8話
スーパーの中は、大学生たちのテンションでやたら騒がしかった。
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「白菜高っ!」
莉緒が値札を見て声を上げる。
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花音も思わず頷く。
「半分でこの値段なんだ」
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「もやしの方がコスパ最強じゃない?」
近くでカゴを持っていた男子が言う。
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するとすぐ新が返す。
「でも鍋にもやし入れすぎると水出る」
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「急に詳しい」
「一人暮らしなめんな」
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「白菜も結構水出るよね」
花音がカゴを持ちながら言う。
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新がすぐ頷く。
「出る」
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「え、じゃあ何入れればいいの」
莉緒が困った顔をする。
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「豆腐」
「豆腐も水出る」
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「じゃあきのこ」
「きのこは裏切らない」
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その横で、新が鍋つゆコーナーを見ている。
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「あ、キムチ鍋これでよくない?」
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「桃屋?」
花音がパッケージを見る。
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「辛いやつ?」
「結構辛い」
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「やだ」
花音が即答する。
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「ハギー辛いの弱い?」
「弱くはないけど、痛い辛さ嫌」
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「わかる」
新が笑う。
「じゃあエバラにする?」
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「エバラ好き」
莉緒も頷く。
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「急に多数決始まった」
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そのまま結局、
エバラのキムチ鍋の素がカゴに入る。
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どうでもいい会話なのに、
なぜかずっと楽しい。
その横で別の男子が肉コーナーを指差す。
「鍋と言えば肉でしょ!」
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「わかる」
新も普通に頷く。
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「豚バラいる」
「鶏もよくない?」
「両方買えばいいじゃん」
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花音はカゴを持ちながら、そのやり取りを聞いて少し笑う。
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すると新が突然、
「あ、ウインナー入れたい」
と言い出した。
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「え?」
莉緒が笑う。
「子供?」
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「キムチ鍋のウインナーうまいんだって」
「絶対オギー好きな味じゃん」
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さらに別の女子が、
「チーズも入れたくない?」
と言い出す。
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「え、チーズ?」
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「キムチとチーズ合うよ。発酵食品!」
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「あー、それうまそう」
新がすぐ反応する。
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「じゃあチーズ買お」
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「オギー絶対そういうの好きだよね」
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「好き」
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「即答」
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結局、ウインナーもチーズもカゴに入る。
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買い物を終えてレジに向かう途中、
「鍋のあとアイス食べたくない?」
と誰かが言った。
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「分かる!」
「暑い部屋で食べるアイスうまいやつ」
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新が冷凍コーナーを見ながら言う。
「じゃあ買っとく?」
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「何味?」
「スーパーカップがいい」
「イヤ、コスパ考えたら箱アイスでしょ」
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花音はみんなのやり取りを聞きながら思う。
(なんか普通に楽しいな)
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まだ恋なんて、
全然意識していない頃だった。




