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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 生徒会室にはいつものメンバーが揃っていて、ちょっと違うのは平日の朝だから、誰も書類の山に触れていないことくらいだ。

 今年度の行事も残りは卒業式くらいで、それが終わって春休みになると和己たちは修学旅行に行く。その間に俺たちが入学式の準備をしていく。一年の中で今が一番余裕がある時期なのかもしれない。

 余裕があれば先のことを前倒しにしようとして結果としてなんとなく忙しい気がする。

 一通りみんなと挨拶をして、なんとなく手持ち無沙汰になってしまう。

「恒」

 小さな声をかけられて、和己に向き直る。手招きされて側に寄ると、小さな箱を差し出された。反射的に受け取って、首をかしげると苦笑いが返される。

「俺が、バレンタインに貰うことだけ期待して、恒にはホワイトデーに返せばいいって考えてると思ってた?」

 正直言って何も考えてなかったわけなんだけど、そう言ってしまうとまた笑われてしまいそうで。

 曖昧に笑みを浮かべた俺の表情を正確に読み取った和己はそれ以上の追求をやめてくれた。

「ありがと」

 お礼を言うと和己が頭を撫でてくれる。くすぐったくて首を竦めると指先が頰を撫でてそっと離れていく。うっかりあまったるい空気になりかけたところで、悠さんが両手を合わせて音を立てる。

「そこまでだよ」

 和己がちいさく舌打ちしたのが聞こえたので、意図的にその空気を作ろうとしていたのが分かって、そっと睨みつけると、ふわりと笑いかけられる。その表情に騙されそうになる俺って本当にチョロいんだなぁとため息をついた。

 悠さんが一人に三つずつチョコレートを配りはじめて、どうしたのかなって思っていると、ゆりちゃんと沙矢ちゃんからだよと告げられる。

「あ、放課後は僕と弘幸は先に帰るからお休みするね」

「……どうして僕の予定を悠が決めるのかな」

 聞いてないよと問いかける弘幸さんに悠さんが笑いかけた。

「さっちゃんが、ゆきお兄ちゃまには自分で渡したいのって言ってたから、今日連れて行くって約束しちゃったんだよ」

 その言葉を聞くと同時に弘幸さんは悠さんと放課後はすぐに帰ることを即決した。

 俺も先日購入したチョコレートをみんなに渡して、予鈴が鳴ったところで教室に移動する。

「机に教科書とかを入れる前に、中を確認した方がいいよ」

 柔らかな空気を纏う弘夢がくすくす笑いながら言う。対照的に俊は無表情でため息をついている。

 言われた通りに机の中に手を入れると、ガサリと何かが触れる。そのまま取り出してみて、なんとも言えない笑いがもれた。

「文化祭のミスコンって、結局は人気投票なんだよ。……世の中、カッコいい人が好きなのも、かわいい人が好きなのも満遍なくいるんだよ」

 長い休み時間も生徒会室に行っておかないと、手渡しされる方が微妙な気分になるよと言われて、そんなものかと頷いた。

 昼休みと放課後も生徒会で過ごして、帰宅前にもう一度だけ机を覗いて中身を回収する。

 結構な数を貰ってしまったけど、この中でキチンとお返しできるものってあるのかなと心配になる。

 ちなみに俊は貰ってもお返しはしたことがないらしくて、それでも渡したいっていう人たちがこっそりと渡しているらしい。

 弘夢いわく「俊のファンはドM」なんだそうだ。じゃあその俊とつきあってる弘夢って最強なのかもしれない。

バレンタイン最後です。

次はホワイトデーはすっ飛ばして、春休みになるか、一気に進級するかのどちらかになると思います。


先週お休みをいただいたので、ストックしていたお話をアップしてます。

高槻と悠の馴れ初めの短編です。興味のある方は是非ご覧ください。

タイトルは『君の隣にあるしあわせ』(https://ncode.syosetu.com/n2966eq/)です。

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