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第二話 拝啓、〇〇さんへ

ー大晦日ー

夜になると多くの人が集まり火の回りを囲んだ。

ここは雪が降る地域ではないので、雨天中止がそうそうない。今日も良く晴れていて三日月が綺麗に映っている。

「うわぁ、大きな火だー!」

子供たちの歓声が起きる。

手紙が奉納されて大きな火となった。

風波神社はこれも有名である。

翔琉は、風波祭りの日にぽっけにしまった手紙を取り出した。

返信は書こうとはした。けど思いつかなかった。


ー生きてていいのだろうかー


その返信は、翔琉には難しかった。

かろうじて少しだけ見出しのような文はできていた。


ー拝啓、

  無気力な僕ですがお返事書かせていただきますねー


その続きを迷い続けて今日になってしまった。

(深刻な悩みほど、無責任な言葉が命取りになるもんな)

吐いた白い息はすぐに消えた。

燃え盛る火をぼんやりと眺めていた。


(”風には神様が宿る”もしそうなら、この火の風に乗ってどうか助けてあげてほしい)

そう思い飛んでいけるように、綺麗に紙飛行機の形にして火の中に飛ばした。

「いってらっしゃい」

なんとなくボソッとそう呟いた。


今日は大晦日でこの村で一番大きい神社であるため、多くの人が協力してくれている。

だから、翔琉は袴こそ履いてはいるが自由にしている。


じっと火を見てたら紙飛行機が飛んでいった。

「あっ」

翔琉はそれを見てぽかんと口を開けた。

別にこれという理由はないが、なんとなく追いかけた。

(なんでこんな手紙一つでむきになってんだよ)

そう思いながらも追いかけた。なんとなくちゃんと奉納したかったからだ。


走っていると一つの鳥居の前に来た。

(ここは)


「翔琉は絶対入っちゃだめだからな!」

「なんで参拝者はいいのに!」

そう言って翔琉は頬を膨らませた。

「ダメだ!死神に連れていかれるぞ?」

「なんで!みんなすぐに帰って来れてたじゃん!」

「翔琉はここの神社の子だからダメだ」

「なんだよそれ!!!」

「ほれほれ、お菓子やるで機嫌治しとくれ」

そう言って祖父は和菓子を出してきた。

「やった!!!じいちゃん大好き!」

そう言って喜んで食べた。


少しの罪悪感と少しの好奇心。

(これどっち行っても後悔するやつだ)

そう思いため息が出る。


”すべての運命はもう決まっとるんじゃ”


(なら、俺がこうするのも決まってたんだよな)

そう身勝手な思いだと感じながらも、翔琉は鳥居をくぐった。

その奥にも森が広がっていた。

紙飛行機は見失ってしまったがその道を歩いた。


川が流れる音、森が風で揺らぐ音。その全てが翔琉を一人だと思わせて来る。


「あった」

翔琉は紙飛行機を拾うために屈んだ。


(何かがおかしい)

翔琉は思い出した。

神社の二階から森を見上げた時、鳥居からすぐ見えるところに祠があったはずだ。

夜だから見えないと思ったが、それにしては遠すぎる。


紙飛行機を拾い。顔を上げる。


目の前でフードのようなものをかぶってマフラーのようなもので口を隠した青い目の好青年がいた。

そして、翔琉の首のすぐ横に鎌を構えていた。

「なに?」

翔琉はその青年を見た。

「怖くないのか?」

「まぁ、多少は」

(死ぬならそれでもいい)

そう思いながらぼんやりと青年を見た。

「手、震えてる」

ボソッとそう言うと青年はビクッとした。

鎌を構えてる手にそっと触れようとした。青年に慌てて、手を引こうとしたが翔琉の首に鎌が当たりそうでためらった。

「私に触れるな!”死神”だぞ!」

「別にいーよ」

鎌の手にそっと触れた。やはり、震えていた。

「身の丈に合わないことはやんない方がいいよ」

(自分も人のこと言えないけど)

そんなことを思いながら言った。

「降参だ」

そう言って青年の手から鎌が黒い粒子のようになって消えた。

「えっすごい」

「そこで驚くなよ、、、」

青年はため息をついた。


翔琉は足元を見ると草の隙間からレンガのようなものが出ていることに気づいた。

横をよく見るとレンガの壁のようなものがあった。

「ここは?」

「私の城だよ。まぁ君のいる世界とは違うとこだけどね。」

「異世界ってことか」

「まぁでもすぐに帰ってもらうけど」

そう言って青年は帰り道の方を指さした。

「私は人に触れられないと思っていたがそうではないらしい。そのことを知れたお礼だ。無事に送り届ける」

「えっやだ」

翔琉は速攻で断った。

「なんで!?」

「えっ普通に異世界楽しそうじゃん」

青年はため息をついてお手上げと言わんばかりに

「わかった。私にも準備がある。また明日来てくれ」

それだけ言って翔琉を納得させた。


「俺は風見翔琉。お前は?」

「、、、クラ・ウィーレィン。」

「へー外国人みたい」

「ここではこれが普通だよ」

「魔法とかあるの?」

「ありるね」

「見せてくれたり?」

「明日ね」

クラはため息をついた。

翔琉はふと手の紙飛行機を思い出した。

「なぁ、クラは俺の神社の祭りってわかるのか?」

「わかるよ。すごくきれいだよね。毎年楽しみにしてる」

「こっちの世界に来てってこと?」

「んーん。鳥居から」

少しだけ寂しそうな眼をした。

「悲しくないのか?」

「まぁ、少しは悲しいかな」

「紙飛行機は書いたのか?」

「書いたよ」

「へー、、、ちなみに番号は?」

「9641」

(こいつのだったのか)

紙飛行機をさっと隠した。

「そっか。お前家族は、、」

「ついたよ」

遮るようにクラがしゃべった。

「おっもう着いたのか。早いな」

「じゃあね」

「また明日」

そう言って翔琉は戻った。

翔琉が前を向く瞬間少しだけ目の端で見えた。

顔が見えないように覆っていてわかりづらかったけどそれでも確かに見えた。


少しだけうるんだ目と、嬉しそうな口元。


大きな城だったのに、人の気配がなかった。

(一人だったのかな)

色々聞きたいことはあった。

翔琉は祖父に禁止されていたところへ行ったという罪悪感すら忘れていた。


いつのまにか12時は過ぎて新年を迎えていた。

温かいお汁粉をのみながら、白い息を吐いた。

(来年は一緒に行けるかな)

鳥居の外から見たなんて悲しいだろう。そう思っただけだ。


”風に神様は宿るらしい”半信半疑だった。

だけど、本当なのかもな。人の多い初詣の行列に並んでお参りをした。

「ありがとうございます」

それだけの気持ちを伝えて翔琉は家に戻った。

机の上に紙飛行機を広げた。


ー生きてていいのだろうかー


これはクラのやつだった。

もう返すことなんてないけど、少しだけ書き足したいことがあった。

見出しのところにちょっとだけ


ー拝啓、死神さんへ

  無気力な僕ですがお返事書かせていただきますねー

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