50話魔王城にてクーデター!
リンファとキラ。頼もしい二人が助けに来てくれたのだ。
「ナツ様。怪我は無いですか?」
「うんっ!なんか温泉が目当てだったみたいで、この通りVIP待遇だよ〜」
「それじゃお次は脱出といきたい所じゃが、逃げたところですぐ見つかってしまうからのぅ」
「うん……おまけに逃げたらわかる粉?みたいなの振りかけられちゃった……」
「く……クク、ならば内部から仕掛けるしか無いのぅ」
リンファは怪しく口角を上げる。
「わっるい顔するなぁ……内部からって、どうするの?」
「なに、魔王とはいえ力で統べる暴君じゃ。クーデーターを起こすんじゃよ。内部崩落させてやるわ」
「く、クーデター」
◇◇◇
「他の魔族にも泉に入って欲しい?なんでまた?」
魔王ネオは湯船に浸かり優雅にお酒を煽っている。私はその傍らに立たされていた。しかし、言いなりになるばかりではない。楽しい楽しい、クーデターの下準備だ。
「せっかく魔王城に来たし、皆のこと癒せたらな〜って。ほら、私のやることって朝晩の温泉入れるだけ。それじゃ暇だな〜って」
「泉に入れれば、それだけ魔族を強化してしまうことになるよね。それって君にメリット無くない?もしかして何かたくらんでる?」
「いやいやそんな企むだなんて……私、実は人間の方が嫌いなんです。私のスキル目当てで王様に扱き使われたりダンジョンに送り込まれたり、それなのにお給金は金貨数枚。それに比べて魔王城では広い部屋に美味しいご飯!命の危険もない!お金とか権威とか、そんなものより、純粋な強さがものを言う魔王の国の方が、私は気に入りました!」
「へぇ。いい事言うじゃん。そうだよねぇ。人間の国って凄く窮屈でつまらないよねぇ。揶揄って遊ぶくらいしか楽しいことないし。うん、いいよ雑魚兵に泉を振舞っても。最近弱すぎるのも気になってたし、強くなれば暇つぶしに殴れるかもしれないしね」
「意外と物理攻撃……ありがとうございます!つきましては……その、いくつかご要望が……」
と、言うわけで、魔王ネオに浴槽と簡易的な銭湯を建ててもらった。魔王城の真隣だ。
噂を聞きつけ、角の生えた赤目の魔族達があっという間に押し寄せるようになった。
計画通り!温泉のせいで危険になり、温泉のお陰で救われる!切っても切り離せないなぁこのスキル。
◇◇◇
魔王ネオに反逆心を抱くものは意外と沢山いた。
「ネオ様が強すぎるから皆手ェ出さねぇだけだよ。じゃなきゃあんなガキに農作物納品とかやんねぇっての」
「不自由は無いですよ。でも、気に入りませんね。そもそも魔族ってのは国を持ちません。人間みたいに群れる習性はないのでね」
「この国というか、城の魔族は全員ネオ様に殴られてここに連れてこられたのよ。アタシは気ままに魔獣を狩ってテキトーに生きていきたいだけなのにさ〜」
リアルな魔族の声はこんな感じ。
リンファの言ってた通りだ……統率性がない
『じゃがそこに、ネオをぶっ飛ばすという共通の目的を与えたらどうじゃ?おやおやぁ?魔族500人VSネオと女3人の楽勝クーデターが完成じゃなぁ』
悪どい顔をしながらリンファがたてた計画の全貌である。
そんな上手く行くかなと思ってたけど、案外内部は脆いんだなぁ魔族の国……500人しか居ないのは、群れないからネオが無理やり連れてきただけなんだ……
魔王城にて二週間。仮設銭湯にて下準備が整った。
「決行は夜明けと共に、じゃな。ナツを助けると共に魔王の国をぶち壊す。クーデターじゃからわらわ達人間は関係ない。よって、ラザ国と魔族が戦争になる事態も避けられる。完璧じゃなぁ」
「あはは……そんな上手くいくかなぁ?」
「上手くいかなくとも混乱に乗じて逃げられます。森のすぐ側でソラや天空の剣パーティ達が控えいる。そこまではナツ様。俺が守ります」
「頼もし。よし、じゃあ起こそう、クーデター!」
「あぁ。ニヤついた魔王ネオの顔面がどんな風に歪むのか楽しみじゃのう!」
夜明けと共に集まった400名の魔族達。残りは非戦闘員だ。
「皆!行くよ!」
火、風、水、あらゆる魔法を纏った魔族達が魔王城へと押し入った。
温泉が不戦湯と人間の存亡をかけたクーデターを引き起こしたのだった。




