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ラモンは本棚を調べる。

 だいぶよく見えるようになった視界にはまず机が飛び込んできた。壁に寄せられたそれの上には予想通りの書簡と、錆びついて年季の入ったランタン、ペンとインクもあるから、ここで文を書いていたのだろう。

 反対の壁の方を向くと、本棚のようなものが見えた。いくつかの冊子が整頓されて入れられている。

 ラモンは中身を確認しようと、足元を気にしながらそれに近づく。


 暗い部屋の棚の中はさらに暗く、目を凝らさないと本の背表紙も読めなかった。見るとどうやら領地の財産関係の書類を纏めたものが多かった。

 この場所は領主も使うのだろうか、ならば領主も共犯?そう思って、けれど同時に思い出す——イルゼの夫は、領主はもういないはずだ。

 この家には跡継ぎもいない。だからといって、この辺りが国に返上されているという話は聞いたことがなかった。女性であるイルゼが領主の座を継ぐというのも考えにくい。


 いや、違う。

 ラモンは自分達がここに来た理由を思い出す。


 ルシアはこれから領地の経営をしに行くのだ、女性でありながら。ハリボテの領主の裏で、それをする。


 貴族の間ですら都市伝説のように語られる制度が何故あるのかと疑問に思っていた。けれど、この制度はきっとラモンが思っているよりも普及している。

 その人が継いだ方が圧倒的に物事が円滑に進むのに、立場が理由でそれができない時に使われるのだ。


 喉が引き攣り、息が漏れる。

 そんなことをしていたら、娘との関係もうまくいかないに違いない。それが理由で家出をされても、何らおかしくないように思えた。


 イルゼはずっと、死んだ夫の着ぐるみを着ている。


 少し上を向くと一段上の棚に、イルゼと夫と娘が一緒になって写った、古い写真が飾られていた。


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