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オール・ギフテッド  作者: パラデミコプス
第一部 第三章 強能力

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地雷系女子大学

          五


 背が伸びた気がする。

 規則的な金属音を一定の律動で響かせ、車体を小刻みに震わせる高架式磁気浮遊列車──通称リニア・トレインの車内。

 そこにあって、亜鳴蛇筮麽はふと己の視座にもたらされた微小な違和感に思考を巡らせた。確たる自身の記憶の糸を丁寧に手繰り寄せれば、その身の丈は確か百八十五センチメートルという数値で停滞していたはず。しかしながら、眼前に等間隔で垂れ下がる合成樹脂製の吊り革が、どうにも以前よりも数センチばかり低い位置に懸架されているように錯覚してしまう。数ヶ月前というごく最近の過去までは、視線の角度はもう少し上方を向いていたはず。そういえば、先ほど列車の乗降口を通過した際にも、頭上に迫る金属の枠組みが僅かに低くなっているように感じられた。

「筮麽。なにぼーっとしてんのさ」

 鼓膜を叩く、横からの呆れたような声音。

 隣で手すりにしっかりと掴まり、自身の小柄な身体を懸命に支えている鴨紅柄長からの問いかけ。

 筮麽はゆったりと視線を下方へと落とし、友人の顔を見据える。

「ん? うーんと、まだ目的地に到着しないのかなってね。あそこに溢れているという未知の甘味を、一秒でも早くこの胃袋に収めたくて」

「はは、あんたは、相も変わらず食うことしか考えてないな」

「当然でしょ、お腹ペコペコの深刻な飢餓状態になってんだから。それに、私の細胞の隅々が、強烈な糖分を今か今かと渇望している」

「ま、空腹の限界を迎えて急にぶっ倒れたりすんなよ? ……いや、筮麽に限って、そんな脆弱な真似はあり得ないか」

「まぁね」

 柄長の的確なツッコミ。

 春のそよ風の如く軽く受け流す。

 現在、筮麽の手は真横の吊り手はおろか、いかなる手すりにも接触しておらず、車両の真ん中でただ一人、完全なる直立姿勢を保って立っている。だが、その身体は周囲の乗客が揺れに身を任せる中、ただ一人だけ完璧な直立不動。彼女の真の異能である視認コピー能力という反則級の力によって過去に蒐集した無数のコレクションのひとつ、その場で直立不動になる能力という極めて限定的な異能を密かに行使しているため。列車の車体がどれほど激しく揺動しようとも、急激な制動により慣性の法則が牙を剥こうとも、彼女の長躯が微塵も揺らぐことは決してない。実に莫迦莫迦しいまでの、神の如き異能の無駄遣い。

「しっかし、格式ある大学の広大な校舎群が、丸ごと一つお菓子まみれになるなんてね。東京っていう帝都は、いつだってこんな理解不能な狂気に満ちているわけ?」

 柄長が、これから直面するであろう異常事態を想像して怪訝な顔を作った。

「いや、流石にそんなことはないよ。そりゃあ現代のこの異能社会においては、突発的に何かしらの異常現象が巻き起こるのは日常茶飯事の些事ではあるけれどさ。ここまで広範囲に及ぶ大規模なやつは、私もあんまり見ないかな」

 筮麽は流れる都市の景色をぼんやりと眺めながら、至極冷静に答えた。

 現在、時刻は午後。二人の行き先は、東京に位置する地雷系女子大学にて突如として勃発した、前代未聞のお菓子・パンデミックへと参加すべく、現地へと向かう途上。

 柄長は大学での講義を全て終えた後、いつもの都合の良い足代わりとして、筮麽の瞬間移動に頼り、長野から東京の地まで遥々連れてきてもらった。筮麽自身も、現地に発生した巨大スイーツを限界までたらふく胃袋に収めるべく、この狂気の祭りごとに参加するとラインで宣言していたため、柄長は自分もその歴史的瞬間に立ち会いたいと連絡を入れた次第。

