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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 気持ちがソワソワして落ち着かない。

 俺が和己にチョコレートを渡して喜んでもらえるのかなとか、どうせあげるなら一番にあげたいとか、いろんな気持ちが混ざって、落ち着かない。

 普段より一本早い電車に乗って改札を出たところで和己を待つ。いつもは少しだけ和己が乗る電車が早く到着するから待ってもらっている。

「待たせるのが好きじゃないんだ」

 そんな言葉とともに、いつも少しだけ俺のことを待ってくれているから、今日はどうしても待っていたかった。

 改札口で視線があって、驚いたように和己が時計で時間を確認する。

「おはよう」

 声をかけるとふわりと笑ってくれる和己に思わず見惚れてしまった。

「おはよう。……ずいぶん待たせた?」

 待ってないと首を振る。

「今日は和己を待ちたかったんだ」

 朝、改札を出た時に、一番最初に和己の視界に入りたかった。

 並んで歩き出してからしばらくすると、少しだけ人の流れが緩やかになる。普段より少しだけゆっくりした歩調なのに、気づいているはずなのに何も聞いてこないのが和己らしい。

 周りに人が見当たらないのを確認して、和己の制服の袖をちょっとだけ引いて立ち止まる。

「恒?」

「これ、受け取ってくれる?」

 小さな紙袋を差し出すと、一瞬驚いたような表情をした和己が、受け取ってくれた。

「ありがとう」

 多分、どうして今なのかとか、いろんな疑問が頭の中にはあるのに、和己はそれを口にしない。

「……学校に着いてからだと、一番にあげられないかもしれないから」

 ちいさな声で言ったのに、ちゃんと和己には届いたみたいで、おおきなてのひらが俺の頭をくしゃりと撫でる。

「本音は恒からのだけでいいんだけど」

 そう言ってくれるのが嬉しい。

 たぶん、わざわざ準備してくれたことを無碍にできないから、受け取るし、お返しもするんだろうなって思う。俺もずっとそうだったから、気持ちはすごくわかるつもりだ。

「和己はたくさん貰うと思うけど、俺のは特別だと思ってくれたら嬉しいよ」

 並んで歩き出した時にそんな風に伝えると、耳元に和己の顔が寄せられる。

「そんなこと言われたら、このまま家に連れて帰りたくなるだろ」

 囁かれた言葉に顔が赤くなるのがわかる。

「バカ」

 顔をあまり見られたくなくてうつむくと、和己がくすりと笑う。

「……仕方ないから、週末まで我慢しますか」

 からかわれてるのもわかってるけど、ますます顔をあげられなくなった。

 そうだと突然和己が話題を変える。

「今日は予鈴が鳴るまでと、昼休みは生徒会室で待機した方がいい」

 なんでだ?

「恒が直接のチョコレート受け取りたいなら教室に行くといいよ」

 問い返す前に俺の表情読んで続ける和己に杞憂じゃないかと笑う。

「悠さんも言ってたけど、俺、和己みたいに格好良くないし、悠さんみたいに美人でもないから、貰わないと思うんだけどね」

「……じゃあ、避難する俺につきあって」

 微妙な表情をした和己が妥協したというように言うので、つきあうことにした。

いつも読んでいただきありがとうございます。

来週は私事のため、更新お休みさせていただきます。

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