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幸せの在り処  作者: yukko
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待つ人達

忍の行方は(よう)として知れないまま日だけが過ぎていく。

数馬はまんじりともしない夜を重ねた。

目に見えて分かるほどに数馬は窶れた。

忍の母・弥生は気丈に振舞って仕事も休むことなく過ごしているが、傍目から見ると今にも倒れそうだった。

数馬の祖父・一郎は衝撃の余り床に臥した妻・千代の傍から離れなかった。

数馬の大叔父・次郎は、数馬を支えるべく出社して仕事をしている。

あの友人達……寒川翔も古谷新も、あんなに忍のことを悪く言っていたのに、今は無事に帰って欲しいと心から願っている。

友人達の中でいち早く忍の献身をありのまま見ていた加賀陽は、警察署へ出向き、捜査の進捗を聞いている。

忍の友人・山崎光と結弦夫婦は、頻繁に弥生の家に行き、弥生を支えている。

そして「しーちゃん、お願いだから……生きて帰って来て! 待ってる。ずっと待ってるからね。」と忍の無事な帰還を待っている。

多くの人が忍の無事を願い祈る中、数馬の母・可那子は違っていた。


「忍さんが帰って来なければ、私が選んだ娘を数馬には娶らせます。

 いいでしょう。」

「君の眼鏡に適う娘が居るのか?」

「ええ、首都銀行の頭取のお嬢様を……と思っておりますのよ。」

「頭取の! それは良いな。」

「左様でございましょう。」

「あの……秘書を君は気に入ってたのじゃないか?」

「あのような娘、数馬の妻に相応しくありませんわ。

 下品です。忍さんよりも……。」

「そうなのか?」

「秘書如きが…………。

 数馬の妻になろうと画策していることは品格があるとは言えませんわ。」

「それは、そうだな。」



忍の無事な帰還を待っていない者が、もう一人居る。

土屋華蓮。

彼女は苛立ちを隠せなかった。


⦅忍は死んでいるはず!

 遺体が上がらないから、数馬は………。

 責任を感じているんだわ。そうに違いない。

 ………事情聴取、受けたくないわ。

 今度、来たら拒否しようかしら。

 何と言っても私は被害者なのだから………。⦆


華蓮の周囲に居た数馬達は、華蓮と以前のように会うことを避けている。

それが華蓮の苛立ちをより一層募らせている。

晩餐会という名を付けたグループチャットで食事に誘ったら………。


「数馬さん、何か食べないといけないわ。

 素敵なレストランを見つけたの。

 皆で行かない?」

「行かない。」

「忙しいだろうけど、食べないといけないわ。

 ねぇ、皆。」

「そうだな。でも、数馬は帰った方がいい。

 なっ、新、陽。」

「そうだ。帰った方がいい。

 おばあちゃんの具合も悪いし、傍に居てあげた方がいいよ。」

「新の言う通りだ。警察から事情聴取の連絡もあるかもしれない。

 僕らと遊ぶ時間はない。

 数馬、仕事が終わったら、早く帰れ。」

「帰る。」

「……じゃ……じゃあ、皆で食べに行く?」

「悪いけど、そんな気にならない。

 人が一人行方不明で生死が不明な時に、僕は無理だ。」

「……陽は……そうね、弁護士だから……。

 翔、新、行きましょうよ。」

「僕も行かないよ。」

「新?」

「今までが遊び過ぎてたと思うんだ。

 これでも、一応、妻が居る身だからね。

 家庭を大事にしないといけないと思って反省したんだ。」

「あ……そうなの……翔、翔は私と同じ独身だから行こうよ。」

「僕は、数馬のおばあちゃんに可愛がって貰ってたんだ。

 だから、おばあちゃんのお見舞いに行くんだ。

 悪いな、華蓮。

 また、今度、誘ってくれよ。」

「そうね、お見舞いに行ってらっしゃい。」

「ありがとう。」


華蓮は数馬が変わっていることを感じている。

そして、それは新も、陽も……そして翔も変わってしまったと感じている。

以前なら必ず誰よりも先に「僕は行くよ。」と言ってくれた翔が「行かない。」と返事したのは初めてだった。

⦅何かが可笑しい。⦆と華蓮は感じた。


華蓮は知らなかった。

実行犯のうち1人が自首していたことを………。

警察はマスコミにも公表していない。

マスコミと報道協定を結んだ。

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