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スマホが震えてメッセージの着信を告げる。
珍しい相手からのメッセージに驚いた俺は、慌ててスマホの操作をした。
『ひろにバレンタインのチョコを渡したいから、今度の土曜日に買いに行くの付き合ってくれないかな?』
バレンタインかぁ。
チョコレートかぁ。
この時期ってものすごい人混みで女の子ばかりのあの場所に行くのかな。
最近は逆チョコとか友チョコとか聞くし、俺たちが買いに行っても少しは違和感とかはないのかな、なんていろんなことが頭をよぎる。
不意にスマホが新しいメッセージの着信を告げてくる。俊からの続きかと思って画面を覗くと、悠さんからだった。
『週末にバレンタインのチョコレートを買いに行くよ』
……予定が決定してるし。
『俊にも誘われてるんですけど、どうしたらいいですか?』
『俊ちゃんも誘ったよ』
しばらくしたらそんな返信が届いて、俺の週末の予定が確定した。
「週末来る?」
学校から駅への帰り道、さらっと尋ねられる。そういえば和己にはまだ話してなかったし、このところお互いに模試とか用事があって和己と過ごす週末ってなかったななんて思いながら、
「ごめん。行きたいところだけど、昨日の夜、悠さんと俊と三人で出かける約束しちゃった」
出かける理由がバレンタインだし、そこは言わずに断った。
「珍しい組み合わせだな」
「まあ、そうかも」
和己がそう言うくらいには珍しいとは思う。
「じゃあ来週な」
そう言って一緒に過ごせないことを残念には思ってくれるけど、俺の負担にならないようにしてくれるのが和己のすごいところだなって思う。
他の誰よりも、一緒に過ごすと心が浮き立つのは、やっぱり和己だけだ。
◇◇◇
約束の当日はあっという間にやってきた。
いつも和己と待ち合わせる時とは違う、百貨店の多い街の駅に少し早めに到着した俺と俊は悠さんを待つ。
「……悠ちゃんが一緒になった時点でショッピングモールはないなと思ってたけど」
「それはまあ、俺も思った」
なんというか、ワンランク上の世界の人なんだよな。
「そもそも電車なんて乗ったことあるのかなって思ってるんだけど」
学校は車の送迎も禁止されていないから、悠さんは当たり前のように送迎されてる。帰りはみんなに付き合って駅まで歩いているけど、そこに迎えの車が待機してるし。
「乗り方くらい知ってるんじゃないのか?」
少しだけ不安そうな俊の返事に思わず無言になってしまった俺たちの目の前の改札から、ウワサの悠さんが手を振って現れた時、安心してため息をついたのは内緒だ。
「おまたせ。……二人してなんて顔してるの」
悠さんが怪訝な表情を浮かべているのに、なんでもないと返す。
ならいいやと笑顔を浮かべた悠さんにうながされて歩き出した。
まあ、そんな予感はしていたわけだけど。
百貨店の入り口を入ってすぐに偉い人が飛んできた。
「いらっしゃいませ、広瀬様」
まずは目立つ悠さんが矢面に立つ。その後に同行者を確認した上で、少しだけ組み合わせに驚いたような表情を浮かべたけれど、それはすぐに笑顔に変わる。
「東雲様、川崎様もご一緒ですね。……いらっしゃいませ」
もちろんこれは、俺たちにではなく、それぞれの家に向けられた丁寧さだ。
「こんにちは」
俺たちもそれぞれに頭を下げて挨拶をする。
「ご連絡いただきましたら、どなたかのご自宅へお伺いしましたのに」
なんて声をかけながら歩みを促される。これ、本格的に親の七光りで外商に案内されるやつだ……。
「今日は彼らと、バレンタインにかこつけて珍しいチョコレートを買いに来ました。できれば普通に売り場で買い物をしたいのですが、構いませんか?」
悠さんの言葉にお店の人がかしこまりましたと頭を下げる。
「では、何かございましたらお気軽にお声がけください」
「ありがとうございます」
悠さんの後ろで俺たちも会釈する。
十分に離れたところで三人揃ってため息をついた。
「まあ、予想はできていたわけだけど、仕方ないね」
ふわりと笑った悠さんにつられて俺たちも笑う。
「正直、あの女の子たちの中に突撃するより、親の七光り実感する方が怖いよ」
俊の言葉に同意する。
今回みたいに扱われることは、俺たちの後ろにある家に対するものなので、キチンとしなければって身の引き締まる思いもある。
「買い物終わったらお茶しようね」
悠さんの言葉をきっかけに、バレンタインの催事場に足を踏み入れた。
バレンタインどうしようか悩みましたがイベントごとはしてほしいなと思いました。
本当はもう少し続けて書こうと思ってたのですが、かなり長くなりそうなので一度ここで終わりです。
しばらくバレンタイン続きます。




