離婚へのステップ2
数馬は苛立っていた。
忍は家に帰って来なかった。
否、帰って来たのに出て行ったきり電話を架けても来なかった。
メッセージも全く無かった。
「何を拗ねているんだ!
妻なのに、妻としての役目を忘れたのか。」
メッセージを送っても既読にならなかった。
「何故、読まない!」
電話をしても「電源を………。」の音声が流れるだけだった。
「まさか……ブロック?
否、そんなはずない。忍に限って……あるわけない。」
数馬は部屋で独り言を言い、苛立ちは隠せなかった。
煙草を手にしても投げつけた。
結婚して5年。
忍が家を出たことは無い。
常に夫にも舅にも姑にも温和で従順な女だった。
従順なことだけが取り柄の女だと数馬の親友達は言っている。
数馬の母は、数馬が大学の頃から慢性心不全で入退院を繰り返している。
忍は数馬にとって必要な妻だ。
母の看病をする妻なのだ。
専業主婦の忍は、2度流産をした。
その流産の直後も、姑の看病をした。
「数馬、忍は何処へ行ったんだ!」
「分かりません。」
「分からんだと!」
「はい。」
「私がアメリカへ行っている間に何があった?」
「いいえ、何もありませんでした。」
「数馬、忍さんが居ないと困るのよ。」
「お母さん、分かってます。」
「数馬………しっかりしなさい。」
「はい、お父さん。」
数馬は忍の母に電話した。
「お義母さん、お久し振りです。ご無沙汰してしまって申し訳ありません。」
「数馬さん! こちらこそ、ご無沙汰しております。
お父様、お母様はお変わりなくお過ごしでございますか?」
「はい、変わりなく過ごしています。
忍はそちらにお邪魔しておりませんか?」
「忍ですか? あの……忍に何かあったんですか?」
「いえ……何もありません。」
「本当ですか?
本当に……何も無いのですか?
忍は………嫁いでから電話も私に架けて来ませんでした。
用事がある時だけ……でした。
数馬さんからお電話を頂戴したのも初めてですので……。
ですので、あの子の身に何かあったんでしょうか?」
「いいえ! 何もありません。御心配には及びません。」
「そうですか………それなら、良いのですが………。
数馬さん、あの子は……お役に立たないと思います。
お役に立たない子だと思いますが、どうか、どうか!
あの子のこと宜しくお願いします。」
「はい。」
忍の母は涙声になっていた。
数馬は電話したことを後悔した。




