24話
図書館帰り。
たまたまオギーと帰る時間が一緒になる。
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「今日寒くない?」
なんて普通の話をしながら歩く。
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少し沈黙があって。
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オギーがふと聞く。
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「ハギーさ」
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「前の返事って、まだ変わんない?」
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花音は一瞬、意味が分からなくなる。
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「……え?」
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オギーは少しだけ笑う。
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「いや、オレまだ普通に好きなんだけど」
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さらっと言う。
でも冗談ではない。
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花音の胸が、どくっとする。
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オギーは前を向いたまま続ける。
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「最近普通に一緒いるから、なんか忘れそうになるけど」
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「オレ、一回振られてるからね?」
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少し冗談っぽい言い方。
でも本音。
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花音は何も言えない。
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だって、ついさっき。
自分も好きかもしれないと思ったばかりだったから。
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でも同時に。
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図書館の女の子。
学祭。
鍋。
告白した誰か。
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全部が頭をよぎる。
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オギーは少し歩幅を緩めて、
「……どう?」
と静かに聞く。
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「オギーといるの、楽しいけど」
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「でも、なんか……しんどくなる」
少し冷たい風。
遠くの街灯。
さっきまで普通に話していたのに、今は空気が少しだけ静かだった。
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オギーが歩幅を緩めて、花音を見る。
「しんどいって?」
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花音はすぐには答えられない。
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だって、オギーが悪いわけじゃない。
むしろ、一緒にいると楽しい。
優しいし、自然だし、気を使わなくていい。
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でも。
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花音は視線を落として、小さく言う。
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「……オギーって、誰にでも優しいから」
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オギーは黙って聞いている。
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「女の子とも普通に仲いいし」
「距離近いし」
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花音は少し困ったみたいに笑う。
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「私だけ、って感じがしなくて」
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言葉にした瞬間、自分でも胸が痛くなる。
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「一緒にいて楽しいし……最近、好きなのかもって思った」
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オギーの表情が少しだけ動く。
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でも花音は続ける。
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「だけど、オギーの周りにいる子たちと、自分が何が違うのか分かんなくなる」
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少し沈黙が落ちる。
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花音は慌てるみたいに付け足す。
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「……わかってる」
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「オギーが悪いんじゃないって」
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「オギー、ただ普通に優しいだけだし」
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その声は、少しだけ苦しそうだった。
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オギーはしばらく何も言わない。
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ただ、花音の言葉をちゃんと考えているみたいに前を向いて歩く。
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そして小さく聞く。
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「ハギーはさ」
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「オレが、誰にでも同じに見える?」
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花音は少しだけ迷ってから、
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「……う、ん……」
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小さくうなずく。
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本当は、違っていてほしい。
でも、自分には分からない。
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その答えに、オギーは少しだけ苦笑する。
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傷ついたというより、困ったみたいな顔だった。
……そっか」
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その声は、いつもの軽い感じじゃなかった。
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花音の胸が少し痛くなる。
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オギーは少し前を向いたまま、
「結構、分かりやすくしてるつもりだったんだけどな」
と呟く。
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冗談っぽく聞こえるのに、少しだけ本気が混ざっている。
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花音は何も返せない。
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だって、オギーが悪いわけじゃない。
本当に。
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ただ。
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オギーの周りにはいつも人がいて、
女の子も普通にいて、
その中で自分だけを信じるのが、怖かった。
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少し沈黙が続く。
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それからオギーが、小さく息を吐く。
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「……でも、ハギーがそう感じるのも分かった」
その言葉に、花音の胸が少しだけ苦しくなる。
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「……ごめん」
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思わず、小さく口から出る。
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オギーはすぐに首を横に振った。
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「なんでハギーが謝るの」
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「いや……なんか……」
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うまく説明できない。
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オギーを困らせたいわけじゃない。
傷つけたいわけでもない。
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ただ、自分でもどうしたらいいのか分からないだけだった。
少しの沈黙。
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オギーは歩きながら、困ったみたいに息を吐く。
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それから、少しだけ笑って言う。
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「……じゃあ、おれどうしたらいいかな」
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花音は顔を上げる。
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オギーは冗談っぽく笑おうとしているのに、目だけは真面目だった。
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「ハギーに、ちゃんと好きって伝わるには」
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その言葉に、花音の胸がまた苦しくなる。
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そんなの、自分だって分からない。
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「……わかんない」
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花音は小さく答える。
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「自分でも、何が嫌なのかちゃんと分かってないし……」
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オギーは「そっか」と小さくうなずく。
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それから少し考えるみたいに前を向いて、
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「むずかしいな、ハギー」
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と、困ったように笑った。
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でもその声は、嫌そうではなかった。
ここがやりたくて作ったお話。ここまで来るの、長かった…