 筮麽の個人的な感情としては、目的地に限りなく近い人気のない路地裏などに直接瞬間移動したかった。しかし、彼女が普段使いしている一度訪れた場所に瞬間移動する能力は、その名の通り、文字通り自身が過去に足を踏み入れたことのない未知の座標には空間跳躍が不可という、厳格な制約が存在した。地女大の周辺一帯は完全に筮麽の行動範囲外の未踏領域であったため、こうして最寄り駅から律儀に公共交通機関である電車に乗って移動しなければならない羽目に陥っていた。

(なんて不便極まりない、欠陥だらけの能力なんだ……)

 筮麽は内心で毒づいた。他者の能力を一度視認し、本質を理解しただけで我が物とする、視認した能力を行使する能力という、世界を崩壊させかねないほどのチート能力を宿しているにも関わらず、その実、全ての状況において万能というわけにはいかないという事実。これは紛れもなく、世界一贅沢で傲慢な悩み。

 やがて目的の駅に到着し、電子音と共に開いた扉から電車を降りた二人は、そのまま並んで喧騒の街へと歩き出した。柄長がふと見上げて口を開く。

「ところで筮麽」

「ん?」

「あんた、また少し背が伸びたんじゃない? 数ヶ月前は、もう少しだけ私との目線が近かった気がするんだけど」

「あー、やっぱり傍から見てもそうだよね。私自身も薄々感づいてた」

 そういえば、先ほどの電車の乗り降りの際にも、乗降口の扉の前で無意識のうちにやや前傾姿勢に屈まなければならなかった記憶が蘇る。

「実はさっき電車の中で、柄長にぼーっとしてたって指摘されたの、まさに身長の事についてちょっと考えてたんだよね。よく私の考えに気が付いたね。柄長、心でも読んだ? 君も実は私みたいに、複数能力を使えたり?」

 冗談めかして軽い口調で言うが、

「そんな訳あるか。……で、実際どうなのさ」

「ちょっと待ってね。探すから」

 筮麽は瞬時に自身の膨大な記憶の海へと深く潜る。無数にストックされた異能。燃費を抑えるべく同カテゴリに集結されひとつの異能へと変質しているが、それでもその数は膨大な山と化している。その山から、あるひとつの極めて限定的な能力を探し当て、発動させた。自身の身長が分かる能力。

「おおー、百八十八・五センチだって。私の感覚のズレ、気のせいじゃなかったらしいね」

「……うっそだろお前。え? もう二十歳でしょ。成長期なんてとっくに終わってる年齢なのに、まだ縦に伸びたの?」

 柄長が心底ぎょっとして、目を丸くして言った。

「らしいねー。毎日毎日、食べまくってるから、細胞が活性化しているのかな?」

「てか、小数点第一位まで正確に把握できるって? そういう系の、やたらと精密な測定能力って訳か。前言ってた水の成分が分かる能力みたいに」

「ん、そういうこと。てかよく覚えてるね」

 筮麽は視線を僅かに下げて柄長の方を見やり、

「柄長は百五十三・三センチだね。全然変わってない」

「げっ。私の身長まで分かるのかよ」

「こっちはさっきのとは別の能力。相手の身長が分かる能力」

「おいっ。勝手に人の身体情報を見るなっ!」

 柄長が非難の意を込めた鋭いジト目を向ける。

「ごめんごめん」

 筮麽は軽く謝る。

 柄長は内心で、この規格外すぎる友人の存在を本気で恨めしく思った。確かに医学的な見地からすれば、二十歳を過ぎても稀に骨端線が閉鎖せずに身長が伸びる事例は存在するが、よりにもよってこの圧倒的なプロポーションを誇る筮麽がその特異な例に該当するとは、世の中の不条理を呪いたくなる。

「……まぁ、その能力、絶対に私以外の人には使うなよ? いや、私もダメだけど。身長だって、一応は立派な個人情報でしょ」

「使わないよ。一切役に立たないし、他人の身長なんて別に面白いもんでもないし。この能力、過去に持ち主からコピーした時以来使ってないしね。初めて引っ張り出して使ったよ」

