提案
季節は移ろい、心も移ろう。
忍の心も移ろい、数馬の元を離れた。
あれから、記憶を失い、また心は移ろい数馬に恋をした。
そして、記憶を取り戻してから、記憶を失う前の忍が愛した数馬との想い出も、記憶を失ってから忍が愛した数馬との想い出も、忍は忘れていなかった。
何方も忘れられずに離婚した。
そして、数馬が命を懸けて守ってくれたことが今の忍に大きな出来事だった。
数馬の状態を知りたくて戸川本家に行った時、どうしても過去が思い起こされて、門の前から先に進めなかった。
その想いを忍は福岡に居る山崎光に電話で話した。
「しーちゃん、お礼も言えなかったの?」
「うん。」
「その為に行ったんでしょう?
あのさ、お礼はしないとね。」
「うん。」
「ねぇ、どうしたいの?」
「えっ?」
「本音は? 復縁したいの?」
「復縁…………。」
「まぁ、その前にお礼だわ。
守って貰ったのは覆らない事実なんでしょう。」
「うん。」
「頑張って行ってきな。
ちゃんとアポ取ってからね。」
「うん。」
「復縁の話は、それから後だよね。
ねぇ、しーちゃん、自分の気持ちに素直になりなよ。」
「知りたいの。」
「何を?」
「どうして、私のことよりも他の人を優先したのか……。
知りたいの。」
「聞けばいいよ、本人に!」
「無理なの。」
「どうしてよ。」
「離婚の時に二度と私に会わないって条件があって…………。」
「それ、しーちゃんが付けた条件?」
「ううん、数馬さん。」
「へっ?」
「数馬さんからの条件で、私からは条件なんて一つも出してないの。」
「嘘…………じゃあ、あいつ、自分で自分の首絞めたんだ。
だって、そうじゃない。もしよ、もし仮に、あいつが愛してたら?
しーちゃんのことを愛してたら、自分で自分の首絞めてるよね。
それって……なんで?」
「分かんないよ!」
「愛してたら………なんで? 罪悪感? 贖罪の積り?」
「分かんない。」
「しーちゃん、会おう! あいつに!」
「えっ? 会ってくれないよ。条件あるから。」
「それなら、あいつの取り巻き連中に会おう。
そいつらから聞けばいいわ。うん!」
「でも…………。」
「誰か連絡できる奴、居ないの? 取り巻き連中で。」
「居る。一人………。」
「居るんなら、そいつと連絡取って会うのよ。
私も一緒に居てあげるからさ。」
「そんな福岡から来て貰う訳に行かないわ。」
「あらっ、うちの夫、数馬なんかと違って、優しいのよ。
頼れるの! 愛する妻が頼んだら聞いてくれるのよ。」
「自分で愛する妻って言うの?」
「だって、事実だもん。」
「ご馳走様でした。」
「じゃあ、急ぎ取り巻きに連絡してね。
会う日が決まったら教えて、行くから。」
「分かった。ありがとう。」
忍は光との電話を終えて、加賀陽の電話番号を探し電話した。
陽に頼んだ。
過去の出来事について知りたいから会って欲しいと………。
陽は「僕一人では全てを知っている訳ではありませんので、他に2人一緒でも宜しいですか? 忍さんが無理なら僕一人でお会いします。」という返事だった。
忍は「結構です。加賀さんを入れて3人ですね。お会いしたいです。お願いします。」と告げた。
陽は日時と場所を決めて、忍に連絡をした。
忍は会う相手は、加賀陽………後の2人古谷新と……寒川翔だった。




