38話ダンジョンボス。絶体絶命
ダンジョン。それは異世界の殆どの死因を占める危険な場所。同時に冒険者達の夢と希望が溢れる場所でもある。
「宝箱だ――!」
私、ナツはドラゴンだらけのトラップ部屋を切り抜け路肩にて宝箱を発見していた。
「ゲームでよく見るヤツ!結構大きいし宝石の装飾とかついてるし、もしかしてめちゃくちゃレアなのでは?!」
ダンジョン拾得物は王様に提出がルールだから中身は貰えないだろうが開けるくらいは許されるだろう。そう思って伸ばした手を――
ガッ
キラに掴まれてしまった。
「ナツ様。この宝箱はブービートラップです。開くと毒素が広がるので部隊の半分が壊滅するかと……」
「ヒッ?!」
手を引っこめる。
「今回は諦めようぜナツ〜」
「うぅ。ダンジョン意地悪」
「まぁまぁ、この先のボス倒したら多分大きめの宝箱貰えるからさぁ」
「ほんと?!よーし!じゃあラーちゃんとの酸性泉スプラッシュで援護しないとね!」
「あぁナツ、それなんだけどよ。次では温存した方がいいかもしれねぇ」
「どうして?」
「お前さっきのドラゴン相手に打ちまくっただろ?そんで、また夜温泉も出さなきゃならねぇ。完全にMP不足だぜ」
「あ、そっか……せっかく役に立てると思ったのになぁ」
「さっきのナツちゃん凄かったもんね!バババッて敵溶かしてさ〜」
「へへ〜ん。温泉は万能ナリ」
暫くダンジョンを進むと黒く禍々しい扉が現れた。ザ、ボス部屋である。
「……思ったんだけどさ、私力使えないならここで待ってた方がいいんじゃ……」
「否。それはできませぬ。ボス部屋は中に入った者をクリア者と見なすからな。女神様もお気をつけください。我々とて全力で戦いますが勝てるかどうかは五分です」
ドラゴが緊張した面持ちで剣を抜く。他冒険者達も集中力を高めたり、仲間同士手を取りあって祈ったり。
なんか、ヤバそうで緊張してきた……うぅ、リンファの軽快な笑顔が恋しい……
「このボスが最後、若しくは一歩手前と見受ける。皆、助け合え!もし命の危機を感じたら気絶する前にテレポートを使うんだ。躊躇うんじゃないぞ!」
気合いの入った返事の後、巨大な扉が開き私達はボスの間へと足を踏み入れた。
ダンジョンボス
クリスタルフォックス
白と透明な巨大九尾の身体は美しさと恐ろしさを兼ね備えていた。攻撃は主にしっぽ。冒険者達が足を踏み入れた瞬間からバトルは始まっている。
九本のしっぽの先からドリルの如く回転するクリスタルが発射。地面が抉れる。気づいた時には、私の体はソラに抱えられ身軽にも飛び上がっていた。
「わぁああっ!」
「うひゃー、凄い広範囲の技……こりゃあ苦労しそうだなぁ」
ソラに小脇に抱えられたまま着地。すぐさま次の攻撃をかわす。
ヒュッ
天井から降り注ぐクリスタルの氷柱。四方八方、逃げ場などない。
「よいしょっ」
ソラは私を抱えたまま氷柱を剣で破壊。私は目の前に飛び散るクリスタルの破片を見つめることしかできない。
「やー、参ったねこれ。勝てないんじゃない?」
「ソラ!無駄口を叩かずナツ様をお守りしろ!お前の方が身軽だから頼んだんだぞっ!」
「そんなこと言って……キラこそ防御に徹した方がいいんじゃないの?コイツやばいよ!」
尻尾からの広範囲攻撃+上からの氷柱攻撃!しかもこの巨大狐、かなり素早い!
「ぐわっ」
呻き声の方を見遣れば、既に何人かの冒険者が倒れ込んでいる。他の冒険者達も交わすので手一杯なようで、この人数でありながら誰も本体に近づけない。
これ結構ヤバいんじゃ……!
「シャルナ?!シャルナは?!」
ソラに高速で運ばれながら非戦闘員のシャルナを探す。
「居た!」
シャルナは九尾が出したクリスタルの背後に身を潜め間一髪やり過ごししていたみたいだが、それも長くは続かない。
再度、クリスタルがドリルのように発射され、シャルナが隠れていたクリスタルは破壊されてしまった。シャルナが尻もちを着く。眼前に迫るは、複数のクリスタルの破片。
「シャルナ!!」
「っナツちゃんじっとして!」
「でもシャルナが!」
「分かってる!けどっ、クソ狐めっ!」
ソラは攻撃を躱すので手一杯。
九尾の一撃がシャルナの体を撃ち、転がった所へもう一撃。
ダメだ。避けられない。
「シャルナ――!」
バキンッ
間一髪。シャルナへの一撃を弾いたのはキラの剣。シャルナを庇うように立ち、力いっぱい剣を振るう。ホッとしたのも束の間。
「ダメだキラ!逃げろ!」
ソラの悲痛な叫び声。同時に九尾のクリスタルがキラの剣を打ち砕いた。散る刃の欠片。驚愕に歪む橙の瞳。キラの全身へ重たいクリスタルが襲いかかった。
膝から崩れ落ちるキラ。ヒュッと心臓が冷たく傷んだ。
「キラ――!」




