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アミスタード アスール  作者: おがわかなた
第6章 コンプレット
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ボーイペロアスール3

横森駅、そこは、決して大きくなく、こじんまりとしていた。


駅舎は関東の駅百選にも選ばれており、綺麗な駅であった。


雄哉は初めて降り立った駅なので、それなりに興味を持っていたが、

いまは、写真撮影をしたり記事の下書きをしたりする余裕はなかった。


「えっと、住所からすると、こっちの方向か」


先週末、宮田市の恩田の家が解約され、実家に戻っているということが分かり、

天田に恩田の実家の住所を教えてもらい、横森駅に来ていたのだ。


徒歩30分程度、普段、運動をしない雄哉にとっては少し長い距離だった。


とはいっても、タクシーを使うほどの距離でもない。


恩田は、実家に戻っていることは分かっていた。


話がまともにできない状況で、部屋に籠りきり、

食事すらとっていない状況だという。


何がそうさせてしまったのか、誰にも分からなかった。


父親ですら、手に負えないという。


「いったい、何があったのだろうか?」


歩きながら考える。


「俺と先輩は親友ですよ」


恩田に言われた言葉が脳裏をかすめる。


「何も相談せず、僕の前からいなくなるなんて」


雄哉は恩田に文句を言う。


「僕たちは、心通じ合う仲間じゃなかったのか?」


彼には、恩田のことしか頭になかった。


恩田に1週間程度会わないだけで、寂しい気持ちになっていた。


雄哉にとって恩田の存在が大きい存在になっていたことを感じるのであった。


「恩田と会いたい」


雄哉の思考は止まらない。


「恩田と話がしたい」


雄哉は期待に胸を少し弾ませる。


「きっと、ひとこと目は何をいってやろうか」


「君とまたくすぐりあおうよ」


雄哉は、恩田の実家に向かいながら、様々な思いをめぐらす。


そして、住所の場所に到着する。


広い庭に、大きく立派な家が聳え立つ。


「すごい、大きい家だなぁ」


玄関まで何分ともかからないが、門からは少し歩かなくてはいけなかった。


呼び鈴を押すと、一人の男性が出てきた。


「突然、申し訳ありません。

 健太郎君の友人の天貝と申します」


「お待ちしていました。

 私が健太郎の父親です

 どうぞ、お上がり下さい」


雄哉は、家に上がりこんだ。


奥に階段がある。


どうやら、その上が恩田の部屋らしい。


外からは感じなかったが、少し年季がたっており、時折、階段のきしむ音がする。


一段、また一段と階段を登っていく。


「ごめんね。

 うちの息子が迷惑をかけて。

 こんな子じゃないはずなんだけど」


「僕も、こんな子じゃないと分かっていますよ」


登った先に、恩田の部屋があった。


「この部屋です。

 部屋からも出てこない状況なんですよ。」


「健太郎、お友達だぞ」


部屋からの返事はなかった。


雄哉が声をかける。


「恩田、僕だ、雄哉だ」


中からの返答はない。


「皆、待っている。

 帰ろうよ」


それでも、返答はない。


やはり、精神的に参ってしまっているのは雄哉でも分かった。


「予想以上にまずい状況だな。

 この状況を僕は打破できるのだろうか?

 どうすればいいのだろうか?」


雄哉は、思考をめぐらした。


いま、自分ができる最善のことは何なのだろうか。


「最後に一声かけてみよう。

それで駄目なら、、、」


雄哉は意を決し、再度声をかけてみる。


「お前がいなくて寂しいぞ。

 僕たち、親友だろ。

 どうしてなんだよ。どうして開けてくれないんだ」


その時、部屋のドアが開いた。


「恩田?」


そこには、別人かのような恩田の姿があった。


目の輝きは失われ、頬はこけていた。


髪の毛は手入れされておらず、ボサボサになっていた。


人は少し見ない間にこんなにも変わってしまうのか、雄哉はそんな風に感じていた。


そして、何が彼をそうさせてしまったのか。


「なっ、な、、、で、、、きた、、、」


久しぶりに声をだした為なのか、全ての言葉を発音することが出来ない状態だった。


驚きは失望に変わったが、雄哉以外に恩田を助けることが出来る人はいないと決心をしたのだった。


「ゆう、や、、ぱいとはなしが、、たい、ついて、て」


まだ、声を出すのに、苦労をしているようだが、先ほどよりはすこし聞き取れる状態には戻っていた。


雄哉は気を引き締めた。


恩田を助けられるのは自分しかいない。


雄哉は、意を決し、恩田の後についていった。





到着したのは、近くの公園だった。


恩田はそこのベンチに腰をかける。


その面持ちに大きな変化はない。


あるとすれば、少し表情が明るくなったくらいである。


「ここ、思い出の公園なんです」


恩田が語り始めた。


「俺、ここで、あの人に出会ったんです」


「あの人?」


「俺、どうしたらいいか分からないんです」


「ちょっと、話が分からないぞ」


脈略のない言葉に、雄哉はとまどった。


まだ、状況が理解できるほどの情報がなかった。


何がキーワードなのか、何が必要なのか、雄哉は頭をめぐらせるが、

答えは見つからない。


恩田の様子に目を向けると、うつむいたままベンチに腰掛けている。


しかし、雄哉はその手に握られている物を見て凍りついた。


恩田は、ナイフを所持している。


「なっ、なんで、そんなものを持っているんだ?」


雄哉に理解はできなかった。


ひとつだけ分かっているのは、恩田の精神状態が悪く、襲われているという事実のみだ。


その攻撃は、久しぶりに動いた為、ふらつき、さらにぶれた攻撃であった。


雄哉は余裕で攻撃を避ける。


「恩田、待ってくれよ。僕が何かをして傷つけてしまったのか?

 教えてくれよ!」


迫り来る恩田に声をかけるが、恩田の耳には届いていないようだった。


攻撃がやってくる。


先ほどとは比にならな早さだ。


何もすることができずに、呆然とするだけであった。


「駄目だ、早すぎる」


雄哉は、その殺意と速さに成すすべがなかった。


「なぜなんだ、理由を教えてほしい」


心で叫ぶも、それが届くはずもない。


雄哉は、死を覚悟した。

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