亜鳴蛇筮麽と鴨紅柄長
十三
「や、やめて……」
悲痛極まる絶望の懇願。
密閉された空間に虚しく響き渡った。
「お、お願い筮麽……お、お慈悲を」
絞り出すような声。
得体の知れない恐怖に直面したかのように小刻みに震動している。
「うわあああああっ!」
断末魔の如き絶叫。
それと同時に、カチ、と無慈悲に硬質なプラスチックのスイッチが押し込まれた。眼前。テレビに映し出された重武装の兵士キャラクターが、眉間を正確に撃ち抜かれて崩れ落ち、暗転した画面中央に血の如く赤々としたYOU LOSTの文字列が残酷に浮かび上がる。
「そ、そんな……」
ガックリと項垂れ、手にしたコントローラーを取り落とす。
その横。
「柄長、うるさい」
怜悧な声の主。同じくコントローラーを手に、一切の感情を排したような冷めた視線を向けてそう言い放ったのは、亜鳴蛇筮麽。
「あはは。ごめごめ、ちょっとばかり大袈裟すぎた?」
先程まで阿鼻叫喚の悲鳴を上げていたのは、鴨紅柄長。彼女は照れ隠しのように頭を掻きながら、にぱーっと笑って顔を上げた。
「大げさだよ。たかだかゲームの勝敗で、この世の終わりみたいな声を出すなんて」
筮麽は呆れ果てたようにそう呟き、手元の端末から視線を外し、柄長の方へ面倒そうに首を向けた。
ここは、山々に囲まれた避暑地、長野県に位置する柄長のアパートの一室。
築年数の浅い真新しい新築のアパート内は、生真面目な彼女の性格を反映してチリ一つ落ちていないほど綺麗に掃除されており、生活感の薄い殺風景な空間ではあるものの、どこまでも清潔感溢れる部屋となっている。最新鋭のクーラーによって、外の苛烈な猛暑を完全に遮断し、最適に冷やされた快適な室内環境。
現在、彼女達の通う国際信州学院大学、すなわち国信大も、長期の夏休みに突入している。そのため、講義の呪縛から解放された二人は、平日の真昼間からこうして怠惰の極みのような姿勢でぐーたらと床に転がり、対戦型のFPSで時間を浪費して遊んでいた次第だ。
「いやぁ……現実じゃ天地がひっくり返っても敵わないから、せめてゲームの世界でくらい、あんたに一泡吹かせて勝ちたかったんだけどなぁ」
柄長は悔し紛れにぼやきつつ、横に座る規格外の友人の方をねめ回すように見た。
何度見ても、同じ人間とは思えないほど呆れる程に整った造形美を誇る顔立ち。女性としては世界的に見ても圧倒的な長身。そして、ゆったりとした部屋着の上からでも自己主張の激しい、重力に逆らうような豊満な双眸の膨らみ。
加えて彼女は、視認した能力を行使する能力、すなわち他者の異能を瞬時に自らのものとして模倣し行使するという、文字通り世界最強、反則的な能力者。
本日も筮麽は、怠惰な日常を貪るため、柄長と遊ぶべく、瞬間移動で瞬きする間もなく柄長のアパートに飛来していた。
「ふふふ。私の才能を舐めちゃいけないよ。私は何をやっても万能なんだから」
筮麽は自らの完全なる勝利を祝すように、にやり、と口角を上げて不敵に笑って見せた。そして、だらしない姿勢のまま寝転がり、
「じゃあ、厳正なる勝負の結果、私の完全勝利ってことで。約束通り、今日のお昼ご飯の寿司奢りは敗者の柄長ね。支払いの準備はよろしく」
そう、悪魔のような宣告を下す。
普段から筮麽の瞬間移動で行動を共にし、日本のあちこちの観光地や秘境のグルメをタダで巡っていた柄長。その便利な移動の対価たる交通費と称して、何時も何時も理不尽な食事代を全額奢らされていた。
そして昼時を迎えた今。いつも通り「お腹空いた、外に美味しいもの食べに行こう」と筮麽が言い出したため、柄長は内心、またしても自らの薄い懐から高額な資金を搾取されるのかと恐怖に慄き、被害を最小限に抑止すべく、ひとつ起死回生の提案をした。そう、己の得意分野であるFPSのゲームでのサシ勝負で、勝った方が負けた方に全額奢る、というハイリスク・ハイリターンな賭けの勝負だ。
