52話王からの勲章。成り上がり大規模銭湯
舞う花吹雪。湧き上がる歓声。
そんな中でキラキラと輝く勲章が私の胸に飾られた。
「この世界を救い、平和をもたらしてくれた人物として讃える。ナツ、ありがとう。君は英雄だ」
「い、いえ……成り行きといいますか……まさか私がこんなことになるとは……」
そう、国民の歓声を受けながら讃えられることになろうとは――
壁に突き刺さったネオを回収し、救出のために待っていたソラや天空の剣パーティ達と合流。
そこから事の経緯が漏れ、王から勲章をいただく事態へと発展した。
「ありがとうございます女神様!」
「こちらを向いたわ!ご利益があるわね!」
結果、私は世界を救った女神へと成り果てたのだった。
◇◇◇
堅苦しいパレードが終わり、私はヨロヨロと不戦湯に戻る。魔王城に拉致されて二週間と少しだったがやけに懐かしい。
「ナツ!無事に帰ってきたと思ったらなんか銭湯もナツも凄いことになっててびっくりしたッス!!」
「あ、あぁうん、私が一番びっくりしてるよ……あれ?リンファは……」
いつもなら出迎えてくれるはずのリンファ。
助けに来てくれてありがとうとか言いたかったのに……ん?銭湯の中が騒がしいな
トンテンカンカンッ
激しい工事の音は銭湯の修復作業かと思われたがなんだか様子が違う。
なんか……大規模なことになってる?!
上と左右に伸びる骨組み。明らかに大増築の気配が伺える。
「リンファー?」
「なんじゃナツか。やっと帰ってきよった」
リンファは天井の骨組みに跨っていた。
「なんじゃじゃないよ。私銭湯の増築なんて頼んだっけ?」
「惚けるな。ここまで有名になったんじゃ。今までの銭湯で足りるわけないじゃろう。それに、温泉の種類も軒並み増えたんじゃろう?」
「う、うん。確かに凄い種類増えちゃった……」
「デザインはわらわの方で決めてやる。好きに改築してもええじゃろ?」
そう言うリンファの目はワクワクしている。職人魂をくすぐったらしい。
「うんまぁ……リンファに任せとけば間違いないしね」
「ふん。ならナツはその辺に座ってまっておれ。手伝いの大工も王様が派遣してくれたからな。明日には出来上がるじゃろう」
「仕事がお早い」
「ナツ様」
「キラ。怪我はもういいの?」
「はい。大したことは無かったので。しかし今回も、主人に護られてしまった。俺は護衛失格です。どうぞ、なんなりと処罰を」
「ええぇ?!し、しないよ処罰とか!寧ろ助けに来てくれて心強かったし、こちらこそいつもありがとうなんだから!」
「キラは真面目だねぇ。ナツちゃんがチートすぎて護衛必要ないならサボっちゃえばいいのに〜」
畳の上で横になっているのはソラ。
「貴様はサボり過ぎじゃ」
「あはは……これからお客さんも増えるならそれだけトラブルも増えるだろうし、キラ、ソラ。これからも頼りにしてる」
「有り難きお言葉。精進します」
「任せといてよ〜コーヒー牛乳は途絶えさせないからさ〜」
「あはは……」
何はともあれ、一件落着。そういえばユラちゃんの占いで、荒野で私が泣いてる〜ってやつ。あの予言は外れたってことかな?そうだと嬉しいんだけど
◇◇◇
「おぉ、これはまた凄い立派な」
銭湯改築終了。温泉の数は男女それぞれ20超え。サウナに岩盤浴、食事処までついた立派な銭湯が完成した。
初めはのんびり、小規模経営の予定だったんだけどなぁ……
リニューアルしてからすぐ銭湯は大盛況。冒険者、魔獣、神獣、王様、魔族でごった返す温泉は壮観だ。
「って!なんでネオがここに?!」
「ネオ様。呼び捨て厳禁っぽぃ!」
取り巻きのニーシャとアイハまで。まさかまた銭湯を破壊しに来たのでは……?
「温泉に入りに来たんだよ。君の言うお駄賃とやらも持ってきたしね」
「いやそこじゃなくてですね……王様に突き出したはずでは……」
「あぁ。僕は人間と和平協定を結んだ。人間に手を出せば、女神ナツが始末しに行くって脅されてね」
「勝手に私の名前使われてるし?!」
「実際びっくりだよ〜まさか僕をビンタ一発で倒してしまう人間が存在するなんてね。あ、女神か。生まれて初めての感覚だったなぁ〜シビれたよ」
「そ、その節はどうも……」
「んでここに何しに来たんだよ?暴れたらナツさんが往復ビンタするぜ」
「ラーちゃん何言っちゃってんの?!」
「往復ビンタか、それも悪くない」
「おぃ!」
「なんて冗談だよ。温泉に入りたいんだ。君の泉に浸かると、心も体も癒されるからね」
微笑むネオ。ニーシャもアイハも頷く。
温泉は……悪をも絆す、か
「お客さんなら歓迎!不戦湯のルールは三つ!守らなかったら往復ビンタだからね!」
私の温泉が異世界の平和を築く鍵になったのなら、女神様も悪くないかもしれない。
◇◇◇
「ふぅー終わった〜!今日も凄いお客さんだったね」
「そうだな。剣も振れねぇヘッポコ冒険者からよくここまで成り上がったよなぁ」
「確かに……女神って祀られるのはまだ慣れないけど、争いが無くなるのはいいことだしやっぱ温泉って最高だね!」
「おうよ!ってことで今日も一風呂浴びるか?」
「いいね!労働の汗を流そ!」
立ち上がった瞬間だった。目の前が真っ暗になる。黒い目隠しを当てられたらしい。
「わっ?!」
「ほら、暴れるな暴れるな」
「その声……リンファ?」
「い〜所に連れてってやる。着いてこい」
リンファの企むような声。一抹の不安はありつつもリンファに手を引かれるまま私は"い〜所"とやらに連れていかれた。




