36話不戦湯ダンジョン出張!
なんだかんだありまして、女神としてダンジョン討伐部隊に歓迎されたので、じゃんじゃん温泉を入れてこうと思う。
不戦湯から浴槽を運んできたのと、リンファが急ぎで作ってくれた追加の浴槽をセーフティエリアに広げていく。
そして片っ端から――
「硫黄温泉!炭酸水素塩泉!炭酸水素塩泉!炭酸水素塩泉!酸性……は、やめといたほうがいっか」
いまだ酸性泉は湯船に溜めた事がないが、攻撃に使った際は岩が溶けてしまうのだ。浸かった冒険者が爛れたらそれこそ大騒ぎである。
現実世界の酸性泉は怖いものじゃ無いんだけどなぁ……皮膚への刺激は強いけど、殺菌作用はあるし……
「ん?!」
「どうしたナツ?魔力切れか?」
「ら、ラーちゃん見て、知らない間に浴槽が増えてるんだけど……」
アイテムボックス内にある「アヤキの浴槽」は身に覚えが無い。出してみれば、肌色に近い木造りの正方形の浴槽だ。
「お、ほんとだなぁ。リンファの仕業じゃねぇか?ほら、なんかメモついてる」
「どれどれ?……お主は鈍いから――」
『気づかせてやらんでもない。わらわに感謝するんじゃぞ。みたらし団子三つじゃ!』
「って……意味わかんないんだけど」
「ナツお前……新しい温泉増えてんじゃねぇの?最近ステータスみてねぇだろ?あんだけの人数と魔獣いれてるわけだし」
「う……頭の中でレベルアップレベルアップうるさいから聞き流す技を身につけちゃって、無きにしも非ず……」
「なんだそりゃ?とりあえずステータス見てみろよ」
ステータスオープン。
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拠点:ラザ国
所持金:銀貨4 金貨1652
クリハラ ナツ(転生者)
Lv43
HP 2100
MP 1700
スキル
【温泉】Lv 10
炭酸水素塩泉
硫黄温泉
酸性泉
草津の湯
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「げ、レベル43。前見た時より二倍になってんじゃねぇか。こんだけ温泉入れてもクラクラしねぇわけだよ。なぁナツ?……ナツ?」
「く、草津の湯だぁああ!!!」
私の大興奮した声にラーウェルがひっくり返った。
「なんだよナツ……うるせぇな」
「だってラーちゃん草津の湯だよ?!日本三大泉の一つ。有数の酸性温泉!効能も多岐にわたり神経痛や冷え性を始めとし、病気にまで」
「あーわからんわからん。早口の温泉オタク喋りやめろ。とにかくすげー温泉なんだな?」
「凄いなんてもんじゃ」
「いーから温泉入れろ!浸かったらわかるだろ!」
「もちろん!てかリンファはなんで温泉増えたことと浴槽の種類知ってんだろ」
「そんなもん、お前が寝てる間に盗み見たんだろ」
「リンファのエッチ……帰ったら物申さないと。人のプライバシーを……よし、草津の湯!」
無色透明なお湯が滑らかな木目を描く浴槽に注がれていく。木の香りと混ざり合い周囲に広がる温泉の香り。草津の湯常連だった私にとっては懐かしさすら感じる。
「すげー綺麗な温泉だな」
「うん、不純物が極限まで減らされている。一体何処から汲み上げた温泉なんだろう……」
「いや、お前の手から生まれた温泉だからな」
草津の湯が溜まったので次は【温泉鑑定】である。
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【草津の湯Lv 5】
浸かった者のスキル値を2倍にする
(効果時間:15時間)
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「おぉっすっげー強いじゃんこれ!やっなナツ!」
「流石日本三大泉!早速入っちゃうぞ〜!」
「ばっ、待て!ここで脱ぐな!」
「あ、そっか。リンファが作ってくれた竹垣で、各温泉を区切って……」
「ナツちゃんって温泉が絡むと馬鹿だよねぇ。そこが可愛いけどさ。はい、それ貸して〜」
干し肉を噛み噛みしながら現れたソラが竹垣を並べてくれる。キラも、冒険者達も女神の泉を求めせっせとお手伝いだ。
「……聞いた?可愛いだって」
「馬鹿とも言ってたけどな」
◇◇◇
「ええと、炭酸水素塩泉は、レベルアップと疲労回復。硫黄温泉は傷や病の回復。草津の湯はスキル二倍。一定時間浸かることで効果を得られますが、二つ浸かった場合効果は半分半分です。もし、二つの温泉効果が欲しければタイマーで時間を測りながら浸かり分けてくださいを大体10分位で効果あります。温泉三つの効果は得られないみたいです……と、説明これくらい?」
「いいんじゃね?」
「じゃあ皆さん……不戦湯、ダンジョン出張バージョンへおいでませ!」
ワッと湯船に飛び込む冒険者たち。私もシャルナと共に簡易的に分けた女湯へ。
シャルナはまだ慣れないのか肌着のまま私の後ろにへばりついている。可愛いところもあるものだ。
早速草津の湯に足先を付けゆっくり体を沈める。熱めの湯。それでいて体を包み込む優しい湯触り。鼻腔をくすぐるヒノキと湯の混ざった香り。
「あ〜……これこれ。やっぱ私、温泉が大好きだなぁ」
冒険者達の笑いと癒しの声が溢れる。
この先のダンジョン最奥で、脅威に見舞われる事など誰も知る由は無い――




