第八話 拝啓、全知の貴方へ
冬休みは残り少しとなってきた。
玄関で靴を履いて振り返る。。
「今日は行ってくるね!」
「あぁ、行ってらっしゃい」
「楽しんでね」
今日も、見送ってくれる。
鳥居をくぐって異世界へー
「昨日は来なかったな」
鳥居のすぐ近くにクラがいた。
「何?心配してくれてたの?」
「ありえないな」
「照れ屋だなぁ」
翔琉は笑った。
「あっ翔琉様!」
「ヤヨイ!」
「昨日来ないなら言ってくださいよ!心配するじゃないですか!」
ヤヨイはムスッとしている。
「ごめんな」
翔琉は申し訳なさそうにした。
「クラ様だって、、」
ヤヨイが何か言おうとしたがクラは止めた。
「今日は服を買いに行きましょう!」
ヤヨイは、声を出した。
「え?」
翔琉は不思議そうな声を出した。
「異世界に似つかわしすぎるんです」
翔琉は自分の服を見る。神社の紺色の袴である。
「まぁ、それはそうだな」
翔琉は同意した。
「クラ様もです。そんなにマフラーとかフードとか厳重にしすぎです」
「、、、これがデフォ」
「まぁ、確かにそうだな」
クラは文句言いたげだが、翔琉も同意したので、少し立ち止まった。
(ロエと出会ってから、ヤヨイは少しづつ自分の言葉を出すようになったな、、、)
「じゃあ、いつもの領主の場所、、」
クラがそう言うが、翔琉は領主の姿を思い出して、
「やめてあげな?」
翔琉は止めた。
「じゃあ、この人に会うのはどうですか?」
ヤヨイが手紙を渡してきた。
「ほぉ、、」
ー死神さんへ
私は森の奥で一人でデザイナーをしています。
だけど、私は全能で人の気持ちも、魔物の気持ちも手に取るようにわかります。
正直、生きるのがしんどいです。
ごはんを食べるのも、町へ行くのも怖くて仕方ないです。
助けてください
アン・ノースタッドー
「クラ知ってるのか?」
「有名なデザイナーだよ。正体不明のデザイナー」
「やっぱり有名な方ですよね。私も聞いたことがあります」
「行ってみるか」
「結局かい」
翔琉はそう言いながらも乗り気だった。
クラは紙飛行機を飛ばした。
そして、そりに乗って出発した。
「本当にこんなところに家あるのか?」
翔琉が不思議そうに言う。
「わからない。これは飛ばした人の元へ行くからな」
そして、降り立った。
「お待ちしておりましたわ。」
橙色のゆるふわな髪の毛で、緑のワンピースを着た上品な女性が現れた。
「異世界人か?」
クラが鎌を構えた。
「その通りでございます。私はヤヨイさんの前に呼び出された者です」
「なんでここに?」
「逃げ出しましたの」
「元の世界に戻りたいか?」
クラが聞いた。
アンは首を横に振る。
「元の世界は嫌ですわ。それにもうだいぶ経ってしまったの」
「何年だ?」
クラが聞いた。
「10年以上」
「マジか」
翔琉は驚いた声を出した。
アンは見た感じ20代半ばと言ったところだろう。
「でも、こっちの世界も嫌ね」
「なんでだ?楽しいからいるんじゃないのか?」
翔琉が不思議そうに聞き返す。
そんな翔琉を見る。
「貴方、”祝福”ってこと知ってらっしゃる?」
「なんだそれ?」
翔琉は不思議そうな顔をする。
「あーそう言えば言ってなかったな」
クラが思い出したような声を出した。
「異世界からこっちへ来るときに付与されるのものだ」
「俺ないぞ?」
「”鑑定魔法”を持っているものに見てもらえばわかりますよ」
「俺は使えないな」
クラは手を上げた。
「私に任せてくださる?」
アンは手を翔琉の頭にのっけた。
「そうか。お前の”祝福”は、それに関連するものか?」
「”理解者”ってものです」
翔琉の頭にのっけた手を離す。
「え?わからない?」
アンは、固まった。
「能力違いか?」
「いえ、そんなはずはありません」
「”理解者”の能力は、相手の感情、本音、過去、未来、全てを理解できるってものです」
「チートじゃん」
翔琉は羨ましそうな顔をする。
「私にやって見てほしいです」
ヤヨイが出てきた。
アンはヤヨイに触れた。
アンは目を見開いた。
「どうかしたのか?」
クラが聞く。
アンの目に涙が溢れた。
「よく、頑張ってたわね、、、」
「なんで泣いてるんですか?」
「”理解者”のデメリットは、欲しい情報以上の事も知ってしまうの」
ヤヨイが動揺したように見えた。
「どういうことだ」
