第17話 嘘つき
悠斗は悩んでいた。
街を出て西に向かっているが、西に洞窟などない。
ぱふぱふの事を聞かれ、話題を変えるために咄嗟についた嘘を、どうやって回避しようか、頭の中でそのことがぐるぐる回っていた。
(どうしよう…実は嘘でしたなんて言ったら、リリアはショックを受けて泣き出すかも知れない…)
リリアが泣いている姿が頭に浮かぶ。その姿に何だか胸が苦しくなる。
(それだけは回避しないと…でもどうしよう…)
歩きながら考えていると……。
(…よく考えたら、人から聞いた情報だから間違っている可能性もあるはずだよな……有るって言われたんだけどなぁ……でごまかせば良いじゃないか!)
自分の嘘でリリアを巻き込んでしまうと思って悩んでいたが、そもそも情報なんて曖昧なものだ。間違っている事も多々ある。情報を頼りにやってきたけど、間違いだったようだ、でごまかそう。
そう考えると、悠斗は気持ちが軽くなった。
「ねぇリリア……あの情報はもしかして間違っていたかも知れ……」
「あ~!! 悠斗様! 有りました!!」
悠斗の言葉を途中で遮り、リリアが指をさした。
なんと、その方向に小さな洞窟があった。
「ほ、本当に洞窟があるなんて……」
「やだ、悠斗様ったら…悠斗様が情報を集めて下さったんじゃないですかぁ。あの中に、この世界の真実を伝えるものが眠っているんですよね?」
「そ、そうだね…」
(そうだったか? 俺、そんな事言ったか? 咄嗟に言った事だから全然覚えてない…)
「さぁ早く行きましょう♪」
悠斗と腕を組みながら洞窟へ向かうリリアはどこか楽しそうだ。怖くないのだろうか? と、不気味に口を開く小さな洞窟を見て悠斗は思った。
二人並んで歩くとやっとなほどの入口だ。中は暗くてどうなっているのか分からない。入ってすぐに行き止まりだといいんだけどなぁ、と、悠斗は思った。
悠斗は昔からこの手のものは苦手だった。お化け屋敷とか絶対に入りたくないし、ハロウィンの時期にテーマパークで開催されるちょっと怖い感じのイベントにも参加したくない。どうして「洞窟」なんて言ってしまったのだろう、と、今さらながら自分を恨む。
「真っ暗ですねぇ…奥が全く見えません…」
入口から中を覗くリリアが言った。
「そ、そうだね…やめておく?」
「何を言ってるんですか! この世界のすべてが分かるかもしれないんですよ? 絶対に行かないと!」
リリアは行く気満々だ。女の子を一人で行かせるワケにもいかないし、もう後戻りはできないな、と悠斗は諦めた。
「リリア…ちょっと脱がせるの手伝ってくれる?」
「えっ? ぬ、脱がせる? 悠斗様…いくら暗くて誰もいないからって、いきなりそんな…」
「いや、そうじゃなくて…この防具を脱がせるの手伝って。中から取り出したいものがあるんだ」
「そ、そういう事ですね」
一人では脱ぐのが大変なので、リリアに手伝ってもらった。悠斗は胸のポケットからスマホを取り出し、再び防具をつける。今度からは取り出しやすいように、私物は袋に入れて腰に付けておこうと悠斗は思った。
スマホのライトを点灯させる。
「わぁっ! 悠斗様! それは魔法ですか?」
白く光るスマホの光を見てリリアが驚く。
「ん~魔法じゃないけど、まぁそんな感じかな?」
説明が面倒なので、悠斗は適当に答えた。
洞窟の奥に向かってスマホのライトをかざすと、何かと目が合った。
「ん? 今、なんかいた?」
リリアに尋ねる悠斗。
「何か…いましたよね?」
リリアも何かを見たようだ。
もう一度、洞窟の奥を照らしてみる。
洞窟の奥には、鋭い牙を剥き出しにしてこちらをじっと見ている、大きなコウモリのようなものがいたのだった。




