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21/28

21話

大学近くのスーパーは、夕方の学生で少し混んでいた。


⸻


急に決まった鍋会だったけれど、


「行くー!」

「この後バイトでいけない(/ _ ; )」

「あとで向かう」


なんて流れで、気づけばそこそこの人数になっていた。


⸻


結局、10人。


⸻


「多くない?」


花音が思わず言うと、


⸻


エンちゃんが笑う。


「オギー鍋は増えるんだって」


⸻


「なにそれ」


⸻


カゴを持ったまま、みんな適当に店内を歩いていく。


⸻


「白菜意外と安い!」


「え、しめじ安い」


「豆腐絶対いる」


「肉どれ?」


⸻


誰もちゃんと仕切っていないのに、なんとなく買い物が進んでいく。


⸻


オギーは冷蔵ケースの前でしゃがみながら、


「これ安くない?」


と肉のパックを持ち上げる。


⸻


すぐ横から別の女の子が、


「ほんとだ、じゃあそれでよくない?」


と覗き込む。


⸻


花音は少し離れたところで、その様子をぼんやり見る。


⸻


(ほんと自然だな)


⸻


誰といても距離感が変わらない。


だから周りも気を使わない。


⸻


でも時々、その自然さに少しだけ置いていかれる気がする。


⸻


「ハギちゃん、春菊食べる?」


⸻


急にエンちゃんに聞かれて、花音は我に返る。


「え、食べる」


⸻


「じゃあ入れよ」


⸻


カゴの中はもうかなり適当だ。


白菜、豆腐、肉、きのこ、大量のもやし。


⸻


莉緒が笑う。


「ほんとに安い鍋になってきた」


⸻


オギーも笑いながら、


「学生鍋だから」


⸻


その声に、周りもまた笑う。


⸻


スーパーの蛍光灯の下。


特別なことなんて何もないのに、

なぜか少しだけ楽しい。


⸻


花音はそんな時間の中に、自分もちゃんと混ざっていることを感じていた。


スーパーの鍋つゆコーナーの前で、みんな足を止める。


⸻


「で、結局なに鍋?」


⸻


エンちゃんが棚を見ながら言う。


⸻


「寄せ鍋安定じゃない?」


と誰かが言えば、


⸻


莉緒はすぐ、


「でもキムチも食べたい」


⸻


「また服に匂いつくじゃん」


⸻


「それはそう」


⸻


わちゃわちゃ話している横で、オギーが棚の下段を見て、


「あ、豆乳安い」


⸻


紙パックを持ち上げる。


⸻


「豆乳鍋にする?」


⸻


すると別の子が、


「えー、豆乳鍋好き」


⸻


「でも当たり外れあるよね」


⸻


「味噌入れたらおいしくない?」


⸻


「味噌豆乳鍋?」


⸻


「なんか急に強そう」


⸻


周りが笑う。


⸻


花音もつられて少し笑う。


⸻


オギーは鍋つゆを見比べながら、


「まあ失敗しても鍋だし」


⸻


「雑」


莉緒が即ツッコミを入れる。


⸻


結局、


「じゃあ豆乳ベースで、味噌ちょっと入れてみる?」


という、なんとなくのノリで決まる。


⸻


「絶対あとで適当に調整するやつだ」


⸻


「学生鍋なんてそんなもん」


⸻


カゴの中に鍋つゆが入れられる。


⸻


そのやり取りを見ながら、花音は少しだけ思う。


⸻


こういう時間のオギーは、

特別誰かに優しいわけじゃない。


でも自然にみんなを会話に入れて、

気づけば空気がまとまっている。


⸻


だから周りに人が集まるんだろうな、と、なんとなく思った。

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