第20話 再び洞窟へ
洞窟で撮った写真が全て消えている。
あの時は時間がなかったので、後でじっくり見返そうと思ったのだが、不思議とその写真が消えていた。
(結局、何の情報も得られなかったな…でも、日本語で書いてあったのは気になる。店長以外に、あの世界と繋がっている人がいるのだろうか? とにかく、バイトの時間が長い時に、またあの洞窟に行くことにしよう)
スマホだけを使うと、充電が直ぐになくなる。今度は上手くやろうと思った悠斗は、次のバイトまでに色々と準備をした。
そして次のバイトの日…
(ちょっと持ちすぎたかな?)
たすき掛けにしたカバンは、準備した持ち物でパンパンになっていた。これだけパンパンだと、必要な時に必要なものが見つからない可能性がある。慌てているドラえもんが四次元ポケットの中で必要な道具が見つからなくなるあの状況になりかねない。悠斗は持ち物を厳選し、腰に付けた巾着袋にそれらを入れた。
バックヤードに来た。店長が油性マジックを持ったまま待ちかまえている。
「……」
「はよ、あれを言わな」
「あれって…毎回言うんですか?」
「当たり前やろ。そういう風に課長が作ったんです」
「課長って誰っすか?」
「知らん…なんか知らんけど、勝手に口からセリフが出たんや…」
「分かりました…じゃあ…装着!」
装着…それは勇者システム発動のコマンドだ。では、装着プロセスをもう一度見てみよう。装着コマンドを受けて、諦めを越えた悠斗の気持ちが、イタズラ心を描く店長の気持ちと融合。わずか5秒で、おでこに紋章が描かれ、1分以内に装着を完了するのだ。
どこからか解説のナレーションが流れ、1分以内に防具の装着が完了した。
「ほな、今日も頑張っていってらっしゃい!」
ルーメリア王国へと続く扉をゆっくりと開ける。開けた瞬間、湯気と共に良い匂いが漂ってくる。
「きゃあああああっ! 悠斗様のエッチっ!!」
お湯を掛けられて顔と髪がびしょびしょになる悠斗。リリアがお風呂からあがって、支度が整うまで、彼女の家で待つ。何故いつもここに繋がるのか、そして何故いつもお風呂に入っているのか? 分からない事はまだ多い。
「お待たせしました」
まだ少し濡れた髪のリリアにドキッとしながら、前回、自分が消えた後の事を尋ねてみる。
「悠斗様に良いご報告があります。私についてきて下さい」
と、何だか嬉しそうなリリア。良い報告という事なので、きっと嬉しい事なのだろう。リリアに連れられて街の外へと続く門へとやってきた。門をくぐって外に出る。すると城壁のところに、あのドラゴンが身体を丸めて寝ていた。
「ドラちゃんのおかげで、最近は街に近づくモンスターがいなくなりました。今ではドラちゃんがこの街の守り神なんですよ! 全部悠斗様のおかげです♪」
「ドラちゃんって…ドラえもんじゃないんだから…」
「ドラえもんって何ですか?」
ドラえもん…もとい、ドラゴンの頭をなでながらリリアが言った。
「いや、独り言だから気にしないで……それよりも、もう一度あの洞窟に行きたいんだけど…この間は時間がなくてあまり調べられなかったし…」
「そうですよね。悠斗様は今日もあまりお時間がない感じですか?」
「そうだね。できれば、早く行きたいかも。何があるか分からないし、じっくり調べたいし…」
「分かりました。ではドラちゃんに連れて行ってもらいましょう!」
「連れて行ってもらう? どうやって?」
悠斗が尋ねると、リリアはどこか嬉しそうな顔でドラゴンの背中に乗った。
「さぁ、悠斗様も乗って下さい!」
リリアに促され、ドラゴンの背中に乗る。
「ドラちゃん、西の洞窟までお願い♪」
リリアが言うと、ドラゴンは大きな羽を広げて羽ばたいた。ふわっと宙に舞い上がったと同時に、西に向かって空を飛び始めた。ほんの数十秒で西の洞窟へとたどり着いた。
(い、いつのまにこんなに手懐けたんだ? じゃ○りこ恐るべし!)
ドラゴンにご褒美のじゃ○りこを与えるリリア。食べ終わると、ドラゴンは身体を丸めてその場で休み始めた。
「さぁ行きましょう♪」
リリアに急かされながら洞窟へ向かう悠斗。今回はちゃんと調べないと、と気持ちを引き締め入口へと向かう。悠斗はカバンの中をゴソゴソと探った。そして……
チャッチャラー♪
「フラッシュライト~!」
などと口にするキャラではない悠斗は、無言でフラッシュライトを取り出した。電源を入れて洞窟の中を照らす。
「すごいっ! 何でも見えちゃいます!」
文明の利器に驚くリリア。自分で作ったワケではないが、何だか嬉しくなる悠斗は、リリアを連れて奥へと進んだ。
コウモリのようなモンスターの剥製のところまで来た。その近くの壁には、何か日本語で書かれている石版がある。悠斗は一応スマホで写真を撮った。そしてフラッシュライトを当てて、石版に書かれた文字を見た。
「何て書いてあるんですか?」
「えっと、なになに…伝説の勇者よ。よくぞここまでたどり着いた。だが、お前の命もここまでだ。後ろを見ろ…」
と、日本語の分からないリリアの為にその文章を読み上げた。
「後ろを見ろ…ですか?」
と言って振り返るリリア。そして顔をこわばらせる。
「ゆ、ゆ、ゆ、悠斗様っ! 生きてます! モンスターが生きてます!」
これは剥製ですと書かれたモンスターが、鋭い牙を剥き出しにしながら、二人を威嚇するのだった。




