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キラルは子供を『ダメ』という言葉で叱るのも否定するのも縛り付けるのも嫌っていた。
たいていの場合何故ダメなのか、何がダメなのかをきちんと説明せずに終わらせてしまうからだ。
『パパに叱られるからダメよ』なんてのは最たるもので、パパ一人を悪者にして肝心の何がダメなのかを教えない。
子供の理解力によっては叱られた事しか覚えていられない。そして叱られないようにすれば良いのかって事になってしまうので、キラルはシャルには絶対に頭ごなしの『ダメ』は使わないように心がけていた。
だからチョビを『ダメ』という理由で縛り付ける者をキラルは何が何でも分からせてやると思っていた。
シャルとチョビが契約により魂と魂が繋がり、もうダメという理由だけでは引き離せはしないのだと。
しかしそう意気込んでいたにも関わらず、何ともあっさり問題は解決してしまう。
考えてみたらチョビを庇護するのは人間ではないのでそもそもキラルとは言葉が通じない。キラルでは分からせるのも理解させるのも無理だったのだ。
「自分達で解決してごらん」
肝心の所をうっかりしていた恥ずかしさもあって説得はシャルとチョビに任せる事にした。
勿論何があってもシャルの味方であるし、擁護するつもりで睨みは利かせるけどとポーズは作っている。
「うん、自分達の事だからね僕頑張るよ。チョビも僕とずっと一緒が良いだろう」
「クゥ~」
そしてシャルとチョビもちょっと気合いを入れた時にそれは姿を現した。チョビを保護しているというこの森の主だ。
この森で長く生きているだけあって確かに貫禄はあるが体型に若さがなく明らかに老齢だと分かる。
森の主とチョビとシャルが何を話したのか全部を理解はできなかったが、案外あっさり話が終わりチョビを快く送り出してくれる事になったようだ。
ただ見守っていただけのキラルは自分の出番のなさに少々落ち込んだが、それでも心から安心し喜んでいるシャルの様子を見ているだけで幸せな気分になれた。
「チョビは何を食べるのかな。これからはチョビのご飯も用意しなくちゃね」
家に帰りながらキラルが尋ねる。
「この前黄金ドロップをあげたら喜んでたよ。でもそうだよね。普段は何を食べてるんだ?」
「クックー」
「そっか、肉食なのか」
「クルック-」
「森ではキノコや木の実も食べてたの? それって何でも食べるって事じゃん」
「クゥー」
どうやら聖獣の子供は何でも食べると言っているらしいが、やはり人間とは違うだろうから何でもとはいかないのだろうとキラルは考えていた。
家族が一人増えるというのは多分大変な事も増えるだろう。しかしそれでもきっと嬉しい事や楽しい事の方が断然多いのだろうとキラルはシャル同様に既にワクワクしていた。
短めですみません。
ムカデに噛まれた二の腕が力こぶのように腫れ上がり、痛いし痒いし何気に体調も悪くて考えが纏まらないというか上手く書けません。
ムカデに噛まれるのはこれで人生四度目。何で私ばかりって感じです。