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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 放課後の二年生の教室の中にため息が響く。

 ため息の主である和己へ声をかけようとした悠を首を振ることで止めたのは、弘夢の兄である弘幸ひろゆきだ。和己がどうしても聞いて欲しいのならため息をついている間に話しているということだと悠は理解する。

「……どうしたのくらい、聞いてくれよ」

「聞いてくださいって言うなら考える」

 弘幸の答えにがっくりと項垂れた和己が苦笑いする。

「みんなが俺に冷たい」

「こういう時に日頃の行いがよく分かるな」

 とどめとばかりにそれまで黙っていた高槻が言う。

 そのやりとりを見ていた悠が、ようやく助け舟を出した。

「それで、どうしたの?いつも鬱陶しいくらいに自己主張する和己ちゃんらしくもなく、ため息なんかついてるけど」

 後半は聞かなかったことにした和己が、もう一度ため息をついて

「最近、恒の様子がなんか変だなと思って。……もしかして俺が好きなのがバレて距離を置こうとしてるのかもしれないなと」

 その言葉を聞いた三人が、顔を見合わせ視線だけで誰が相手をするのかと押しつけあう。

「君の気のせいだよ」

 悠が柔らかい口調で諭すように告げる。他の二人は黙って様子を見ることにしたようだ。

「こんな言い方をするのもどうかとは思うけど。恒ちゃん、君の気持ちには、一ミリも気づいてないよ」

 一ミリもを強調する。

(だって、自分の気持ちにようやく気づいたくらいだから)

 続く言葉はあえて言わない。

「……じゃあ、挙動不審なのも気のせいか?」

「気のせいだろ。いつも通り、まじめにお前に振り回されて疲れてるんじゃないのか?」

 和己のことを意識しはじめた頃から、視線が合うと不自然に逸らしたり、ぼんやりしていることも増えているが、あえて気づいていないように装った高槻が答えると、悠と弘幸も頷いた。

「それに彼が、偏見を持つタイプではないって、和己も分かっているだろう?」

 高槻と悠のことや、自身の弟たちの気持ちについて指している弘幸の言葉にも頷くが、

「だからと言って、自分が関わるとどうなのかは、分からないじゃないか」

 ちいさな声で反論した。

「煮詰まってるね」

 悠が和己の頭をなでる。

「そんな和己ちゃんに、僕から助言です」

 にっこり笑顔の悠と、困ったように苦笑する高槻と弘幸を交互に見比べた和己は、続けられた悠の言葉に頭を悩ませることになる。

「明後日から夏休み。夏休みといえば、僕の家が持ってる別荘で過ごす恒例の旅行があります。そして今年からはそれに恒ちゃんを呼びます」

 ここまで理解した?と問われ、勢いに押されて頷く。

「……呼びますって、決定事項かよ」

 ぼやくような高槻のツッコミを無視した悠は

「旅行の後は10月の体育祭、11月の文化祭の準備があるから、ほぼ毎日学校です。あ、12月にはクリスマスもあるね。……あっという間に夏休みと二学期が終わって、三学期は卒業式の運営と、入学式の準備をしたら僕たちは修学旅行に行って、戻ってきたら三年生。その後三ヶ月したら引退です。一年ってすぐ終わっちゃうね」

 一気に話し、少しだけ沈黙した悠は、もう一度和己に笑いかけた。

「和己ちゃんはどうして公私混同してまで、恒ちゃんを会長付きにしたの?試験期間中に普段は絶対に開けない生徒会室の鍵を開けてみたり、僕たちとわざとタイミングをずらして帰ってみたり。いくらでもチャンスはあるのに、君らしくもなく行動もせずに嫌われたかもとか、何を面倒くさくウジウジ勝手に悩んでるの?」

 笑顔が怖い。果てしなく怖い。

 助けを求めて視線を彷徨わせる和己に、諦めろという表情が返される。

「……玉砕したら慰めてあげる」

 恒が自覚したのだからそんなことにはならないと分かっていて焚きつけているのだけれど、煮えきらない態度をとる和己に多少イライラしているための意趣返しくらい許されると、悠の笑顔が語っている。

「……というわけで、終業式の準備をさっさと終わらせて今日は早く帰ろうね」

「腹をくくらせていただきます」

 ただ悩むのが性に合わないのは自分自身でも分かっているのだ。




 願わくば、恒も同じ気持ちでいてくれますように。

悩むに悩めない和己さん。

次回、告白に向けて頑張ります。

でも視点はどっちになるか決めかねてます。

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