レクエルドス
夏休みが終わってしまった。
また、毎日学校にくるリズムに合わせなくてはいけない。
暑さは残っている。
体がなかなか動かない。
気力も起きない。
夏休み明けなんてそんなものである。
夏休み明け初めての鉄道研究部の部室はその全てを具現化したような状態となっていた。
「暑いよ~」
雄哉は、うちわで扇ぎながらそう嘆く。
「雄哉、うちわ貸してよ」
机に体を預けた黒崎が、雄哉に手を伸ばしながらそう言った。
この高校には、全教室エアコンが設置されているのだが、部室棟に関しては、
業務用ではなく、普通の家庭用と同じエアコンが設置されている。
久しぶりに登校し、エアコンをつけたのだが、水漏れにより使用できない状態になっていた。
ネットで調べると、ドレインホースのごみ詰まりなどが考えられるらしいのだが、
生徒会と相談の上、業者に依頼することとなったのだ。
「ハックシュン!」
そして、その被害を受けたのは、あの男なのである。
「恩田君、大丈夫?」
「また、風邪ぶりかえしそうですよ」
部室に入り、涼しい風をあびようエアコンの下にいた恩田が、水を浴びてしまったのだ。
そして、体が濡らしたまま、
扇風機にあたっていたら今度は体が冷えすぎてしまったのである。
「恩田君、顔色悪くなってきたわよ。
今日、部活はいいから帰りなさい」
「いやです。今日は、雄哉先輩を眺める日なんですから」
「恩田、気持ち悪いこと言うなら帰れ」
「雄哉先輩のいじわる、帰りますよ。お疲れっす」
恩田はふてくされて帰っていった。
そして、しばらく恩田は風邪で休む事になったのは言うまでもない。
今日の雄哉の夕食は、カレーだった。
スパイスの香りが部屋を駆け巡る。
その匂いに対して、ウリエルが感想を述べた。
「カレー臭ひどいわね」
「まだ、僕はそんな年齢じゃないよ」
雄哉は、食卓にカレーを用意しながら、ウリエルの言葉に反応する。
カレーは4人分。
食卓は決して大きくはない。
1人暮らしだから当たり前である。
そこに、居候3人が加わったのだから、部屋も手狭になっているのだ。
「今日は、重要な話があるのよ」
「何かあったけ?」
「朝話したじゃない」
「あっ、今月の、、、」
「そうよ、旅行先!」
君ら、ラファエル探しはどうしたんだ。
そっちのけで、旅行とはいい度胸だ。
絶対に、旅行なんぞに行かせてやるものか!
「重要だよね。
夏休みの旅行も楽しかったし」
「みんなで旅行するっていいですぅ~」
「9月だから、栗がおいしい季節だよ。
小布施なんかいいんじゃない?」
「ちょっと遠いかな。
車で行くならいいんだけど。
電車だとちょっときついと思うよ」
「栗、おいしいだっちゃ」
「小布施に決定ね。雄哉、プランニングはよろしくね」
「うっ〜」
夏休みの余韻が残ったまま、日々はすぎていく。
雄哉は、この平穏さが永遠に続く、いや続いて欲しいと願うのだが、その期待は裏切られるのだった。