自身に満ち溢れた筮麽も「私が負ける道理はない」と当然のように承諾したが、柄長はそこに極めて重要なルールを付け加えていた。それは<能力使用の完全禁止>だ。
もし能力使用ありという無法地帯のルールであれば、柄長の電波でテクノロジーを操る能力を以てすれば、神の如き権限で電子回路に直接干渉し、ゲーム内のプログラムや当たり判定を自由自在に改ざんし、いとも容易く勝利することなど造作もない。
だが、相手はあの亜鳴蛇筮麽。過去の交流の中で、柄長の持つ技術操作の能力すらも当然のようにコピー済みであり、そもそも彼女の体内にストックされている能力の総数は莫大な数字に上る。
どうせ技術操作系に近い類似能力や、未来予知、思考加速といったチート能力も山のように保持しているだろうし、そもそもあらゆる事象に干渉できるであろう絶対的強者相手に、いくら電子の海とはいえ、自分の技術操作能力だけで真っ向勝負を挑んでも到底勝てる気はしない。故に、純粋な身体能力とゲームセンスのみを問うルールを強要した。しかし、結果は見ての通り無残な敗北。
「しょうがないなぁ。約束は約束だし。でも、行くのは絶対百円寿司ね。あんた、いっつも無限に食べるんだから。回らない高級寿司なんて行ったら、私、来月まで筮麽のくれた水だけ飲んで生き延びなきゃならなくなる」
「えー、安上がりだなぁ。まぁいいや、うん、とりあえず百皿は軽く食べようかな」
「いやいやっ! 百円寿司で数万円超えのお会計を叩き出す気かっ。一般人の限度というものを知れっ!」
「えー。だって柄長、哀れな敗北者じゃん。敗者にメニューを選ぶ権利なんて存在しないんだよ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
相変わらずの筮麽の傍若無人ぷりに、柄長はぐうの音も出ず言い返せない。
長年やり込んできたFPSには絶対の自信があったのだが、互いの技術が拮抗する大接戦の末、最後の一発の差で敗北してしまった。この怠惰な友人は、規格外の異能を抜きにしても、動体視力や指先の緻密なコントロールといった素の基礎スペックが異常なまでに高い。
神に深く愛される所か、彼女自身が何かしらの超越的な神の化身そのものなのではないのかと、本気で疑ってしまうほどだ。
「てかさ、相変わらず底なし沼みたいにめちゃくちゃ食う体質に変わりはないよね。少し前に、頭ん中でごちゃごちゃになってる能力の整理整頓をしたんじゃないの?」
柄長は溜息をつきつつ問うた。
その莫大な能力保有数の代償として、肉体が過剰なカロリーを消費し続け、常に飢餓状態のような空腹を抱えていた筮麽。以前、彼女は膨大な能力のリストを見直し、類似する同カテゴリの能力群を一つの強力な能力体系として効率的にひとまとめに圧縮することで、その無駄な燃費を大幅に抑えることに成功したはずだった。
「まぁ、四六時中空腹で餓死しそうになる異常な空腹感は綺麗になくなったけど、相変わらず燃費は圧倒的に悪いままだからね。なーんもしなくても莫大なカロリーを持っていかれる。まぁ、前よりは全然マシになったよ。整理したおかげで空き容量はだいぶ増えてスッキリしたんだけど、例の千里眼能力のお陰で、コレクションの数がどんどん増えてるから、結局プラマイゼロでどっこいどっこいって感じ」
筮麽は手にしたコントローラーを無造作に置き、あくびを噛み殺しながら言った。
