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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 当たり前のことだけど、気持ちを伝えあったからといって、すぐに何かが変わるというわけではない。いつも通りに部屋の片付けをして、もう一度戸締まりをする。

 少しだけいつもと違うのは、隣に立つ人を見ると、面映ゆい気持ちになることだけ。どうしたというように瞳が細められると、いつもの闊達さを潜めて優しくなる。それが俺にだけ向けられていると思うと、照れくさい。

「……旅行、許可貰えるといいな」

 こんな機会がなければ、学校行事は学年別だしと、さっき俺が考えていた事と同じことを先輩が呟く。

「今日の夜、話してきますね」

 きちんと夏休みのプランを考えて、勉強も疎かにしない事、連絡をする事を約束すれば、先方に迷惑をかけないようにと釘を刺されるだろうけど両親の許可はおりると思う。でもぬかよろこびはさせたくないから、今は言わないでおこう。

 そんな風に考えていると、頭に手を置かれて、髪をくしゃりとかきまぜるように撫でられた。触れていたのは束の間で、指先が離れる時に先輩を見上げると名残惜しそうな表情にも見える。手を降ろす時に、頰を伝うように触れられた。それだけなのに、多分今俺はまっかになってると思う。だって顔がものすごく熱い。好きって伝えた時から、先輩の存在がとても近い 。

 最寄駅の改札を通り抜けたらそれぞれの路線に別れる。いつもと同じ帰り道。

「夏休み、旅行は別として、二人でどこか遊びに行かないか?」

 歩きながら先輩が言う。

「行きたい!……行きたいです」

 つい素の自分がでて、慌てて言い直す。

「わざわざ言い直さなくていいのに」

 そう言ってくれるけれど、今日から恋人になったといっても、先輩なのには変わりないから、やっぱりきちんと接しなければいけないと思う。

 それを伝えると、先輩はちょっと困ったように笑って、じゃあ、と言葉をつなぐ。

「学校の中では俺も恒の事を後輩として、会長付として接するから、少しずつ俺に慣れて?」

 そんな風に言ってくれたら気持ちが楽になった。一気に環境が変わり過ぎて、戸惑う。

 そもそも誰かと付き合うとか考えたこともなかったから、どうしたらいいのかも、よくわからない。あれ、さつきの二人で遊びにって、もしかして、デートって事なんじゃあ……。そこまで考えたら、恥ずかしいような、甘ったるい気持ちになる。

「先輩とデートかぁ」

 きっとどこに行っても何をしても楽しいだろうなと気分が高揚する。

 心の中で思ってただけのつもりの言葉が、初めて見る先輩の耳まで赤くなった恥ずかしそうな表情のおかげで、実際に漏れていたのに気づいた。

 なんとなくお互いに無言になって歩いていたら、あっという間に駅の改札を通り抜けていた。

「明日の朝、ここで待ってる」

 別れる前に時間を決めた。

 今までしたことのない待ち合わせに、胸が高鳴る。なんだか、とても幸せな気分だ。

帰り道の一幕。

フワフワした気分であっという間。

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