母の愛
母からの電話を受けて忍は泣いてしまった。
「お母さん、ごめんね。
家を出たの。」
「何があったの?」
「今度、会ってから話す。
電話じゃ……どう話したらいいのか……。」
「忍……お母さんは忍の幸せだけを願ってるの。」
「……うん。」
「だから、自分を大切にしてね。
幸せになる為に……逃げてもいいのよ。」
「うん………。」
「………今……何処に居るの?
戻ってくる気は無いの?」
「何処へ?」
「私の家よ。」
「お母さん、私が実家に戻ったら迷惑かけるから……戻らない。」
「でも、忍は専業主婦だから、お金も何も無いじゃないの。」
「今、数馬さんから貰った生活費を持ってるの。
それで、今はビジネスホテルに居るの。」
「忍、家を出たってことは……その先を考えてるのよね。」
「その先?」
「離婚。」
「……うん、お母さん、ごめんなさい。」
「どうして謝るの? 何も悪い事してないんでしょう?」
「してないわ。」
「じゃあ、謝らないの。」
「うん。」
「忍、離婚て大変よ。
それを選んだってことは、辛い結婚生活だったからでしょう。」
「うん。」
「……そうなのね、それ以上は聞かないわ。」
「ありがとう。」
「忍、帰って来なさい。
就職しないとね。生きていけないの。」
「うん。」
「その為にも住居が必要よ。」
「うん。分かってる。」
「帰って来なさい。これからの為に! いい?
帰って来るのよ。なるべく早く。
就職するために、ね。」
「でも、迷惑」
「迷惑じゃない! 娘が幸せを掴むために何もしない母親って居ないわ。」
「お母さん!」
「少しでも数馬さんから受け取った生活費、使わない為にもね。
帰って来なさい。忍の家なんだから………。」
「………お……お母さん、ありがとう。」
「うん、待ってるよ。」
「うん、帰る。」
忍が実家に帰った頃、数馬は他を探していた。
何故だか誰にも頼らずに自分で……。