「この子の過去が見えたんです。まぁ、でも出会ったのが貴方達でよかったですの」
アンは安堵したような顔をする。
「貴方達は良い人ですからね」
「能力言ってもよろしくて?」
「はい。お伝えしとくべきですし」
そう言ってヤヨイは頷いた。
「この子の能力は”育む者”。植物を作り出したり、草木を自由に操ったりできます」
「強すぎだろ、、、」
翔琉は、ヤヨイを見て驚いた。
「だから、前に野菜がなかったのに作れてたのか」
「その通りです」
ヤヨイは嬉しそうに笑う。
「え?異世界人もしかして馬鹿強い?」
「普通ならそうだ」
クラは頷いた。
「だから、私が取り締まってるんだ。世界の情勢を保たなければならないからな」
「なるほどなぁ。俺も使いたいなぁ」
「さて、余談はが過ぎましたね」
アンが、仕切りなおすように手を叩いた。
「助けてくださる?」
「、、、どうやって?」
翔琉が不思議そうに聞いた。
「屋敷に連れてってくださらない?」
「断る」
クラは即答した。
「えー別よくね?ハーレム作ろうぜ」
クラは翔琉を睨む。
「リスクが高いだろ”理解者”って」
「ふふっそうかしら?もう手遅れじゃないかしら」
「どういう意味だ」
「能力鑑定や過去を見るのには、触れる必要がありますが、本音とか未来は見えておりますわよ」
つまり、現在より先の事は黙っててもわかるってことだ。
「一人でここに居てもつまらないんですの」
一人で絵を書いたり、服を作ったりー
「じゃあ、町へ行けばいいじゃないか」
「簡単に言ってくれますのね」
アンは悲しそうに下を向く。
「すべての感情を知ると、人と関わるのに恐れをいだいてしまいますわ」
「、、まぁその通りですよね」
ヤヨイは頷いた。
「能力を封じることはできないのか?」
翔琉はクラに聞く。
「私はそう言うのに詳しくない」
クラは目の前のアンに手を差し出す。
「それまで、手伝ってやらんくもない」
アンはその手を握り返す。
「あっ、、、」
アンは笑みを作った。
「お互い寂しいのは嫌ですわね」
クラはその言葉に驚いた表情を見せた。
「お前、、、まさか、、、」
「申し訳ありませんわ。見えてしまいました」
クラが鎌を取り出す。
「わっわっわ、お待ちください!」
「クラ焦りすぎだろ」
翔琉が笑う。
「笑い事じゃない。私だって、、、」
クラは目をそらす。
「恥ずかしいんだ、、、」
「お可愛いです。クラ様」
「うるさいぞ。ヤヨイ」
クラは顔を背けて顔を赤らめた。
「見返りは何か欲しいですか?」
「服。作ってあげてください!」
ヤヨイが勢いよく言った。
「まぁ、そうですね。それでは特殊すぎますしね」
アンが二人の服を見る。
「もうすでに用意してありますわ。来てくださる?」
「さすが”理解者”」
翔琉は驚いた声を出した。
「ほほぉ二人とも大変似合っております」
「さすが私のデザインですわ」
2人して二人に見とれていた。
「なぁ、別にいいんだけどおかしくないか?」
「冒険者はそんなものですわ」
クラは、新しく紫色を基調にして、魔法使い風の長いローブにフードがつけられていた。中はシャツと黒の半ズボンがついていたになっていた。
「それになんで半ズボンなんだ、、、」
「死神様。貴方、割とショタですわ。」
「ショ、、、、始めて言われたわ」
「解釈一致です」
ヤヨイも頷いた。
「俺割とよくね?」
「はい!大変似合っております!」
騎士風の服で白と緑を基調にした口元も隠れる仕様の上着に下は黒の長ズボンだった。
「そう、王道の騎士ね」
「私もあっちがいいんだけど、、、」
「確かにその通りですわ。しかし、そちらの方が、警戒されにくいですわ」
「ぐ、、、確かに」
「すごいですね。クラ様相手に強気ですね」
「”理解者”だぞ。そりゃなんか俺らの知らないことわかってるんだろ」
「羨ましいです」
「あっそうでした。お三方お名前は?」
「俺は風見 翔琉。こっちはクラで、、」
「ヤヨイです」
「素敵な名前ね。私の名前は知ってるかしら」
「はい。知っておりますよ」
ヤヨイが答えた。
「そうそう。ヤヨイは新しい服いらないの?」
「私はこの服気に入ってますから」
そう言って自慢そうに自分の服を見せた。
「そう。素敵なお召し物ですわ」
「ありがとうございます」
ヤヨイは嬉しそうに笑った。
「そうそう。お菓子焼いていたの是非食べていって」
