第13話 勇者募集中!
(はぁ…安い時給で働いてくれる、勇者みてぇな奴はいねぇかな?)
売り上げが伸び悩む中、新しいバイトを雇う余裕があまりない。かといって、バイトを雇わなければ、自分の休みがない。店長は悩んでいた。キャバクラに行く時間が取れないと……。
(せめてこの値段で働いてくれたら、なんとかなるんやけどなぁ…お母ちゃんには普通の時給で募集したことにしておいて、中抜きしたら、時間も空く上にキャバクラに行く分も確保できる…)
ぶつぶつと独り言をいいながら、バイト募集のチラシを作る。だがそこはやはり、昭和の男である。できあがったチラシが昭和っぽい。バイト代も昭和並だ。
(今どき、こんなチラシと時給でやってくる奴なんておらんか…)
店長がバックヤードのパソコンの前に座りながら、イスに背を預けて天井を見てると、近くにあった小さなテレビからニュースが流れた。最近は、AIを使って何でも簡単に作ることができると……。
(AIか…なんか、言えば何でも作ってくれるみてぇだな…いっちょやってみるか?)
ネットで調べ、AIを駆使して何とかバイト募集の動画を作ってみる。できあがった動画をタブレットで再生してみた。
(おっ! 我ながらなかなか上出来じゃねぇか…って、ほとんどAIが作ってくれたんやけどな、わははははっ)
と笑っていると、店長は手を滑らせた。足元にタブレットが落ちる。
「おっとっと、手が滑った…」
タブレットを取ろうとしたとき、
「あんたっ! また仕事さぼってエ○動画見てるんとちゃうやろな!?」
と、店長の奥さんが後ろから言った。ビクッとなった店長がタブレットを蹴飛ばしてしまう。タブレットは床の上を滑り、バックヤードの奥にある扉の隙間に入ってしまった。その瞬間、扉の隙間からまばゆい光が漏れた。
「あ~あ…向こうに行ってもうたわ…ってか、この扉、何や? こんな扉、前からあったか?」
「あんたっ! サボってんと、早よ仕事し!」
奥さんに怒鳴られ、仕事に戻る店長。消えたタブレットはまた後で回収しよう。今は働かないとまた奥さんに怒られてしまう。業務をこなしているうちに、店長はタブレットの事などすっかり忘れてしまったのだった。
数日後…
誰もいないことを良いことに、バックヤードで、スマホでエ○動画を見ていた店長。ちょうど良いシーンに差し掛かった時だった。
「あの…」
「ちょっと今、良いところなんだよっ、邪魔せんといて!」
「…あの…」
「だから…今良いところなんやって!」
肩を叩かれた店長が手を払おうとした時、見慣れない服を着た男達の姿があった。
「誰やあんたら…勝手に入って来たらあかんで…って、ええええっ!」
バックヤードの扉が開いていることに気づく。そしてその奥に広がる、異国の風景にも……。
「私どもは、ルーメリア国から参りました調査隊です。実は、ある人を探しているのです」
「ある人って?」
「我が国を救って下さるかもしれない、『時給581円の勇者様』を探しているのです」
(時給581円の勇者? それって、俺が作ったあの募集動画のことじゃねぇか……)
「もしかして…こんな板みたいな奴を見たのかい?」
手でタブレットの形を作って調査隊に尋ねる。
「そうです!! その予言の板を見て我々は勇者様を探しに来たのです! その勇者様は今どこに?」
(今どこにって言われてもなぁ…まだ見つかってねぇんだよな…ってか、あの時給で本当に面接に来るんか?)
「勇者様はどこにおられるのですかっ!?」
「えっと…今ちょっと用事で…帰って来たらまた…」
「おおっっ! 勇者様を派遣して下さるのですねっ!」
「あ、ああ…でも…いつ帰ってくるか分からないんだよねぇ~」
「では、勇者様が帰られましたら、こちらをお渡し下さい」
調査隊は、武器と防具の入った箱を店長に渡した。
「それにしても、ここは見たことのないものが沢山ありますな。さすが神の国…少し見学させてもらってよろしいですか?」
調査隊達は、見たことのないものに興味を示しながらどこかへ行ってしまった。
(まぁ…ええか? 最初に面接にきた奴を採用して、そいつを派遣する事にしたろ…誰もいなくなった事やし…続き続きっ!)
一人になった店長は、再びエ○動画を見始めたのだった。




