21話
大学近くのスーパーは、夕方の学生で少し混んでいた。
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急に決まった鍋会だったけれど、
「行くー!」
「この後バイトでいけない(/ _ ; )」
「あとで向かう」
なんて流れで、気づけばそこそこの人数になっていた。
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結局、10人。
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「多くない?」
花音が思わず言うと、
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エンちゃんが笑う。
「オギー鍋は増えるんだって」
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「なにそれ」
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カゴを持ったまま、みんな適当に店内を歩いていく。
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「白菜意外と安い!」
「え、しめじ安い」
「豆腐絶対いる」
「肉どれ?」
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誰もちゃんと仕切っていないのに、なんとなく買い物が進んでいく。
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オギーは冷蔵ケースの前でしゃがみながら、
「これ安くない?」
と肉のパックを持ち上げる。
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すぐ横から別の女の子が、
「ほんとだ、じゃあそれでよくない?」
と覗き込む。
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花音は少し離れたところで、その様子をぼんやり見る。
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(ほんと自然だな)
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誰といても距離感が変わらない。
だから周りも気を使わない。
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でも時々、その自然さに少しだけ置いていかれる気がする。
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「ハギちゃん、春菊食べる?」
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急にエンちゃんに聞かれて、花音は我に返る。
「え、食べる」
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「じゃあ入れよ」
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カゴの中はもうかなり適当だ。
白菜、豆腐、肉、きのこ、大量のもやし。
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莉緒が笑う。
「ほんとに安い鍋になってきた」
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オギーも笑いながら、
「学生鍋だから」
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その声に、周りもまた笑う。
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スーパーの蛍光灯の下。
特別なことなんて何もないのに、
なぜか少しだけ楽しい。
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花音はそんな時間の中に、自分もちゃんと混ざっていることを感じていた。
スーパーの鍋つゆコーナーの前で、みんな足を止める。
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「で、結局なに鍋?」
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エンちゃんが棚を見ながら言う。
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「寄せ鍋安定じゃない?」
と誰かが言えば、
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莉緒はすぐ、
「でもキムチも食べたい」
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「また服に匂いつくじゃん」
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「それはそう」
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わちゃわちゃ話している横で、オギーが棚の下段を見て、
「あ、豆乳安い」
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紙パックを持ち上げる。
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「豆乳鍋にする?」
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すると別の子が、
「えー、豆乳鍋好き」
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「でも当たり外れあるよね」
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「味噌入れたらおいしくない?」
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「味噌豆乳鍋?」
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「なんか急に強そう」
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周りが笑う。
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花音もつられて少し笑う。
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オギーは鍋つゆを見比べながら、
「まあ失敗しても鍋だし」
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「雑」
莉緒が即ツッコミを入れる。
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結局、
「じゃあ豆乳ベースで、味噌ちょっと入れてみる?」
という、なんとなくのノリで決まる。
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「絶対あとで適当に調整するやつだ」
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「学生鍋なんてそんなもん」
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カゴの中に鍋つゆが入れられる。
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そのやり取りを見ながら、花音は少しだけ思う。
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こういう時間のオギーは、
特別誰かに優しいわけじゃない。
でも自然にみんなを会話に入れて、
気づけば空気がまとまっている。
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だから周りに人が集まるんだろうな、と、なんとなく思った。