「そうか。ありがたいな」
「感謝する」
「私も行かせてもらいます!」
翔琉はすぐについていった。
「お前、一人ここに居るって嫌じゃないのか?」
「まぁ、寂しいですわ。でもね、そっちのが安心するんですの」
「向こうの世界の話聞いてもいいのか?」
「ええ。よろしくてよ」
アンは目を瞑る。
「私、悪女でしたの」
「といっても、現代では王家の争いとかないだろ?」
「私は庶民の娘ですわ」
「じゃあ、そのしゃべり方は?」
「異世界ですもの。こんな風がよろしくなくて?」
「養殖かい」
「まぁ、失礼ね」
「私、図書館が大好きでしたの。」
★ ★ ★ ★ ★
「アン!あそぼ!」
「今日も図書館いくわ」
「チェーつまんないの」
孤児院で育ったアンは、群れるのはバカがやる事で、一人こそ強さみたいに思ってた。
だけど、それでも大切な仲間ができた。
親友のセラ。
たくさん話をした。だけど、大きくなるにつれて変わってしまった。
「セラ!あんな人と関わっちゃダメでしょ!」
セラは危ない人たちとつるむようになっていった。
小さい弟がいて、放置されがちだったらしい。
「見てほしくても!それはダメでしょ!」
「じゃあ、アンが私を見てよ!」
セラはそう言って涙を流した。
「見るから!絶対そばに居るから!」
だけど、それから少して、セラはまた同じことをしていた。
「なんで!」
「親の愛を受けてないアンにわかるわけないじゃん」
そう言ったセラは、まずいと思ったのか少し間をおいて、
「ごめん」と言った。
「勝手にすればいい!」
そう言ってアンは、セラと会わなくなった。
ほどなくして、セラは姿をくらました。
★ ★ ★ ★ ★
「そして、セラを探して、数年18歳になって施設を出たら、異世界転生ってことですわ」
「じゃあ、帰れば、、まだ」
アンは首を横に振った。
「知りたかったんですの。何がそんなに苦しかったのでしょうか。何の言葉が一番欲しかったのか。なんて言ってあげるべきだったのでしょうか。全部知りたかった。そう願い続けた、、」
悲痛の叫びのように聞こえた。
「、、、そしたら、まだ」
「転生者の”祝福”ってのは、その時の願いに伴って生まれるんだ」
(ってことはヤヨイの”育む者”はいったい)
翔琉はそう思ったが聞かないどいた。
「でも、別の人が心配するんじゃ」
「しませんわ。私、セラ以外と関わり深くないですの」
「諦めてしまいました。関わりを持つことを」
「でも、私の屋敷に来たいって」
「それは手段ですの。生きづらいのは苦しくてよ」
「、、、そうですか?」
ヤヨイは不思議そうに聞いた。
「私は、本音わかりませんから言葉にしてもらわないとわかりませんけど」
ヤヨイはじっとアンの顔を見た。
「寂しそうですよ?」
「まぁ、わかる。関わるとろくなことにはならないよな」
クラが頷く。
「貴方も、何百年そうでしたでしょ」
「でもなんだ、、、その、、、」
クラが翔琉とヤヨイを見る。
「悪く、、、ないぞ」
「出た!ツンデレだ!」
「そんなに照れられると私も照れます」
2人が騒ぎ出した。
「うっせ。黙れし」
(嘘偽りのない本音、、、)
クラの過去を知った者として、その言葉の重みは計り知れないだろう。
「私、、、も」
アンが言葉を絞り出すように言った。
(ずっと言わないようにしてた)
だって目の前からまた消えたら、もう耐えられない気がした。
心の穴が大きくなるのが怖かった。
言葉より先に涙零れた。
「寂しい、、、ですの」
セラが消えてから、たくさんの本を読んだ。好かれる人の特徴をまねした。
また、会いたかった。
「何その言葉遣い変なの!」
って言って笑ってほしかった。
(クラ様だってきっと、計り知れない別れを繰り返してる)
「関わることをあきらめたくないですの」
魔物の感情が見えるようになって、肉が食べられなくなった。
人の感情がわかるようになって、町へ行けなくなった。
一人だと、世界が自分を見放しているかのようで、寂しかった。
”理解者”で生きるのは生きづらい
「んだよ。正直に言えるじゃん」
クラが少し口角が上がっていた。
「そりゃそうだ」
「当たり前です」
2人が頷いた。
(理解できないから、言葉がある。嘘偽りのないこの人たちを、信じよう)
「帰るぞ。私”達”の家に」
どれだけ待っただろう。
欲しかったものは目の前に