彼女が持つコピー能力の絶対条件のひとつ、それは<対象者の能力発動の瞬間を視認する>という極めて視覚的な制約。だが、遥か千里の先までをも精密に見通す千里眼の能力を会得してしまったことにより、自室のベッドから一歩も動かずとも、日本中で能力を行使する人々の姿を俯瞰的に見通し、コピーの条件を満たしてしまうというチート現象が以前より起きていた。
もちろん、<その能力の仕組みや本質を理解せねばならない>というもうひとつの厄介で複雑な制約も存在するため、見たもの全てを無条件で完全に手に入れられるわけではなく、縦横無尽とは行かない。
だがそれでも、千里眼によって自宅にいながらにして日本中の有象無象の能力を観察・分析し、新たなコレクションを次々と増やしていくことが可能になった。結果として、圧縮して空けたはずの容量は瞬く間に埋め尽くされ、彼女の体内に内包されるコピーの数は、以前よりもさらに莫大で手に負えない数へと膨れ上がっている。
「能力使用ありの勝負なら、柄長が勝てたかもしれないねー」
筮麽は天井を見上げ、どこまでも呑気に言う。
柄長はすぐさま顔をしかめ、
「いやいやいや。それこそ天地がひっくり返っても絶対勝てないでしょ。筮麽は私の能力もとっくにコピーしてるし、どうせ同カテゴリーの技術操作系の能力も山ほど持ってるんでしょ」
と、間髪入れずに言い返した。
「まぁね。と言っても、私の持ってる技術系なんて、モニターの画面を触らずタップする限定的なものとか、機械の電源をオンオフするだけのものとか、そう言う日常の些細な便利機能レベルのしょぼいのしかないよ」
「え? そうなの? なんでも出来るチート能力の塊なのに?」
予想外の返答に、柄長は思わずポカンと口を開けてしまう。確かに、同系統の能力と言っても千差万別ではあるが。
「うん。で、私も柄長の能力を実際にコピーして使ってみて実感として分かるけど、柄長の操作能力の精密性と干渉力は別格。機械類なら文字通り何でも自由自在に根幹からハッキングできるでしょ。私の知る限り、この国に存在する技術操作能力の中で、君のが一番汎用性が高くて圧倒的に便利だよ。断言できる」
「はいはい、そりゃあどーも。世界最強様からの身に余るお褒めの言葉、光栄至極」
筮麽が珍しく手放しに柄長の能力を高く賞賛するが、柄長はからかわれていると思い、柳に風と適当に受け流す。
柄長の持つ能力は、電波の発生と、あらゆるテクノロジーに対する高度な技術操作という、二重属性。
その身から放たれる電流の火力は、地方都市一つを賄う大規模発電所並みの莫大な出力を軽く誇り、精密性に関しても、彼女自身の持つ天性の才能により、電流の変形や出力の調整など、抜群な操作性を誇る。
そして核となる技術操作なのだが、筮麽の発言通り、世間にあふれる同系統の能力は、テレビのチャンネルを変える程度の極めて限定的かつ、ささやかな能力がほとんどを占める。だが、柄長の力は現在存在するあらゆるテクノロジー領域を完全に網羅している。身近な家電やラジコンに始まり、車、高度なシステムで飛ぶ大型旅客機、はたまた宇宙へ飛び立つロケットや、軍事機密の塊である大陸間弾道ミサイルですら、その気になれば鼻歌交じりに掌握し、完全に操作可能。
さらに恐るべきはその干渉の射程。現在、柄長の意識が及ぶテクノロジー範囲の射程は、自身を中心に半径三百五十メートルという広大な領域にまで広がった。少し前までは半径二百メートルが限界だったのだが、彼女が一緒に遊んでいても、ふとした瞬間にすぐどこか遠くへ消えてしまう気まぐれな筮麽のホロフォンを確実に探知し捕まえるべく、少しばかり範囲拡張の特訓をしようと練習した結果、どんどんとその干渉範囲は際限なく増えていった。
