第10話 勇者の一撃
見上げるほど大きなドラゴンの出現にたじろぐ悠斗。最初は雑魚キャラから倒して、経験を積んで…と考えていたのに、いきなりのボスクラス。ラスボス感のあるドラゴンを前にどうしていいのか全く思い浮かばない。
「勇者様! 頑張って!」
キラキラした瞳で応援するリリア。期待に応えたい悠斗だったが、どうすることもできない。
(どうしよ、どうしよ…いきなりこんなの無理だって!)
たじろぐ悠斗に向かって、ドラゴンが炎を吐いた。
「わわわわわわわっ!」
リリアをかばいつつ、ギリギリのところで炎を避ける。悠斗は昔から反射神経だけは自信があった。
「勇者様! 素敵っ!」
自分をかばってくれた悠斗をキラキラした眼差しで見つめるリリア。
(さっきは避けられたけど、次も避けられる保証はない。何とかしないと…でも何とかなるのか?)
悠斗が考えていると、
「勇者様っ! 頑張って! 私のために頑張って!」
リリアと違う声がする。
振り向くとそこにはクララの姿が。
「な、なんでこんなところにいるんですかっ! 危ないから早くお城に戻って下さい!」
悠斗がクララのそばに行こうとした瞬間、ドラゴンが再び炎を吐いた。
「危ないっ!」
紅蓮の炎がクララを襲う。悠斗はクララに飛びついた。クララを抱きしめたまま、坂道を転がってゆく。
「だ、大丈夫ですか!? 怪我はありませんかっ?」
「……大丈夫です。私の事を命がけで助けて下さったのですね! ポッ…」
頬を赤らめるクララだったが、反対側からリリアの悲鳴が聞こえた。慌てて振り返ると、ドラゴンが大きく息を吸い始めている。
「やばいっ!」
再び炎を吐く態勢に入ったドラゴンの隙を突き、クララを連れたままリリアの手を引く。
(助けるのが二人になっちゃったよ! 二人を連れたまま逃げるなんて無理だよっ)
戦うしかない。悠斗は腰に差した剣を抜いた。思った以上に軽い。いや、軽すぎる。
(これ、本当に切れるのか?)
そんな事を思っても仕方がない。今は二人を助けないと…。
悠斗は身構えた。だがドラゴンと対峙すると、その迫力に怖じ気付いてしまう。一歩ずつじりじりと後ずさりをする悠斗。
「勇者様っ! 頑張って下さい! 頑張ったら、ほっぺにチュウしてあげますっ!」
たじろぐ悠斗を見て、リリアが言った。
「わ、私もほっぺにチュウしますっ! 頑張って勇者様っ!」
クララも悠斗を応援する。
(ううううっ…怖いけど何とかしなくちゃ…俺一人なら、あの炎は何とか避けられる。そういえば炎を吐く時…)
悠斗はクララを助けた時、ドラゴンが炎を吐く前に尻尾が赤く光ったのを見ていた。もしかしたら、尻尾を切れば炎の攻撃を抑える事ができるかも知れない。
予想通り、尻尾が赤く光り始めている。悠斗は剣を両手でしっかりと握り、その時を待った。
ドラゴンの口が赤く光り、炎が放たれる。悠斗はさっと炎を避けると、ドラゴンの背後に回った。
「よしっ! 今だっ!」
剣を大きく振りかぶり、尻尾に向かって剣を振りかざす。
手応えがあった。
「よしっ! やったっ!」
会心の一撃を食らわせた悠斗。だが、ドラゴンが激しく尻尾を振り回す。
「き、切れてな~い!」
まるで、そんな攻撃屁でもないわっ、と言っているかのように、尻尾を振り回すドラゴン。そしてその尻尾が悠斗を襲う。
「ぐっおおおおおっっ!」
勢いよく吹っ飛ぶ悠斗。
「勇者様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
吹っ飛んでいく悠斗を見て、悲痛の叫び声を上げる二人であった。