 筮麽の、いつもの感情の起伏に乏しい、ぼけっとした声色。彼女の精神構造において、他人のパーソナルな情報など、路傍の石ころと同程度に毛ほどにも興味を惹かれない対象。

「と言うか夏頃に同じ系統の能力まとめたって言ってたけど、相変わらず個別に使ってるんだ?」

「そうだね。正確に言えば、能力の一部だけ使ってる感じかな」

「んな器用なことが出来るのか」

「柄長も普段からやってるでしょ。電波と技術操作を分けたり」

「あ、確かに」

「みんな普段から能力全開にしてる訳じゃないし、私のもそうだよ。というか同時に使ったら過剰出力になる」

「あはは、そりゃそうか」

「ま、無駄話はこれくらいにして早くいこ。お腹空きすぎて、冗談抜きでほんとに餓死して倒れるかもしれない」

「はいはい、わかったから」

 柄長は自身の宿す電子機器への干渉能力を発動させ、手元のホロフォンを思考のみで起動した。空中に展開された立体マップを開き、目的地を騒動の中心地である地女大に設定し、二人は他愛のない雑談を交わしながら歩みを進めた。


 しばらくアスファルトの道を歩き、大学の近場まで接近してくると、やけに周囲の通行人の数が増加し始めた。どうやら、この群衆の大半が、前代未聞のこのお菓子まみれのイベントに参加しに押し寄せている野次馬たちのよう。国家指定危険能力認定者という、強大な力を持った対象によるこの広域なパンデミック現象も、平和ボケした現代社会においては一種の大規模な娯楽イベント扱いで、皆一様に意気揚々とした足取りで現場へと向かっている。

 大学の正門へと近づくにつれ、大気中に濃厚な甘い香りが漂い始めた。筮麽が狩りを見つけた肉食獣の如く目を輝かせるが。

「いい匂いだね。これは期待。楽しみだ。瞰も今頃食べてるのかな」

「私は逆に不安で仕方ないわー。郝躬のやつ、この狂騒の中で本当に無事で大丈夫かな……」

 歓喜する筮麽とは対照的に、柄長の胸中には拭い去れない不安感が渦巻いていた。これから先、致死量の甘い菓子と、特異な生態を持つ地雷系女子大生たちが密集する未知の校舎へと足を踏み入れる。しかし、柄長個人の感情としても、たまにはこういう日常の枠組みを大きく逸脱した大規模な非日常の祭典に参加してみたい、という密かな好奇心が存在したことも事実。普段からこの規格外の能力者である筮麽を見慣れているとはいえ、それとこれとは完全に次元の異なる話。それに、 西圓寺に安否確認の連絡をした際にも、「キャンパスがえらいすごいことになってるよ!」という悲鳴と共に凄まじい画像が送られてきたので、是が非でもこの目で直接その惨状を確かめてみたいという欲求に駆られた。

「ここか」

 歩みを止める。

 眼前。

 巨大な校舎群の威容が姿を現した。

 空中のホロフォンを閉じ、二人は熱気に包まれたキャンパスへと足を踏み入れる。


 そこに広がっていたのは、現実の物理法則を嘲笑うかのような光景。

 桜色に彩られた重厚なる近代建築の壁面には、常軌を逸した質量を誇る巨大なアイスクリームや、極彩色の粉末を纏ったドリトスが、まるで狂い咲く極楽浄土の華々の如く咲き乱れている。本来ならば無機質なコンクリートの表面には、爆ぜたポップコーンが奇怪な海洋生物のフジツボの如く無数に寄生し、圧倒的な密度でへばりついていた。さらに見上げれば、頭上の空間からは巨大な板チョコのブロックが無作為に張り付き、あるいは落下の一途を辿る寸前で停止し、威容を誇る屋上部分からは、天を衝くかのような巨大なポッキーや、星型の断面を持つチュロスが、神殿の石柱の如く屹立している。それはもはや学問の府などではなく、狂気の沙汰としか形容し難い、巨大な菓子の城塞。

