第14話 装着
バイトの時間が終わり、強制的に元の世界に戻った悠斗。どうやらこちらの世界へ帰ってくるのには、バイトのシフトと関係があるようだった。
次のバイトは二日後だった。
今度ルーメリア王国に行った時はどんな感じになるのだろうか?
急に消えてしまったから、逃げ出したとは思われていないだろうか?
クララとリリアから、ご褒美のキスをもらい損ねたけど、あの後はどうなったのだろうか。今回は運良く切り抜けられたけど、次も上手くいくとは限らない。初日に色々起きすぎて必死にそれをこなした悠斗だったが、逆に色々起こり過ぎて、考える暇がなかったのが良かったかも知れない。
先のことを色々考えても仕方がないかと悠斗が思えたとき、何だか胸のあたりのざわざわも少しマシになっていた。
そして2回目のバイトの日。やはり店頭ではなく、バックヤードへと呼ばれた。そして店長に、この間伝え忘れたという注意事項を説明された。
「この間は良かったけど、実は勇者になるには、あるコマンドが必要なんや…」
「こ、コマンド…ですか? この間はなかったと思うんですけど…」
「この間は特別や。初日から色々言われても頭が混乱するだけやろう?」
「いやいや、言われなくても僕は初日から混乱しまくってましたけど」
「細かいことは気にすんな。とりあえず、そのコマンドとやらをやらないと大変な事になるんや」
「やらないとどうなるんですか?」
「…死ぬ…」
「言うと思いました…でもこの間は死にませんでしたよ?」
「たまたまや。これをやらんかったら、2回に1回の確率で死ぬからホンマに、気ぃつけてや! まずは、こうするねん。左手をこうやって右の腰に当てて…右手は斜め45度に構える。そしてここで決めセリフ!
「装着」
店長が悠斗の前でやってみせる。
「…本当にこれを毎回やるんですか?」
「毎会や。せやないと…」
「死ぬんでしょう? 分かりました、分かりました…」
悠斗は半ば諦めの気持ちで、構えた。
「…装着…」
ポーズを決めながら悠斗がそう言うと……
装着…それは勇者システムの発動のコマンドだ。では、装着プロセスをもう一度見てみよう。装着コマンドを受けて、諦めを越えた悠斗の気持ちが、イタズラ心を描く店長の気持ちと融合。わずか5秒で、おでこに紋章が描かれ、1分以内に装着を完了するのだ。
どこからか解説のナレーションが流れ、1分以内に防具の装着が完了した。
「じ、じゃあ、行ってきます…」
装着を完了した悠斗が、バックヤードにある扉を開けようとした時だった。
(あ、そうだ…あれを買っていかないと…)
悠斗は店内へ向かうと、お菓子コーナーで「じゃ○りこ」を全部持ってレジに並んだ。
「おいおい、いくら何でも買いすぎちゃうか? まぁ、うちの売り上げに貢献してくれるのは有り難いけど…」
勇者の姿で、かごいっぱい「じゃ○り」を買っている姿を、周りのお客さんは不審な目で見ているのだった。
「よし、じゃあ、行ってきます」
悠斗がルーメリア王国へと続く扉を開ける。
開けた瞬間、何だか良い匂いがする。
そして目の前には、お風呂に入っているリリアの姿が……。
「ゆ、ゆ、悠斗様のエッ○!!」
いきなりお湯を掛けられ、バイトが始まって秒でびしょ濡れになる悠斗であった。




