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第一話 拝啓、小さな女の子へ

空に舞う無数の紙飛行機。

ゆく当てもなく誰かの元へ降りるのをただ待っている。


「翔琉、別れよ」

「えっ、なんで?」

付き合って一年の彼女に振られた。風見 翔琉。

その時のことを思い出す。

「なんでって。」


「本当は私の事好きじゃないでしょ」


家に帰っても、そのことを思い出す。

(好きか嫌いかで言えば嫌いじゃないのにな)

そういうとこかと思いながら、ため息をついた。

「そんなことないよ」って言葉でいつもなら切り抜けれるのに今回はだめだったらしい。

(なんでだろ)

いつも人に合わせてうまく付き合うのに注力してきてたはずなのに、今まで人間関係うまくいったためしがない。

(実に、不思議だ)

コンッコンッ

「翔琉ーいるか?」

「なにー?じいちゃん」

「風波祭りの準備の手伝いをしてくれ」

「はーい」


風波祭りとは、風波神社に伝わるお祭りのことだ。小さな村だから規模は大きくはないがその祭りの珍しさがSNSで有名になり、今では少し規模が大きくなっている。


翔琉はカレンダーを見る、11月下旬もうその時期か。

「そこに紙がたくさんあるだろ?」

「あーこれ?」

「そうだ」

「あっいつものようにあのマークをかけと?」

「お駄賃は後でやるから頼むよ」

風波祭りで使う紙には右下にマークを書く、風車のマークだ。

毎年何千枚もこれを、書いている。

(絶対こんなに使わないだろ)

そう思いながら、翔琉は書き始めた。


ー風波祭り当日ー

「さて、皆さんお手の紙飛行機を飛ばしてください」

全員が持っている色とりどりの紙飛行機が空に舞う。

たくさんの紙飛行機が縦横無尽に空を駆け巡り誰かの元へ。


風波祭りで飛ばす紙飛行機には、文字を書くことが推奨されている。

内容は、自分の悩みや願い事なんでもありだ。

それを書いたら、神社の境内の好きなところから飛ばす。

そのあと、近くに落ちていたり、自分の元へ飛んできた紙飛行機を持ちその後は個人の自由である。

一応、どの結果になってもご利益が得られる仕様にはなっている。

①祈り箱に入れる。

 これは大晦日の日に燃やして、神様に願い事を伝えるためにある。

②返事を書いて、お返事箱に入れる

 これは書かれている内容に対して、メッセージを送るものだ。

③もらって帰る

 これは、その紙飛行機を見て感動したのならそれを持ってお守りにしても良し。

④見つからない

 これは、神様が拾って読んでくれているとされている。


(つくづくよく考えられてると思う)

翔琉はそう思いながら自分が投げた紙飛行機の行方を追う。


「本当は私の事好きじゃないでしょ」


それを聞いて、翔琉は自分の本心はわからなかった。自分の気持ちに鈍感すぎた。

いつも、何もやる気になれず。なんとなく普通の人になりたくてなんとなく恋愛して。

少しだけ嫌になった。

いつもこの祭りで拾った紙飛行機には返信をしていた。

だけど

ー無気力な僕が返信していいのだろうかー

(馬鹿馬鹿しい)

そう思いながら意味もなく、いや少しはあったのだろう。そう書いて飛ばした。


だが、その飛行機はあり得ない曲がり方をして、森の中へ消えていった。

「あそこは、、、」


山の中にあるこの風波神社は、祖父に絶対近づくなと言われている場所があった。

参拝客とかは自由に言っていいと言われていたが、翔琉だけは止められていた。

ちょうどその方向へ飛んでいった。


その方を見てたら、顔に紙飛行機が当たった。

「いたっ、、、」

開いてみると

ー生きてていいのだろうかー

(誰しも重い何かを背負っているもんなんだな)

なんとなくその紙をぽっけに入れた。

(お守りにするには不謹慎すぎるか。)

なんて馬鹿なことを考えていた。


風波祭りは12月の第2週の土日で行われ。紙飛行機を飛ばすのは日曜日の昼である。

その日から第3週にかけて回収を行い。

第4週目に配布。

大晦日に、祈り箱に入っていたものや境内に落ちていたものは燃やされ神様へ送られる。


次の日から、翔琉は学校帰り祖父と代わる代わる神社の番をしていた。

「高校生なんだから、もっと自由にさせてくれよ」

「まぁまぁいいではないか。この神社はいずれ翔琉が継ぐんだから」

「俺は、そんな清い人間じゃないよ?」

「人間だれしも欠点はある許しあってこその人間じゃ」

そういって祖父は軽快に笑った。

(俺は、ほんとにやめた方がいいだろうな)

