新宿
頭の中で何かが警告音を鳴らしている。
こんなことは無かった。
忍はそれが何なのか、まだ分からない。
ただ、「数馬を許さない。」という訳が分からない想いが出て来たのだ。
そして、次に会う日がやって来た。
忍にとって初めてのデートだった。
ワンピースを買って貰った。
それに似合うネックレスも数馬は買ってくれた。
そして、数馬のエスコートで街を歩いた。
新宿を歩いた。街が、街を行き交う人々が眩しかった。
「忍……疲れてない?」
「大丈夫。」
「疲れたら、何時でも言って。」
「はい………数馬さん、ありがとう。」
数馬と歩いていると、行き交う女性達が皆……数馬に見とれている。
そんな時、ショーウインドウに映し出された数馬と忍の姿が見えた。
忍は激しく落ち込んだ。
⦅こんなに……不釣り合い………だなんて………。
数馬さんには……数馬さんの隣に居るのは、私じゃない駄目だよね。⦆
「忍? どうした? 疲れたのか?」
「ううん。」
「本当か? 無理しないで欲しい。
少しでも疲れたら言って!」
「はい。」
「必ずだよ………本当に大丈夫?」
「大丈夫………あの、この服………お金、いつか払います。」
「払わなくていいんだ。僕からのプレゼントだから……贈らせて!」
「でも、ネックレスも………。」
「それも僕からのプレゼント………嫌だった?」
「嫌なこと無いです。
でも………私は……結婚指輪を失くしたのに………。
ワンピースとかネックレスとか買って貰って……。」
「………結婚指輪…………。」
「数馬さんはしてるのに…………ごめんなさい。」
数馬は忍が封筒に入れて数馬に返した結婚指輪を身に着けていた。
指輪をネックレスにして常に身に着けている。
数馬はそれを出そうか、このままが良いのか、分からない。
「あ………ごめんなさい。
こんなにして貰ってるのに……なんか色々言ってしまって……。
ごめんなさい。」
「忍が謝ることなんか、何一つないんだ!」
「数馬さん?」
「あ……ごめん……大きな声で怖かったよね。
ごめん………本当に………ごめん。」
「数馬さん…………謝って……ばかりですね。
どうして?」
「僕は……………愛してるんだ……忍………愛して………。」
「数馬さん!」
急に抱き締められて忍は少し混乱し、そして幸せだと感じた。
数馬は周囲のことなど眼中になかった。
周囲の人が見ていても忍を抱き締めて涙を流している。
その涙の意味を知らない忍は⦅数馬さん……愛してるって言ってくれた。嬉しい!⦆だけだった。
その頭の中で誰かが警告した。
「数馬を許さない!」と――その警告を忍は無視した。
「数馬さん、大好きです。
私も………愛しています。」
そう初めて自分の気持ちを伝えた。




