クソ
四
夜。
自室の部屋。
夜井出葉琉依は、ホロフォンから巨大投稿サイト、小説家にナローへとアクセスし、そこに表示されたランキング上位の小説を適当に読んでみることにした。
巷の噂では、ナローのランキング作品は大概にして酷い有象無象が多いと言うが、果たして莎我夜美奈のあの狂気的な小説と比べるとどうだろうか? という純粋な疑問が湧き上がったのだ。
「……なんじゃこりゃあ。クソ……クソ、これもクソ……。で、でもこれがランキングの最上位で……おまけに書籍化、コミカライズ、ものによっては大々的にアニメ化までされている……だと……」
夜井出は、画面に表示された人気作品を幾つか流し読みし、そのあまりの惨状に完全に絶句した。莎我の生み出したあの読む拷問たる駄文にも一歩も引けを取らないような稚拙な文章。異世界転生、追放、悪役令嬢、ダンジョン配信など、どこかで見たような見るに耐えないテンプレを継ぎ接ぎしただけの内容が無数に存在し、それが熱狂的な人気を得て商業化までされているという、信じられない狂った現実を知った。
もしや、莎我が一生懸命に作る様なあの支離滅裂な作品こそが、いたって現代の世間一般に広くウケる王道の内容であり、これを受け入れられない自分自身の感性こそがおかしいのではないか……? と、一瞬本気で血迷いそうになったが、直ぐに頭を振ってそれはない、と否定した。
しかし、これらの中身のない作品群が実際にメディア化され、莫大な利益を生んでいる以上、世間に圧倒的な需要があるのは揺るぎない事実。
夜井出は、夜遅くまで眠い目を擦りながら、このネットの海に蔓延る魑魅魍魎の如き作品群の良い点を何とか自身の異能、それっぽく解説する能力で論理的に割り出そうと奮闘した。だが、どれだけ能力を駆使しようとも、また異能抜きにしても、最終的に脳が弾き出す結論は、やはり〈クソ〉の二文字で無情にも完結したという。