 頭上の空中を見渡せば、色とりどりの極彩色に染め上げられた大小様々なドーナツ、繊細な意匠が施されたマカロン、宝石のように煌めくキャンディ、弾力性に富んだ果汁入りグミなどが、重力の枷から解き放たれたかのようにふよふよと飛び交い、甘い香りを放つクッキーやビスケットを大量に纏った巨大なわたあめの雲が、どんよりとそこら中に浮遊している。

 この大学の本来の主である、過剰な装飾と独特の化粧を施した地雷系のギャルたちのみならず、外部から押し寄せた数多の参加者の野次馬たちまでもが、空を舞う未知のお菓子と童心に帰ったように追いかけっこを繰り広げている。

 空間全体が、暴力的なまでの甘ったるい香りと熱気で包み込まれ、まさに視覚と嗅覚を同時に犯す地獄、あるいは甘味を愛する者にとっての至高の天国のような光景。

「す、すごいな、これ。現実の光景とは到底思えない。ねぇ、筮麽?」

「うん。確かに美味しいね」

 同意を求めて横の筮麽へと視線を向けると、彼女は既に何時の間にか空中に浮遊していた巨大なドーナツを素手で捕獲し、その端から豪快にもぐもぐと咀嚼し始めている。その野生動物も顔負けの行動の速さに多少呆れ果てるが、いかにも筮麽らしいブレない姿勢。

 筮麽は食べかけのドーナツを咥えたまま、空いている左手を天に向かってすっと優雅に掲げ、彼女の表向きの能力として世間に公言している──身体から触手が生える能力を発動させた。

 すらりとした美しい五指の先端が、突如として無機質な冷光を放つメタルヴァイオレットの禍々しい触手へと変形を遂げる。それは意志を持つ蛇の如く空中へと爆発的に伸び、極めて器用かつ精密な動きで、宙を舞う菓子類を次々と空中で捕獲していく。分厚いドーナツや硬質なマカロン類に対しては、触手の先端を鋭利な刃の如く変形させて正確に中心を突き刺し、逆にキャンディや繊細なクッキーなどの、強い衝撃を加えると砕け散ってしまう脆い対象に対しては、触手の表面を特殊な粘性物質へと瞬時に変化させ、べたっと吸盤のように張り付かせて安全に確保する。

 そのあまりにも常軌を逸した、しかし恐ろしく洗練された異能の行使に、周囲ではしゃいでいた野次馬たちの視線が、一斉に筮麽の元へと釘付けになった。

「ねぇ、見てよあそこのあの人っ!」

「指から、なんか金属みたいな触手が生えてるぅ!?」

「なんだあの能力、すげえっ! 動きがまるで生き物みたいだっ!」

「てかめちゃくちゃ美人じゃね?」

「顔、美形で、ある意味、ビックリ」

「マジだ! 現役モデルさんか何かか!?」

「あの触手捌き、絶対に只者じゃないぞっ! 凄いというより、激激凄いっ!」

 四方八方から飛び交う、驚愕と賞賛、そして好奇の入り混じった野次馬たちの嬌声。

 しかし、当の筮麽本人は、自分に向けられた数多の視線やどよめきの声など何処吹く風。全く意に介する様子もなく、触手が次々と運んでくる大量の菓子を、信じられない速度でがつがつと己の胃袋へと送り込み続けている。

「ん、最高。柄長もひとつどう?」

 咀嚼を止めることなく、筮麽が一本の触手を柄長の眼前へとスルスルと伸ばし、そこで確保した特大サイズのポン・デ・リングをひとつ、親切にも差し出してくる。

「あー、いや私はいいよ。全部あんたが食べちゃって。……ほら、あっちの広場の方で、普通サイズのお菓子が無料配布されているみたいだから、私はそっちの列に並んでそれをもらうわ」

 柄長が指さした視線の先、広場の中心付近には、目にも鮮やかな真っピンク色に塗られた巨大なパイプテントが設営されており、女子生徒たちが、テーブルの上に並べた多種多様なお菓子を参加者たちに配給しているようだった。そちらのテント内では、空中を飛んでいるような巨大な代物ではなく、ちゃんと常識的なサイズに収まった菓子類が配布されている様子。柄長は隣の底なしの胃袋を持つ筮麽とは違い、極めて常識的な食事量しか許容できない大食らいではない普通の人間。特大サイズの菓子など、一口食べただけで深刻な胃もたれを引き起こしそうなので、せめて普通サイズの菓子にしようと賢明な判断を下した。

