」

「当たり前ではありませんか。」

「僕は、僕の人生を自分で決めて歩みます。

 今後一切、結婚相手など世話をして頂かなくとも結構です。

 僕は結婚しません。

 忍が幸せになれたら……考えるかもしれませんが、今は考えられません。

 諦めて下さい。」

「何を言ってるの! 忍って………何時まで、あんな子のこと!」

「僕の大切な人をあんな子と呼ばないで頂きたい。」

「数馬ッ!」

「それより、お父さん。

 アメリカの事業は如何ですか?」

「アメリカのことは気にしなくていい。。」

「気になります。我が戸川グループで一番赤字を抱えている事業です。」

「やっているから、安心しなさい。」

「二人とも情けないな。」

「お父さん。」

「お義父様、何を仰ってるのでしょう。」

「二人とも、ここに来て一度たりとも数馬の傷のことを聞いてない。

 どうやら心配していないようだな。

 これから何も連絡せずとも良さそうだ。」

「あ…………数馬………その……具合はどうだ?」

「良くなっていていますので、ご安心下さい。」

「そうか、良かった。」

「一昌、数馬を休ませてやってくれ。」

「お父さん。」

「さぁ、二人とも帰ろう。」

「お義父様、私は……。」

「行こう。可那子。」

「あなた………。」


一郎が両親を連れて帰ってくれて、数馬はホッとした。

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