ほんの少し軽く鍛えただけでこの異常な成長速度を見せる、まさに才能の塊。鴨紅柄長の能力もまた、その気になれば都市機能に甚大な被害をもたらす事も容易で、国家危険能力クラスに指定は間違いないであろうほどのとんでもない異能の持ち主だ。
柄長は横に寝転がる友人の完璧なプロポーションの体を、下から上へと舐め回すようにジト目で見る。柄長にとって、自身の持つ強大な能力などせいぜい毎月の電気代の節約や、リモコンを取りに行く手間が省ける便利道具程度にしか思っておらず、世界を脅かす力への自覚など欠片もない。
それよりも、自身の平均を大きく下回る小柄な身長と、凹凸の欠片もない絶望的な幼児体型をコンプレックスとして深く気にしており、そっちの肉体的な悩みの方が彼女にとっては余程の大問題であり、人生における死活問題だ。
「まぁ、ゲームにも使えそうな技術系能力や反射神経強化の能力も組み合わせて代用できるとは言え、やっぱり直接的な干渉となると、君からコピーした能力がメインの武器になるかな。でも、全く同じ能力とは言え、柄長自身のが圧倒的に使い慣れてるでしょ?」
「そりゃあまぁ、生まれてからずっと付き合ってる私の体の一部だし、そうだけど」
「だから、もし能力ありの全力勝負をしたとしても、結果はどう転ぶか分からないんじゃないかな? 正直、柄長みたいな変態的なレベルの細かい技術操作は、いくら私でも出来ないし」
「ほんとかぁ~? またそうやって私をおだてて油断させる気でしょ」
柄長は疑わしそうに目を細めて筮麽の横顔を見る。
口ではそう謙遜してはいるものの、この女は自身の持つ他の身体強化や思考加速の能力を並列起動し、コピーした能力をオリジナルを超えて強化・使用することも平然と涼しい顔で行なっている。
そのため、全く同じ能力を行使しても、その出力スペックや応用力はオリジナルと天と地程の絶望的な差を出すことが容易に出来る。
実際、柄長の能力をコピーして放つ電撃の最大火力や効果範囲は、筮麽の方が比較にならないほど圧倒的に高く、天災レベルの破壊力を誇る。だが、回路の奥深くを這うようなナノメートル単位での緻密な電流の調整や、プログラムの隙間を縫うような緻密な技術操作の精度だけで言えば、オリジナルたる柄長に圧倒的に軍杯が上がる。
しかも柄長は、そんなスーパーコンピューターが計算するような高度な緻密操作を、無意識下で呼吸をするように自然に行える。鴨紅柄長という女も、またこの異能普遍世界において、規格外の存在に変わりはない。
「なら、口先だけじゃないなら、能力有りのルールでもう一戦やろうか? 先取二戦のポイント制で勝ちってことで。もしあんたが負けたら、今日の寿司の奢りの約束は綺麗さっぱり白紙撤回で。そのあともう一戦付き合ってもらう」
柄長は捲土重来を期して強気に提案するが、
「えー。面倒くさい。能力有りの全力バトルはまた今度にしようよ。お腹も減ったし。それに、今の柄長はただの哀れな敗北者なんだから、勝者たる私に対する命令権も提案権も一切ないよ」
「ちぇーっ、逃げやがった。まぁわかったよ、今日のところは私の負けってことで」
柄長は負け惜しみのようにそう言ったあと、軽く息を吐いて自身の能力を使う。
パチッ、と空中で静電気が弾けるような水色のスパークが発生し、同時に彼女の黄金色の瞳の彩度が急激に変化し、発光する水色へと染まり変わる。
それが、彼女の能力が完全発動した明確な合図。壁掛けの大型テレビは、彼女の意思を受けた水色の電磁フィールドにふわりと包み込まれ、主電源が静かに落とされた。
「んー?」
そうしてゲーム機の片付けをしていると、背後から筮麽の間の抜けた声。ホロフォンへの着信通知に反応したようだ。