「ん、おっけー。了解。じゃ、私はお菓子を片っ端から捕まえつつキャンパスを適当に彷徨いてるから。もし何かあったら連絡してね」

 筮麽は空いている右手でひらひらと軽く手を振り、再び五指の触手を全方位へと伸ばし、無慈悲なまでの速度で未知の菓子群の捕獲作業を再開した。

 そんな彼女の、ある種の神々しさすら漂う背中を呆れ半分で見送り、柄長は人混みを掻き分けながら目的のパイプテントへと向かった。

「なるほど、本当に色々なお菓子が揃っているんだな」

 柄長がテーブルの上に山積みされた、色鮮やかな菓子類を興味深そうに眺めていると、配布係を担当している、これでもかというほど装飾過多な地雷系メイクの女子生徒が、愛想よく話しかけてくる。

「すごいでしょぉー? うちの大学中が、一瞬で全部お菓子まみれになっちゃった訳ぇー。どれもこれもチョー美味しいから、どれでも遠慮なくオススメですよぉー」

「な、なるほど。それは大変ですね。じゃあ、こちらのこれと、その横のアイスでお願いします」

 柄長は、あまりにも馴れ馴れしい特有のギャル口調の波状攻撃に精神的に多少萎縮しつつも、手前の皿に乗ったエンゼルフレンチと、巨大なタッパーに隙間なく詰められたアイスクリームを指さした。

「おっけぇ〜。じゃあ、ちょっとだけお待ちくださぁ〜い」

 女子生徒は手慣れた様子で手速くエンゼルフレンチを小さな丸皿に乗せ、銀色のアイスディッシャーで器用にアイスクリームを丸く掬い取ってその横に添えつけ、笑顔で柄長へと差し出す。

 受け取ってよく観察してみると、その丸皿自体も陶器やプラスチックではなく、どうやら食用に作られた薄いモナカの生地で形成されているらしい。

「あ、言い忘れてたけど、そのお皿も全部食べられる素材で出来ているから〜、最後にそのままバリバリって食べちゃっていいよぉー」

「これはご丁寧に、どうもありがとうございます」

「それにしても君ぃ、近くで見ると随分とちっちゃくてかわいいですねぇ。もしかして高校生? 今日は危険な場所に、ひとりで遊びに来たの?」

 女子生徒が、悪意のない純粋な好奇心の目で尋ねてくる。

「あー、一応これでも、二十歳の立派な大学生ですよ。今日は、あっちで暴れている友人と一緒に来てます」

「あっ! そうなんですか!? ひゃー、すみません、私てっきり年下の中高生かと勘違いしちゃって……」

「いえいえ。よくあることなので、どうぞお気にならさず。じゃあ、私はこれで」

 身長が低いため、初対面の人間から実年齢よりも遥かに低く見積もられ、子ども扱いされることにはもはや完全に慣れきっているが、やはり面と向かって指摘されると、心中穏やかではなく、気にはしてしまう。

 柄長は居心地の悪さからそそくさとその場を離脱し、少し離れたベンチに腰を下ろすと、もらったばかりのエンゼルフレンチを摘み上げ、アイスクリームを付け、ぱくりと口に運ぶ。

「あ、なるほど。確かにこいつは美味いなこりゃ」

 友人たちから美味いとは聞いていたが、何せ、正体不明の能力に由来する超常的なお菓子。口に入れるまでは一抹の不安があったため、一体どんな味がするものかと身構えていたが、舌の上で溶けるその味は、有名専門店の高級スイーツにも引けを取らない、予想を遥かに超える絶品。

(そういや、この騒動の中心地にいるはずの郝躬は、今一体どこにいんだろ? とりあえず無事かどうか連絡してみるか)

 口の中いっぱいに広がる甘味を堪能しつつ、柄長は自身の能力を静かに起動し、空中にホロフォンを展開して連絡先の一覧を開いた。

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