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幸せの在り処  作者: yukko
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人生の分岐点②

加賀陽は離婚についての協議を始めた。


「私は戸川数馬氏の依頼により、離婚についての協議を行い、公証証書を作成致し

 ます。

 忍様、離婚協議書より離婚公正証書の方が法的な拘束力がございます。

 離婚公正証書の作成で宜しいでしょうか?」

「それは、数馬さんも同意しているんですか?」

「勿論でございます。

 戸川氏よりの申し出により、私は作成するための資料も提出致します。」

「それで、数馬さんは……なんと?」

「慰謝料を1000万円支払う用意があり、財産分与は自宅の売却後の金額全てと預貯

 金を全てお渡しするということでございます。」

「待って下さい。私はお金が欲しいなどと思っていません。」

「はい、理解しております。

 戸川氏も充分に理解しているとのことでございました。」

「では、何故…………。」

「結婚生活のほとんどの日々を辛い想いをさせたこと、土屋華蓮氏による忍様への

 様々な出来事など………。

 戸川氏はこの提示金額でも足りないと思っています。」

「預貯金を私に全て渡して、その他にも1000万円も……そんなに私に渡したら、数

 馬さんの暮らしはどうなるのですか?」

「やはり、優しい………。

 大丈夫です。

 彼は働きますから………大丈夫ですよ。

 それから、忍様の就職の為の勉学に対して、その費用の全てを支払うということ

 でございます。」

「えっ?」

「忍様、これから就職しないといけません。

 その為に手に職をとお考えなら、その費用の全てを戸川氏が支払うということ

 も、この協議の内容に含まれます。

 これから、生きていく為に必要経費ですよ。

 1.慰謝料として1000万円

 2.財産分与は自宅売却益の全て並びに戸川数馬氏名義の預貯金全て

 3.就職の為の費用全て

 離婚事由は、全ての責を戸川数馬氏であると明文化されます。

 以上が離婚協議内容です。」

「離婚事由?」

「はい。」

「離婚の原因という意味ですよね。」

「はい、そうでございます。」

「では……やはり……土屋華蓮さんは……数馬さんの愛する人……。」

「………ここからは、弁護士ではなく、数馬の友人としての言葉です。

 いいですか?」

「あ………はい。」

「先ず、忍さんの記憶がどのくらい戻ったかが分からないので曖昧な言葉にしまし

 たが…………土屋華蓮とは愛人関係ではありません。」

「そんなはずは…………。」

「あぁ………もう、普段の言葉遣いでいいですか、っていうか……そうします。」

「あ、はい。」

「忍さんの記憶がどこまで取り戻したのか分からないので、全ては話せません。

 けど、これだけは言える。

 数馬は……戸川数馬が愛しているのは、忍さん、君だけだ。」

「うそ………。」

「まぁ、信じられなくても当たり前だろうけど、ね。 

 僕は忍さんが家を出た頃から、ずっと数馬の心を身近で見て来た。

 だから言い切れるんだ。

 忍さんが居なくなって初めて、彼は自分の気持ちに気付いたんだ。

 愛してるって、遅すぎるけどね。」

「………………でも、華蓮さんへの態度と私へのそれは……違い過ぎて……。」

「うん、そうだね。

 それは、数馬の育ち方にも原因の一旦はあるかもしれえないな。」

「えっ?」

「数馬は何よりも自分の気持ちを無視するよう育てられてたみたいなんだ。

 それは将来の会社を担う人間として、そして、お母さんの育て方かな?」

「お義母様の?」

「うん、何だか厳しくてね。

 僕達との付き合いも大学の頃に規制しようとしてたよ。

 数馬の周囲の人間は全て、母親が選んだ人間にしたかったみたいだ。

 自分の願いなど一切聞いてくれない母親だから、段々と感情を出せなくなってい

 ったみたいだな。

 唯一、会長を巻き込んで母親に逆らったのが、大学受験だったらしい。

 それでも、母親は干渉して来たんだ。

 その時、18の数馬は静かに言ったんだ。僕達の前で………。

 『お母さん、僕の初めての友人です。どうか大切に思って下さい。』って、さ。

 普通に友達を選べなかったんだ。

 だから、必要以上に大学での初めての友達を大事にした。

 その中に入っていたのが、華蓮だっただけなんだ。

 男女の仲じゃなかった。

 男女の仲になれなかったから、華蓮はあんな行動に出た。」

「………………本当なのですか?」

「信じられなくて当然だよ。

 それと、それが真実だ。

 あ………土屋華蓮を業務上横領で告訴したんだ。数馬が………。」

「告訴?」

「あぁ、それから、土屋華蓮は逮捕されてる。

 これから裁判が始まるが、たぶん、刑は軽くない。

 数馬はなるべく長く刑務所に入って貰いたいと思ってるし、華蓮にはハッキリ愛

 してないと告げたよ。

 録音して拘置所に居る華蓮に伝えたんだ。

 面会にも行っていない。」

「拘置所…………。」

「忍さん、数馬を恨んで当然なんだ。

 だけど、この離婚協議の内容は受け取って貰いたい。

 どうか、お願いします。」

「…………今は……お返事が………出来ません。」

「では、弁護士モードに戻り続けます。

 忍様、良くお考え下さいますようお願い致します。

 私は本日、離婚についての協議内容を忍様にお伝えした旨、戸川数馬氏にお伝え

 します。

 本日は長くお時間を割いて頂き、誠にありがとうございました。

 お考えが纏まられましたなら、この名刺の電話にご一報をお願い致します。

 では、失礼致します。」 

「ありがとうございました。」

「忍さん、元気で居て下さいね。」

「はい。」

「お母さん、お邪魔しました。」

「加賀さん、ありがとうございました。」


忍は何も求めていなかった。

この離婚協議が正しいのか分からなかった。

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