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5話
その日の放課後
花音は生物学実習のレポートをやるために、図書館の自習スペースを見渡していた。
けれど、レポート提出期限が近いせいか、どの席もそこそこ埋まっている。
空いている場所を探していると、
「あ、ハギー」
聞き慣れた声がした。
少し離れた四人掛けの机。
新がノートパソコンを開いたまま、こちらを見ている。
向かい側には、花音の知らない女の子が座っていた。
同じようにレポートをしているらしい。
新が自然に隣の席を軽く引く。
「ここ空いてるよ」
花音は少しだけ迷ってから近づく。
「あ、ありがとう」
すると向かいの女の子も普通に顔を上げて、
「どうぞー」
と気軽に言った。
花音は軽く会釈して席に座る。
新はまた画面に視線を戻しながら、
「レポート?」
と小声で聞く。
「うん、生物学実習」
「終わる気しないよな」
向かいの女の子も笑う。
「わかる」
そのまま三人とも、またそれぞれ作業に戻った。
⸻
静かな図書館。
キーボードを打つ音と、紙をめくる音だけが小さく響いていた。
花音は画面を見ながら思う。
(オギーってほんと、誰とでも普通にいるな)
でもその感想に、
まだ特別な意味はなかった。




