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ラモンはルシアに証拠を見せる。

 机の上の書簡何枚かを手にして、外に出る。ハシゴを登る足がひどく遅く思えた。


 イルゼが本当に麻薬を密売していたことに対して、衝撃はあまりなかった。

 思えば、ラモンはそこまで信用していなかったのかもしれない。イルゼのことも——ルシアのことも。


 ただ、イルゼの娘を心配していた。

 この家にある一番最後の写真は、十年前の成人式の写真。この撮影後に行方不明になったと夫人は言っていた。

 この十年で、彼女はイルゼを許せているだろうか。


 ルシアに証拠を渡すため居間に向かっていると、途中のキッチンで彼女の姿を見つけた。


 後ろ姿に呼びかける。「ルシア。」

 彼女の肩がびくりと跳ねて、恐る恐る振り返った。


「うわ、どうしたのラモン……びっくりした。」


 声の主がラモンであることに気付いて安堵の息を吐く。


「証拠、見つけた。」


「え、嘘、どれ。」


 持っていた食器を置いて一目散にこっちへ寄ってくる。握られた書簡を目に入れると、断りもせず、ラモンの手から引き抜いた。

 まごつく手で中身を確認する。


「多分、知り合いにあの医者を斡旋してる内容だと思う。俺もさっき見た。」


 ラモンが言い終わらぬうちに、ルシアが肩を振るわせ始める。便箋に隠れて、その表情は見えない。


 最初は泣いているのだと思った。よかった、彼女にも裏切られた事の傷心があったのだと、不謹慎にもほっとした。


 けれど、違った。


 握られていた便箋が彼女の震えに合わせてひらりと手からすり抜けて、表情が露わになる。


 ルシアは笑っていた。


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