筮麽もまた、指一つ動かさずに電波でテクノロジーを操る能力を使用。筮麽専用にカスタマイズされた紫電が空中にバチバチと発生し、自身の左手首に埋め込まれた小型デバイスから、空中に緑色のホログラム画面が鮮やかに投影されて浮かび上がってきた。
画面に表示されたメッセージの発信者を見て、筮麽は心底億劫そうに眉をひそめ、
「えー、めんどくさいなぁ」
そう舌打ち交じりに呟き、空中に浮かぶキーボードを能力で遠隔操作し、指一本触れずに高速で返信の文字を打ち込んだ。
「どうしたの? 誰かからの呼び出し?」
柄長はケーブルをまとめながら視線を筮麽の顔に向け、
「ん、ちょっとね。姉さんからだよ。たまには顔出せーってさ。非常にしつこい」
「へぇー、姉さんねぇ……えっ!?」
柄長は適当に相槌を打とうとして、数秒遅れてその単語の異常性に気づき、
「えええっ!? ちょっと待って! 筮麽、あんた姉なんていたの!?」
思わず持っていたケーブルを取り落とし、大声を上げて吹き出した。
「うん、いるけど。私より四つ上の立派な社会人だよ。それがどうかした?」
「どうかしたじゃないわっ! 何で今まで一言も言わなかったのさっ! ずっと一人っ子だと思ってたのに!」
「だって、これまで君に家族構成について訊かれたことなんて一度もなかったし。わざわざ自分から『私には姉がいるんだ』なんて自己紹介する必要もないでしょ」
筮麽は悪びれる様子もなく、どこまでも涼しい顔で平然と言う。
「まぁ、確かにそうだけどさ……筮麽の姉かぁ……一体どんな人なんだろ」
柄長にとって、それは突然降って湧いたように非常に興味をそそられる重大な未確認情報だった。
世界最強、あらゆる理不尽を体現したような能力者である亜鳴蛇筮麽。
世界中の能力研究データによれば、能力の性質や出力は近親者の間で強く遺伝し、双子や兄弟姉妹などでも極めて似通った、あるいは相互に干渉し合う強力な特性を持つことも多い。
柄長は、この目の前の呆れるほど規格外な美貌と長身を持つ女の血を分けた姉が、一体どれほどの絶世の美女であり、そして一体どんな常軌を逸した化け物地味た能力をその身に宿しているのかと、想像の翼を大きく広げた。
「そんなに気になるなら、今度一緒に会ってみる?」
筮麽が、まるでコンビニに誘うような軽いノリでさらりと言い放ち、
「えっ、会う会うっ! めちゃくちゃ気になるよ、あんたの血を引く姉なんてっ! 絶対やばい人でしょっ!」
柄長の興奮した声が一段と大きくなる。
思わず身を乗り出す。筮麽の顔。すぐ近くまで詰め寄った。
「やばいっていうか、普通に鬱陶しい人だけど。じゃあ、今度友達連れてっていい? って話しとくね。あの姉さんの事だから、私がちゃんと外で友達を作って家に連れてきたら、喜ぶと思う。昔から、私が友達が少ないの無駄に気にかけてくれてるっぽいし。完全に余計なお世話なんだけどね」
「うんうんっ。絶対お願いねっ! 予定空けとくから!」
期待に胸を膨らませて声が明るく弾んでいる。底知れぬ力を持つこの友人の実の姉には、恐れよりも好奇心が勝り、是非一度対面してみたい。
「ま、家族の話はまた後で。それより早く寿司屋行こ。ゲームで頭使ったら、お腹空いて本当に餓死して死にそう。限界」
筮麽は、態とらしくやつれた死んだような顔を作り、ぺたんこの腹を大げさに摩ってみせながら、のそりと立ち上がる。どうやら姉への返信よりも、限界を迎えた自らの食欲を満たすことが最優先事項らしい。
「へいへい、分かったから。あんま食べすぎて、百円寿司のお店を出禁になんなよ? 私の財布のライフもゼロになるし」
柄長も呆れ笑いを浮かべながら立ち上がる。
再び能力を使い、クーラーの電源を落とした。




