第10話 迷宮攻略で地上に脱出なのか?
俺はオプションの木の棒を強く握りしめる。
腹が減ってきた。
当然、ルパルパのうんこなど食べたくない。
周囲を見渡したところ、地下の空洞の中で岩だらけだ。
悠久の時を経た朽ち果てた宇宙船には、化石化した巨大な木の根のようなものがびっしりと巻き付いている。
無茶なトランスフォーメーションと主砲発射により、崩壊が進んだようにも見えるし、天井をぶち抜いたせいで、崩落の瓦礫でほとんど埋まっているが、巨大な宇宙船だ、当面の生活拠点くらいにはなるだろう。
ひとまず、宇宙船に戻って今後を考えるか…。
『マスター、先ほどのトランスフォーメーションと主砲発射により
流体同位体燃料流出が加速し、強強度放射線放射、構造場勾配不確定連鎖変動が
生じています。安定するまでの間、しばらく宇宙船から離れていてください。』
「そうなのか…まあ仕方ないか…どの程度かかるんだ?」
『約10,000年程度と推測されます。』
ふざけんなあああ。
宇宙船にもう戻れないじゃねええか。
『安心してくださいマスター、冷凍冬眠装置は壊れてしまいましたが、
工業区画にある“炭素冷凍装置”で代用可能です。
カーボナイト化いたしますので1万年は余裕で持ちます。』
うるせええええ、有名な映画のエピソード5・6ネタじゃあねええか。
却下だ、却下、せっかく目覚めたのにオブジェにされてたまるか。
腹がいっぱいになったのか、ラムスが眠そうなにあくびをしているのが見える。
クソガキが…。
まてよ、あいつは、アルバ・ロンガの正当な王とか言ってたな?
つまり近くに、町なり、村なりあるんじゃないのか?
『その通りですマスター、レムス様の情報によると、ここは現住知的生命体からは、
“パラーティヌスの丘のルペルカル大迷宮”と呼ばれている場所の迷宮深層の様です。』
なんだ、なんだ、一気に異世界ファンタジーぽくなってきたな。
その厨二心をくすぐる名前すごくいいぞ。
冒険の匂いがする、ここが拠点に使えないならまずは町に行って情報収集も悪くないかもしれないな。
クソガキのラムスに詳細を聞くのはなんかむかつくな。
姉のレムスに聞く方が有用な事前情報を得られそうな気がする。
「レムス、お前たちは、アルバ・ロンガってとこから来たんだよな?」
『…。』
「聞いてんのか、レムス、そこは近いのか、どんなところなんだ?」
『…。』
なんだ、嫌な思い出でもあるのか?
確かに幼い双子がこんなところまで来てるんだ、何かあるのかもな…。
俺としたことが配慮がなかったな…かわいそうなこと聞いてしまったのか?
『マスター、レムス様はサクラ大戦の攻略で手が離せないそうです。』
ふざけんなばかやろおおお。
どうせ行動回数内でヒロインたちに遭遇できなくてやり直してるだけだろうが。
まあいい、迷宮の深層に居るんだったな。
だったら、迷宮を逆攻略して地上に出るだけのこと。
途中でなんか食べられるものもあるだろうしな。
完璧な作戦だ。
宇宙船からの放射線がどうとか言ってたのもきになる。
さっさと、安全な場所に移動開始だな。
「起きろラムス、寝るんじゃない、出発するぞ。」
「我は、眠い、よって歩きたくない、ロムよ、貴様におんぶさせてやる。」
クソガキが…。
お腹いっぱいになって、眠くなって、歩きたくないからおんぶしろってか?
お前のその服、空飛べるような機能あったんじゃねえええのか。
姉は、ゲームに夢中で引きこもり…弟は、お眠ときたもんだ。
この双子はどこまでも俺のスローライフを邪魔しやがって…。
このままでは埒が明かない。
ルパルパ、このクソガキをおんぶできるか、マスター命令だ。
『拒否します。ラムス様は宇宙船の乗員として登録されていますが、
ルパルパはマスター専用の宇宙船外部ユニットであり、
マスター以外の搭乗は認められていません。
私の身体を自由にしていいのはマスターだけです。』
ふざけんああああ。
それっぽい屁理屈こねてんじゃねーよ。
しかも、何で顔を赤らめてんだよ、誤解されるような言い方するんじゃねえええ。
「…ルパルパ、なんかお前、絶対服従とか言いながら、毎回断ってないか?。」
『見解の相違です。』
くそが…。
まあ、クソガキ一人おんぶするなんて大したことではない。
さっさとこの場から移動して、俺のご飯を調達しなくては。
まあ、これからの迷宮での冒険を考えると、ちょっとわくわくするな。
迷宮を踏破して、経験値を稼ぎ、アイテムをゲットして装備を強化、地上に出るころには、レベルカンストの無双状態ってやつだな。
俺は、相棒である木の棒に視線を移す。
安心しな相棒、伝説の剣を見つけたとしても、俺はお前を選ぶぜ。
いや、お前こそが世界を救う伝説の剣になってしまうのかもな。
俺にはそんな未来が見える。
世界を救うか‥‥悪くない。
ふふふ、俺にとってはスローライフ前のちょっとしたイベントってやつだな。
「いくぞ、ルパルパ。」
俺は、お昼寝中のラムスをおんぶして迷宮攻略を開始しようとした。
次の瞬間、ピクス型ドローンの二本の鳥の足のようなマニピュレーターが俺の頭を乱暴に鷲掴みにし、勢いよく上昇を開始した。
みるみるうちに俺の身体は宙高く舞い上がっていく。
「なんだ、なんだこれは。」
ラムスをおんぶしていることもあり、首に全体重がかかって、もげそうになる。
急に何すんだ、首が取れる、やめろおおお。
『マスター、天井の穴から地上へ移動します、この方法が合理的です。』
ルパルパもピクス型ドローンに両肩と腰部分を把持されて俺の隣を上昇しているのが見える、かなり快適そうだ。
俺とルパルパの待遇の差はなんだ、何で俺だけ頭を鷲づかみなんだよ。
『ラムス様をおんぶされているので、適切なハードポイントがそこしか残っておりませんでした、
マスターの頸椎強度であれば問題ありません。』
ふざけんなあああ。
強度が十分でも痛みが半端ねえんだよ。
あと、俺の迷宮攻略のワクワクをかえせええええ。
せっかくのダンジョンイベントがこれで終わりかよ。
あ…。
俺の相棒であった、木の棒が吸い込まれるように迷宮の底に落ちて行った。
『今のマスターの装備では無理です。安全を優先させていただきます。』
あいぼおおおおお。
後の世に双子を助けた狼の住まう場所と語り継がれる洞窟からの旅立ちだった。
“神が遣わした雌狼と啄木鳥は放浪の双子に乳と実を与え育てた”
創世神話第2節
お読みいただき、ありがとうございます。
本作はゆるいノリで建国系スローライフ異世界魔法ファンタジーとして展開していく予定です。
面白いと感じて頂けましたら【評価★★★★★】【ブクマ】【感想】を頂けると嬉しいです。
あと、同じ世界線(12000年後)の別シリーズもございます。
そちらは極寒シリアス系なので、興味があったら覗いてみてください。
【深緋瞳の魔王孵化器】
迷宮の底で僕は宇宙を語るエルフと赤い瞳の少女に拾われた・観測外異世界物語




