表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢のかけら  作者: 高原 涼子
47/60

47

 つ……っかれた!

 女の子のパワーすごい。……むしろちょっと怖い。

 無事に和己に渡すチョコと、他のみんなに渡すものを購入して、時間よりちょっと早く待ち合わせ場所に戻ると、ぐったりした表情の俊が手を振っていた。

「あれ、悠さんは?」

「もう来ると思うよ」

 俺の後ろを指差しているので振り返ると、悠さんの姿が見える。

「……こうやって見てると、ほんとに美人だよなあ」

 思わず出た本音に俊が笑う。眼鏡の奥の瞳が本当に優しく和んで、付け加えてきた。

「黙ってたらって追加しといて」

 悠さんのこと、好きじゃなかったらただの悪口だよね。




 悠さんの家が年間で抑えているホテルの一室に案内してもらって、ルームサービスが届くと、ようやく一息ついた。

「昨年までは恒ちゃんはバレンタインどうだったの?」

 昨年ねぇ。

「まあそれなりに貰ってました」

 公立の中学だったけど、その日だけはなんとなく先生方も大目に見てくれていたから。

「二年の時までは個別に対応していたんだけど、三年の時に訪問者が増えて、キレたクラスの女子が取りまとめてくれて、クラスと名前をしっかりわかるようにしてもらったのは、お返しする時に楽だったな」

「それって、本命チョコってやつ?」

 俊の言葉には笑ってごまかしておく。だって答えるとせつない。

 女の子にかわいいと頭を撫でられて、癒しとか言われたことはあるけれど、俺が普通だからとっつきやすかったんだと思っている。

「お返しはどうしてたの?」

「クラスと名前のわかる子にはお返ししてました。でも金銭的なところもあるから、本当に親しくしていた子以外は、大袋に入った小包装の飴とかチョコとかクッキー買ってきて、100円ショップのラッピング用の小さな袋に詰め替えて配ってましたよ。毎年三月はお小遣い足りなくて増やしてもらってました」

 結構面倒だったけど、それなりに楽しかったんだよね。でも今年はそういうこともないから楽でいいなって話したら、なぜか気の毒そうな表情を浮かべる俊と悠さんがそっとため息をついた。

「なんでため息?」

 尋ねた俺に、本当に気づいてないのかよと呟いた俊が頭を抱える。

「悠ちゃんに任せる」

 なんか色々放棄したらしい俊は、おかわりの紅茶を淹れて、目の前のアフタヌーンティーのお菓子やらサンドイッチなんかに手を伸ばしはじめた。

「僕に任されてもねぇ」

 曖昧に笑う悠さんが俊のことをチラリと見て、やがてきれいな笑顔を俺に向けてくる。

「まあ、和己ちゃんが恒ちゃんの危機管理をしてないのが悪いよね」

 なんだかとっても不穏な言葉が出てきた。

「……さて。恒ちゃんは文化祭の時何した?」

「え……と、ミスコンに出た?」

 突然の問いかけに、答えが疑問形になる。

「そうだね。じゃあ、その結果は?」

「ぶっちぎりの優勝、かな」

 文化祭の後に、こっそり教えてもらった票数を思い出せば、あながち間違えた回答ではないと思う。

 そうだねと頷いた悠さんが紅茶を一口飲んで続けてくる。

「あれ、ある種の人気投票ってわかってる?」

 悠さんの言葉になんとなくひっかかりを覚えたけれど、あまりピンときてない俺に、まあいいやと悠さんも俊も笑う。

「次の質問に移ろうか。僕はバレンタインにチョコレートをもらえると思う?」

「それは、どの方面からでしょうか」

 多分、俺が考えているので間違い無いとは思うけれど。

「あぁ、ゴメンね。学校の生徒からだよ」

「もらえるような気がします」

 考えていたことに間違いはなかったから、思った通りに答える。

「そう?……じゃあ俊ちゃんは?」

「俊ももらえそうだなって思います」

 そうだねって頷いた悠さんが言葉を続けてきた。

「恒ちゃんはどう?」

 尋ねられて、しばらく考える。

「俺はないんじゃないかな」

 カシャンとテーブルの上で音がする。俊が手を滑らせて、フォークを取り落とした音だったらしい。

「……なにこの鈍感」

 ボソボソ呟いているけれど、よく聞き取れなかったから聞き返すと、なんでもないと返事をされて、またケーキが一つお皿の上に移動した。

「恒ちゃんにはないっていう根拠はあるの?」

 俊をチラリと見た悠さんが、少しだけ肩を震わせながら俺に聞いてくる。

「悠さんも俊も美人っていうか、キレイな人でしょ。言い方はおかしいかもしれないけど、悠さんはお人形みたいだし、俊はクールな感じ。……俺は、童顔だし、タレ目だし、見た目からあえていうなら犬だよなって思ってるから」

 紅茶のカップを持とうと手を伸ばした俊が一気に噎せる。

「だから、俺のこと好きになるとか、和己くらいだって思ってるので、ないなと」

「客観的に見て、確かに恒ちゃんはキレイとか美人って言われるタイプではないよね。……でも、恒ちゃんはかわいいって言われるタイプだよ」

 どの形容詞もあまり男が言われて嬉しいものではないけどねと、悠さんが笑う。視界の隅で俊が笑いすぎてお腹を抱えているのがすごく気になったけど、とりあえず後から問い詰めることにすることにした。

「結論から言うと、恒ちゃんはバレンタインの日に学校の生徒の皆さんからチョコレートをもらうことになるよ。……世の中、美人が好きな人もいれば、かわいい人が好きな人もいるよ。そして、格好いい人が好きな人も沢山いる」

 ここまで理解してくれた?と目線で問われて頷いた。

「近くの女子校の子からもらうこともあるしね。で、なにを言いたいかと思ってるだろうから、最後の話。……和己ちゃん、男女問わず人気あるよ」

「男女問わず?」

 おうむ返しすると、うんと頷かれる。

 女の子はわかってたつもりだったけど、男もって聞いて、本当に俺が和己と付き合ってるのなんて奇跡みたいだって思う。

「お返し大変そうだね」

 ピントのずれた返事をしてしまったから、さっきから笑いまくってた俊だけでなく、悠さんにまで笑われてしまった。

次はバレンタイン当日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