「はいですの!」
帰る場所があることは本当に尊いものである。
そのまま、家に戻った。
クラがアンを案内しに行くといった。翔琉もついていこうとしたが、ヤヨイは翔琉を引き留めた。
「少し吐きだしたいんです」
「何をだ」
「アンさんは、私を見ると感情を知ってしまうから必死に考えないようにしていたけど」
ヤヨイは少し涙目だった。
「私、セラさんの気持ちたぶんわかりますよ」
「どういうことだ」
「セラさんが欲しかったのは、親からの愛情なんです」
「まぁ、そうだろうな」
「翔琉さんは、何か食べたいものがあった時、別の好きなもの食べて満足しますか?」
「しないなぁ、、、」
「アンさんは理解しようと頑張っていた。私まだ、子供だからわかるんです」
ヤヨイはオブラートに包んでいるが言いたいことは一つなのだろう。
「でも、セラさんは思ってたと思うんです。”これじゃない。これじゃ満足できない”」
ーアンじゃ、助けられない。
「それは、、、」
翔琉はヤヨイの目線に合わして屈んだ。
「ヤヨイの話でもあるのか」
「、、っ」
ヤヨイは、固まった。
「いつか、教えてくれないか?」
そう言って、ヤヨイの頭にぽんっと手を置いた。
「戻りましたの」
「おつかれー」
翔琉は平然と答える。
「なぁ、俺今思ったけど、お前目隠しするのはどうだ?」
「それじゃ何も見えないじゃないですの」
「そしたら、本音とか見れないだろ?」
「見てほしくないことがありますの?」
「それは知らないよ」
アンはちらりとヤヨイを見る。
「ヤヨイ、心配してくれて嬉しいですの」
「、、、っごめんなさい」
ヤヨイは目をそらした。
「私、知ってたんですの。きっと、助けられないってことは」
「だから、死神様に元の世界に戻れるって言われた時迷ったのですの」
クラは驚いたような顔をする。
「それはなんでだ?」
「復讐ですの」
「大好きでしたの。セラが、いない理由はその家族ではないですか」
「そいつは死んだのか?」
クラはストレートに聞いた。
アンは頷いた。
「じゃあ、お前はこっちの世界へいろ」
「は?お前どういうことだ?」
翔琉は、クラの態度に苛立ちを見せた。
「私たちは行き来しているんだこの世界を」
「死んだら、反対の世界へ行く。それがルールなんだ」
だから、クラは”死神”と呼ばれていた。
「だから、セラはこっちの世界へいる」
「だとしても、私気づけないかもしれないですわ」
「お前は”理解者”なんだろ。転移者の”祝福”の力は人智を超える」
相手が貴方の存在を理解しなくても、貴方が相手を理解する。
(絶対会える保証もない。無責任な言葉だ、、、)
クラはそう思い下を向く。
「ふふっ本当に貴方たちは良い人ですの」
アンが笑った。目に涙を浮かべながら。
そして、目隠しを取り出した。
「そうそう。翔琉くん」
「なんだ?」
「貴方だけ、本音も未来も見えないですの」
「え?」
翔琉は驚いたように声を出す。
「まぁ、でもこの人たちが信じているなら信用しますわ」
アンは目隠しをした。
「いいのか?怖くないのか?」
「目が見えないのは不安ですわね」
「そうじゃなくて、」
「知らないでいる優しさってのもありますの」
「もう手遅れだろ」
クラがツッコんだ。
「そうでもないものですわ。そんなにすべて記憶できるものではないもの」
「それはよかった」
それから、アンはクラに周辺感知の魔法を教えてもらうことになった。
習得するまではヤヨイと共に行動するらしい。
「目を閉じるだけでいいんじゃないのか?」
「それだと、困ったらまた力に頼ってしまいますわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ただいまぁ」
「「おかえり」」
祖父母が出迎えてくれた。
(嘘偽りがあるのだろうか)
ふと、翔琉はそう思った。
ー知らないでいる優しさってのもありますでしょ?
考えるのが馬鹿らしく感じた。
ー拝啓、全知の貴方へ
僕は貴方を理解できません。
人を理解したいのは僕もよくわかります。
僕も理解したいです。わかりたいー
そこまで書いて、翔琉は手を止めた。
(俺、理解したい、、のか)
翔琉は自分の気持ちの変化に驚いた。
なんでもいい、どうでもいいって思ってた日常、だけど出会って変わっていく。
「わるくないな」
翔琉はそうぼやいた。