そんなことを考えていた。


祈り箱とお返事箱両方なかなかいっぱいになっていた。

紙飛行機にはそれぞれ番号が振られていている。その番号をもとに返却をするためだ。

第4週に入る前に軽く整理をしておく。

ふと翔琉は祈り箱を見た。

「ねぇじいちゃん。祈り箱に入ってる手紙に返信を書くのは罰当たりなのかな」

それを聞いた祖父は少し考えた。

「罰当たりなわけあるかい。全ての運命はもう決まっとるんじゃ。好きにすればいい」

祖父は翔琉の肩を叩いた。

「そっか」

(なんでこんなこと聞いたんだろ)


そしてついに第4週目が来た。

たくさんの人がやってきた。

手がいっぱいいっぱいで祈り箱の返信を書く余裕もなく、お返事箱の人のみの対応になってしまった。

(なんか、申し訳ないな、、、)

そう、思いながらも参拝者の対応をしていた。


SNSでさらに注目を集め、多くの人が訪れ御朱印も風車モチーフの可愛いやつでそれも反響になり祖父はそちらの対応に追われていた。

祖母もお守りの販売やおみくじなどで忙しそうにしていて、手紙の対応は翔琉だけになっていた。


第4週目の最後の方になると人はどんどん少なくなっていった。

(やっと返信かけかな)

だけど、自分が書いた紙飛行機の返信がなかったことを思い出した。

(書かない方がいいのだろうか)

ー風には神様が宿っているー

この神社の考え方だ。


急に追い風が吹いてきた。

目を前に向けると一人の小学生ぐらいの女の子が立っていた。

「あの、お返事ありますか?」

「えっと番号は?」

「えっと大晦日って覚えたから、、えっと」

「1231?」

「そう!」

そう言われて翔琉は奥の部屋へ行った。

だが1231は祈り箱の方にあった。

「祈り箱の方だから神様に届けられるかな、、」

そう言うと女の子は悲しそうな顔をした。

「ありがとうございます」

礼儀正しくそう言ってその子はその場を去ろうとした。


ー無気力な僕が返信していいのだろうかー


その言葉が胸のどこかで騒いでいる。

(でも、、、)

「あっ、、あのさ!」

その声に女の子はびっくりしたように振り返った。

「お返事、俺が書いてもいい?」

そしたら、女の子の顔がぱっと明るくなった。

「うん!」

胸が少し傷んだ。


1231の紙飛行機を開く


ーアイドルになりたい!!!-


そう大きく無邪気な文字で書かれていた。

その文字に翔琉は口角が上がった。

(簡単な言葉で返信でいいのだろうか)

少し悩んだが、翔琉は思いのままを書いた。


ー努力を続ければ絶対なれるよ!頑張って!ー


ありきたりの言葉だろう。”絶対”なんて無責任なのだろう。だけど、他人からの応援ではこれが限界だと思うから、このまま渡すことにした。

「これ、どうぞ」

翔琉は少しだけ緊張しながらその紙飛行機を渡した。

大きく無邪気な文字を引き立てるように書かれた小さくて弱々しい自分の返信。

だけど、それを見た彼女はすごく笑顔になった。

(よかった、、、)

「私!絶対絶対なってやるから!ライブは応援に来てね!」

そう言って太陽のような笑みを浮かべた。

女の子は、はっと何かを思い出したような顔をした。

「あっ、お兄さんこれ遅れたけど送り箱に入れてくれますか?」

女の子はおずおずと手紙を渡してきた。

「もちろん!ありがとう」

そう言って、手紙を受け取った。

女の子は笑顔で帰っていった。


ふと、女の子からもらった手紙の番号を見て、目を見開いた。

(俺のやつだ、、、!)

そう思い、すぐに紙飛行機を開けてみる。


ー無気力な僕が返信していいのだろうかー


その弱々しく自信なさげな文字。その下に太くてたくましくて、すべてを支えるような。


ーいいよ!!!ー

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