第22話 書物庫
この世界の真実を知るための手掛かりを探していた悠斗。
西の洞窟にそれがあるという情報(←悠斗の思いつき)を得てそこへ向かった。あるはずのない洞窟と、あるはずのない情報が現実になってしまった。嘘から出た真実とでもいうべきだろうか……ぱふぱふをごまかすためについた嘘がこんな事になるなんて……。
そんなことはすっかり忘れていた悠斗は、石版に書かれていた情報を解読すべく、リリアと共に、お城にあるという書物庫へと向かった。
「ここには、この国の歴史や、文化を伝えるものや、魔法の使い方の本なんかも置いてあるんですよ」
「へぇ、魔法の使い方かぁ…リリアも魔法を使えるの?」
「私は聖女見習いなので、まだ弱い回復魔法しか使えないんです。もっと勉強して経験を積んで、立派な聖女になった時には、癒しや毒消し、それに強力な回復魔法を使うことができるようになるんです。なので、悠斗様が死にそうな時のために、私、頑張ります♪」
「ははは……ありがとう」
顔をひきつらせながら、そんな場面が来ない事を願う悠斗であった。
天井まである本棚に、びっしりと本が収められている。リリアの言うとおり、背表紙には魔法の使い方や、剣術の本や、薬草の本など色々なものがあった。だが、あまりにも本が多すぎて、目的の本を見つけるのは困難だと悠斗が思っていると……。
「大丈夫ですよ。心で念じると、必要な本が飛んでくるので」
(必要な本が飛んでくる?)
「一度やってみますね。たとえば、この国の歴史書がほしいと頭に思い描くと…」
リリアが胸の前で手を組み、そっと目を閉じた。すると、どこからともなく深緑色の背表紙の本が飛んできた。
「ねっ、飛んできたでしょう? 悠斗様もやってみますか?」
「そうだな…僕はまだ、この国の広さをあまり知らないから、地図がほしいかも。頭の中で思い描くんだったよね…」
悠斗が地図を思い描いた。すると、蝶が舞うようにひらひらと一枚の紙が宙を舞っている。そして悠斗の手の上にふわっと落ちた。
「わっ、ホントだ! 僕にもできた!」
自分が魔法を使っているような気がして何だか嬉しくなる悠斗。初めて異世界の力みたいなものを使った事で、現実世界とは違うことを実感する。
「そうだ! 私、調べたいことがあったんです! ぱふぱふって一体何なのかを知りたくて…」
そっと目を閉じ、胸の前で手を組みながら何かを思い描いているリリア。
「わわわわわわっ! それは調べちゃダメだっ!」
と、慌ててリリアの邪魔をしようとする悠斗。彼女の手を解こうと手を伸ばした時……
「分かりました。じゃあやめておきますね」
と、悠斗の言葉を素直に受け取るリリアは、組んでいた手を解いた。伸ばした悠斗の両手に、柔らかなものが触れる。
「…やだ…悠斗様ったら…」
ぽっと赤らめた頬に両手を当てながら、顔を逸らすリリア。
「ご、ご、ご、ご、ごめんっ!」
慌てて手をどける悠斗の顔も真っ赤になる。リリアの顔をちらっと見てみるが、どうやら怒ってはいないようだった。
改めて、石版の文字を解読するために、写真で一度字の形を認識してから、頭の中で思い描いてみた。すると、一冊の本がゆっくりと悠斗のもとへと飛んできた。
「どうやらこの国の古代文字を研究した本のようですね」
本の背表紙に書かれている文字を読んでリリアが言った。悠斗にはこの国の文字は読めない。
その本には、現代の文字と、古代の文字を比較した表が書いてあった。リリアがスマホの写真と見比べながら、現代の文字へと変換していく。
「悠斗様、分かりました」
「ホント? 何て書いてあるんだい?」
「えっと…勇者よ、北へ向かえ…と書いてあります」
「北へ向かえ…か…」
この文字はそういう意味なのか、と、スマホの写真を見直した時だった。その古代文字の上に、日本語で「勇者よ、北へ向かえ」と書いてある事に気づいた。
(書いてるじゃないか…日本語で…でも、この事は、リリアには黙っておこう…)
「ちなみになんだけど…他の文字はどんな事を記しているの?」
「他ですか? ちょっと待って下さいね…えっと…」
リリアが解読し始める。悠斗は何だかイヤな予感がした。
「この文字ってもしかして『3分だけ待ってやる』だったりする?」
悠斗がある一文を指して言った。
「そうですっ! 悠斗様、すごいっ!」
(ん~日本語をこの国の文字に翻訳したものだったのか…でも古代文字って事は、この石版は相当古いものって事になるよな。それなのに日本語が書いてあるって…どういうこと? ますますワケが分からなくなってきた…)
「悠斗様、とりあえず、この石版に書かれてある通りに、北へ行ってみませんか?」
「そうだね。何か分かるかもしれないし…」
悠斗はルーメリアの地図を見た。地図の真ん中に、この城が記されている。そして地図の北には、大きな湖があり、その向こうには、高くそびえる山脈が描かれていたのだった。




