第3話 勇者の紋章
扉の向こうに広がる中世の街並みに、悠斗は戸惑っていた。
なぜこの扉が違う世界に繋がっているのか、それを聞こうと店長の方へと振り向いた時…
「あ、これに色々書いてあるから、また読んどいて。ほな、頑張って。時給581円の勇者様!」
と言って、悠斗を無理矢理異世界へと押し出したあと、扉を閉め始める。
「あっ、ちょ、ちょっと! 意味が分からないんですけど! これからどうしたらいいんですかっ!?」
閉まりかけるドアを押し返そうと扉に力をかけた瞬間、扉が開く。
悠斗は勢いよくコケた。
「痛てててっ…急に開けないで下さいよ…」
コケたまま顔を上げる悠斗の近くに店長の顔がある。
「ちょっ、近い近い…何ですか?」
「大事な事を言い忘れてた」
店長が悠斗の手を引き、身体を起こしながら言った。
「大事な事って?」
「絶対に鏡を見るな。鏡どころか、自分の姿を見るな。窓、水たまり、風呂、池、湖、海、とにかく自分が映るものを絶対に見るな」
「み、見たらどうなるんですか?」
「死ぬ」
「し、死ぬ? 何で?」
「知らん。とにかく…死ぬ」
「えええええっ?」
「ほな、頑張って」
そう言って、店長は悠斗の背中を押した。
再び異世界へと戻る悠斗。振り返った瞬間、無情にも扉が閉まる。
「ちょ、ちょっと! 店長! 一体これからどうすればいいんですかっ!」
ドアノブをガチャガチャするが、扉は開かない。押しても引いても開かないので、横にスライドさせようとするが無駄だった。
「おいおいおいおい、これ、どうやったら元の世界に戻れるんだよっ!」
扉の前で頭を抱え込む悠斗は、ハッとあることを思い出した。
「そうだ、渡された紙に全部書いてあるって言ってたな。紙、紙、紙…あった! なになに?」
もらった紙を広げると…
『まぁ、何とかなるっしょ!』
の一言だけが書かれてあった。
「何とかなるって何だよ! 無責任だよ! どうすりゃいいんだよ!」
天を仰ぎながら叫んでいると…
「あっ、あなた様はもしや…時給581円の勇者様ですか!?」
胸の前で両手を組み、キラキラした目で見つめる1人の美少女の姿がそこにある。
早速どうにかなった悠斗であった…




