終焉
その日、土屋華蓮は数馬が1週間も休むことを知った。
⦅もおっ! 数馬が休みを取っただなんて!
社長室勤務だったら分かったのに!
どうして休んでるのよっ!
数馬の代わりに仕事するのは副社長だから、副社長なら分かるわよね。
副社長に聞くしかないわ。苦手だけど……。⦆
「副社長、教えて頂きたいのですが。」
「何だ?」
「かず……社長が1週間も休みを取られたと聞きました。
何かあったのですか?」
「社長は仕事で出張だ。」
「どちらへ。」
「副社長秘書の土屋君の仕事ではないな。」
「副社長、教えて下さい。社長は何処に居るのですか?」
「何故、そのように社長を追い掛ける?」
「追い掛けてなど……おりません。」
「まるでスターを追い掛けるファンのようだな。
社長のことよりも仕事をし給え。」
「副社長。」
その時、副社長・次郎のスマホが鳴った。
「私だ。」
『副社長、今、正面玄関に警察の方々が多数お見えでございます。』
「何? 正面玄関に?」
『はい。』
「どのような要件か伺いなさい。」
『それが……。』
「どうした。」
『副社長秘書の土屋華蓮さんの逮捕令状をお持ちです。』
「副社長室へお越し頂くように。」
『はい、承知致しました。』
それから、少し経って副社長室のドアがノックされた。
次郎はドアの前まで自分で行った。
「副社長? お客様でいらっしゃいますか?」
「そうだ。」
「では、お飲み物をご用意致します。」
「要らない。君はそこに居給え。」
「はい。」
そして、次郎自らドアを開けた。
入って来たのは警察だった。
刑事と制服警官だった。
婦人警官が土屋華蓮の前に進み、読み上げた。
「土屋華蓮。」
「はい。また、事情徴収ですか?」
「逮捕令状が出た。」
「え…………逮捕令状。」
「今から読み上げる。」
「待って下さい! 私は罪など犯しておりません。」
「被疑者 土屋華蓮を戸川忍拉致監禁の罪で逮捕することを許可する。
東京地方裁判所 裁判官……。」
読み上げられている間、華蓮は頭の中が真っ白になった。
そして、次に叫んだ。
「私じゃないっ!
私は何もしてないっ!」
確保されたくない華蓮は暴れた。
暴言を吐きながら暴れたのだ。
「誰だっ! 私を嵌めた奴は!
放せぇ―――っ!」
その姿は「お姫様」と呼ばれていた土屋華蓮とは全く別の人物のようだった。
大捕物のような喧騒の副社長室から被疑者として確保された華蓮が警察官に連れられて出て行った。
社員の視線を感じた華蓮は、顔を隠そうとした。
警察官が華蓮の顔を隠した。
頭に刑事のスーツを掛けて………。
その日、戸川グループ本社は大騒ぎになった。
まるで社長夫人のようにしていた華蓮の逮捕だったからだ。
華蓮の姿を見た翔は「終わったんだな。」とポツリと言った。




