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幸せの在り処  作者: yukko
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最後のピース

離婚に向けての協議が終わった。

加賀陽がほぼ強制的に終えたといって間違いではない。


数馬は仕事ばかりしていた。

仕事と酒……そのどちらも……忘れたいために必死に仕事をして、寝る為に酒を飲む。

そんな日々を送っていた。

後悔は先に立たないのだと良く分かった。


土屋華蓮の裁判が始まる日が決まった。

数馬は加賀陽を通して土屋華蓮に伝えることにした。

拘置所にて陽は数馬の言葉を伝えた。


「数馬さんは?」

「もう生涯に渡って君に会わないと言っていた。」

「何故なのよっ!」

「愛してないからだ、と分からないのか?」

「違う! 私は愛されてるわ。

 だって、あの時、彼は私を選んで救ったのよ。

 忍なんか見向きもしなかったわ。」

「忍さんが居たことを知らなかったんだ。

 現場で初めて知ったんだ。

 それに、君は刃物を突き付けられてたんだろう?

 刃物を突き付けられていたのは君だけだったんだよな。

 そうだよな、違う?」

「それは…………。」

「全て、君の指示通りにしただけなんだろう?

 もう、拉致実行をした者は全て逮捕されてるんだ。

 自供したんだ。」

「わ、私は関係ないわ。」

「もう演技は要らないよ。」

「陽! 貴方なんてこと言うのよ。」

「忍さんは口にガムテープを貼られていて、君は貼られてなかった。

 忍さんは手足をロープで縛られて、椅子に括りつけられていた。

 そして、直ぐに忍さんを見つけられないように男達の身体で隠した。

 そうなんだろう?」

「陽………聞いて、数馬に相応しいのは私しか居ないのよ。

 私の方が数馬に相応しい見目だわ。

 忍は麗しくないわ!

 背も低いし、まるで田舎者よ。

 学歴も大したこと無いわ。

 一応、大学は出ているようだけど、三流大学でしょう。

 知ってるわよ。

 あんな子が数馬の祖父に気に入られただけで、それだけで数馬の妻ぁ?

 馬鹿にしないでよ。

 相応しいのは、私なの!」

「醜いな。」

「え……………。」

「君は醜い。」

「なんですってぇ――っ!」

「見た目だけの人間なんだな。」

「陽っ!」

「忍さんの方が遥かに美しいよ。心が美しい人だ。」

「何を言ってるのよ。」

「駄目だな、したことの意味すら分かってないようだ。」

「陽っ!」

「数馬が愛しているのは忍さんだけだ! 君じゃない!

 覚えておくように!

 じゃあ、裁判で会おう。」

「え……………。」

「会社が君を告訴したこと忘れたのか?」

「あっ……………………。」


陽は拘置所を出た。

上を向いた。

⦅僕達は馬鹿だった。⦆と思った。



土屋華蓮の逮捕されてから直ぐに数馬は記者会見を行った。

それは会社が土屋華蓮を告訴した後のことだった。

華蓮を告訴したことについての説明をする為だった。

この記者会見の前に、一郎夫婦と次郎に数馬は忍と自分のことを全て話した。

千代は泣き崩れた。

数馬に皆が怒った。


「何故、忍を置いたまま………あんな女を助けて…………。

 数馬っ! そんなに………忍が死んでも平気なのか………。」

「………平気では……ありません!」

「もう、いい。」

「おじいちゃん?」

「忍が無事に帰って来てくれたら、君になど委ねない!

 即刻、離婚しろ!」

「忍ちゃん………どんなに悲しくて……辛くて………怖かったか………。

 ごめんなさい………忍ちゃん………ごめんなさい………。」

「数馬。」

「はい、次郎叔父さん。」

「記者会見は君が出るんだな。」

「はい。」

「副社長として私も同席する。」

「ありがとうございます。」

「同席するだけだ。助けはしない、いいね。」

「はい。」

「忍さんのこと嫌ってたんだな。」

「いいえ! 叔父さん、僕は忍を嫌ってなど居ません。」

「今までの行いは、どう考えても嫌ってるからだ。」

「…………………いいえ、僕は…………。」

「もっと君達夫婦を、私は見るべきだった。

 副社長として傍に居たのに………忍さん……申し訳ない。

 兄さん、義姉さん、済みません。」

「次郎、君のせいじゃない。二人を結婚させた私が全て悪い。」



記者会見場には中央に数馬、その右隣に副社長である次郎、そして、左隣に一郎が座った。

次郎の隣には弁護士として加賀陽が座った。

そして、記者会見が始まった。

経緯については加賀陽が話した。

質疑応答に答えるのは、数馬。


「奥様の事件を教えて下さい。

 奥様と容疑者である土屋華蓮が拉致されたと聞いています。

 土屋華蓮は社長が救出されたんですよね。 

 凄く単純な疑問ですが、どうして奥様は救出出来なかったんですか?

 社長、答えて下さい。」

「……………私は、妻が拉致されていると知らずに現場に着きました。

 妻の姿を見て驚きました。

 土屋華蓮の顔にナイフが突きつけられて、警察へは電話をしてくれていると思い

 込んでいた私は………私は、土屋華蓮を先に助け出しました。

 妻には………妻に………近づいて犯人に聞こえないように『警察に通報してい

 る。必ず助けるから待っててくれ。』と言いました。

 土屋華蓮を連れて倉庫から出て離れました。

 離れたら火が………炎が見えました。倉庫が燃え上がって………妻は中でした。

 私は………私は………妻を……妻を助けられませんでした。

 忍は……今、何処に居るのか分かりません。

 後悔しても………もう…………お願いです。

 忍をもし見つけて下さったら教えて下さい。 お願いします。」

「奥様は行方不明なんですね。」

「はい。」

「社長、ありがとうございました。」


その後も質問は続いた。

数馬は真摯にどんな質問にも答えた。

この日の記者会見はYouTubeで今も見ることが出来る。

そして、この動画を数馬から貰ったスマホで忍は見た。

記憶の最後のピースが揃い出来上がった瞬間だった。

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