忍
警察から連絡があった。
忍が見つかったという連絡だった。
「本当ですか! 本当に忍が見つかったんですか?」
「はい。保護されています。」
「あぁ、忍…………無事だった。」
「これから話す内容を良くお聞きください。」
「はい。」
「海に落ちた戸川忍さんは、付近を航行していた船に助けられました。」
「ありがとう!………本当に! ありがとう……。」
「救助者は漁師です。
その日は、たまたま船で………その方の漁船で島から本土へ人を送ってからの帰
りだったそうです。
落ちた瞬間を見たそうで、それが人かどうかは定かではなかったと……。
でも、何かが落ちたのに、全速力でボートが遠ざかって行ったと!
可笑しいと思って近づき、溺れている人を確認し救助したということです。」
「あぁ……良かった………ありがとうございます。」
「まだ話は続きます。終わりではありません。」
「申し訳ありません。嬉しくて……妻が助かって……嬉しく…て……。」
「そうでしょうね。 続きを話します。」
「はい。」
「胸にナイフが刺さっていたそうです。
それを見て、如何したら良いか分からなかったそうです。」
「ナイフ! 忍は、忍は無事なんですか?」
「はい、無事です。」
「良かった………よか…った………。」
「話の続きです。」
「はい。」
「それで、島の医師に電話して救急処置を教えて貰ったそうです。
兎に角、心肺蘇生を試みながら島に戻って医師に後は委ねたそうです。
幸いにして、胸のナイフは刃渡りが短く、深部まで達していなかったそうです。
蘇生出来たのですが………。」
「良かった……生きて帰って来てくれる………忍………。
迎えに行きます!
助けて下さった方々に心から感謝しています。
お礼をしたいです。
何処に忍は居ますか?」
「戸川さん……落ち着いて聞いて下さい。」
「はい!」
「戸川忍さんは目覚めましたが、記憶がありません。」
「え……………あの……記憶がないとは………。」
「ご自分の名前も何もかも覚えていない状態です。
全て記憶を失っているのです。」
「……記憶……を……失った?
………何故…………忍………どうして………。」
「戸川さん……戸川数馬さん! 落ち着いて。」
「会いに行きます。今直ぐに!」
「会っても貴方のことを覚えていないと理解しましたか?
ちゃんと理解してから行って下さい。
忍さんの親御さんは?」
「あ……お義母さん……。」
「お伝えください。」
「はい、伝えます。」
数馬は直ぐに忍が見つかった事、記憶が無い事を忍の母・青木弥生に伝えた。
顧問弁護士で友人である加賀陽にも伝えた。
そして、祖父母にも伝えた。
忍が入院している島の小さな病院へ、数馬は青木弥生、加賀陽、そして祖父母・戸川一郎と千代の5人で向かった。




