3話
「人間科学」の初回講義。
大講義室の前には、すでにかなり人が集まっていた。
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「ほんとに人気なんだね」
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莉緒が周りを見ながら言う。
花音も思わず頷いた。
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「思ったより人多い……」
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二人で空いている席を探しながら教室を見渡す。
すると少し前の方から、新が軽く手を上げた。
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「ハギー、莉緒、こっち」
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その隣には、ちゃんと二席空いている。
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「早……」
莉緒が小さく笑う。
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二人はその席まで行き、花音が新の隣、莉緒がその横に座った。
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「ありがと」
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「どういたしまして」
「人多……」
花音が小さく呟く。
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「人気らしいよ、この授業」
隣で新が言う。
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「みんな楽だから取ってるの?」
「それもあるだろうけど」
新は前の方を見ながら少し笑う。
「普通に先生の話聞きたい人も多いっぽい」
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実際、周りには他学部っぽい学生も多い。
後ろの方では、
「この教授めっちゃ有名だよ」
なんて話している声も聞こえる。
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花音は配られた資料を見ながら、
「へえ……」
と小さく返す。
新は慣れた様子で周りを見渡す。
その途中で、
「あ、いた」
と軽く手を上げる。
少し離れた席の男子が気づいて笑い返した。
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「オギー知り合い多いね」
花音が素直に言う。
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新はあまり気にした様子もなく、
「そう?」
とだけ返す。
そのあとも別の方向から、
「新!」
と声をかけられていた。
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花音はその様子を見ながら、
配られた資料に目を落とす。
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講義が始まると、思っていたより話が面白い。
周りも意外と静かに聞いている。
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花音は途中から普通に講義に集中していた。
ノートの端には、小さくメモが増えていく。
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その横で、新は前を見ながら、
ふと花音のノートを見る。
びっしり書かれている。
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「ハギーちゃんと聞いてるな」
小さく笑いながら呟く。
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花音は視線を上げないまま、
「せっかく来たし」
とだけ返した。




