第12話 終了
リリアとクララにご褒美のキスをもらうはずだった悠斗は、コンビニにいた。
「よぉ、お疲れさん! おっ、その様子じゃなかなか派手にやったみたいやな」
ボロボロの防具を纏う悠斗を見て店長が言った。
「えっ、ど、どうして僕はここに?」
急に現実の世界へと戻されて戸惑う悠斗。
「どうしてって…そりゃお前、時間だからやろ? 初日の勤務お疲れさん!」
どうやらバイトの時間が終わると元に戻されるようだ。
「で、どうだった? 向こうの世界は」
「どうだったって…割に合わないですよ。危うく死ぬところでした」
「そうかそうか! でも生きて帰って来れたんやからええやないか。それにしてもボロボロやなぁ…ほれ、これスペアや」
と言って、バックヤードの奥から、新しい防具が入った箱を持ってきた店長。
「な、なんであるんですか?」
「なんでって…ここにきた調査隊がぎょうさん置いてったんや。ほら、まだまだあるで?」
倉庫の奥に積んである段ボールを指す。めっちゃある。
「そう言えば、国王が言っていたんですけど…派遣した調査隊が戻ってこなかったって…」
「なんや、国王に会ったんか? 一日目からええ働きしよるな。さすがワシが見込んだ男や」
「で、その人達はどうなったんですか?」
「あいつらか? あいつらやったら…ほれ…」
と言って、スマホを悠斗に見せる店長。画面には、キャバクラで羽目を外す数人のおじさん達の写真が浮かんでいる。
「なんか、持ってきた金やら銀やら宝石やらが高く売れたらしくてなぁ。こっちの世界が楽しくて仕方ないみたいや…ほな、そろそろ店閉めようか?」
と、閉店しようとする店長。
「し、閉めるって…ここ、コンビニですよね? 制服にも「24」って書いてあるじゃないですか! まさか店長…今からこの人達と…」
「しーっ、内緒や! それがバレたらワシ、お母ちゃんにこっぴどく叱られてしまうわ…って、お、お母ちゃん!」
店長の後ろに、腕を胸の前で組むおばさんがいる。きっと店長の奥さんなのだろう。全身からゴゴゴゴっと怒りのオーラが立ち上り、今にも炎を放ちそうな勢いだ。
悠斗はバックヤードに戻り、ボロボロになった防具を脱いで帰る支度をした。
そこへ店長がやってくる。
両頬が真っ赤に染まり、鼻血が出ている店長を後目に、悠斗が帰ろうとした時だった。
「ちょい待ち! そのまま帰ったらあかんで」
と言って、店長が小さなボトルとタオルを手に持って悠斗に近づく。
「こっちの世界では、この紋章は消さんとな…」
と言いながら、液体をタオルに染み込ませ、悠斗のおでこを拭く。
「消さないとどうなるんですか?」
「…死ぬ…」
「えええっ!」
「ええか? 帰ってきたら、絶対にこの紋章は消すんやで。かといって、自分一人で消すのはやめときや」
「だ、ダメなんですか?」
「ああ…もし自分で消したら…」
「自分で消したら?」
「…死ぬ…」
「そ、そんなぁ~」
行きも帰りも、勇者の紋章に振り回される悠斗であった。




