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13/28

13話

試験が終わったその日。


キャンパスには一気に解放感が広がっていて、みんなのテンションもどこか軽い。


莉緒がスマホを見ながら言う。


「ねえ、今日さ」


「花火やらない?」


⸻


その一言で、空気が決まる。


エンちゃんも笑って、


「いいじゃん、やろやろ」


⸻


気づけば、いつものメンバーが集まっていた。


コンビニで花火と飲み物を買って、大学近くの川沿いへ向かう。


⸻


夕方の空はまだ少し明るい。


でも風はもう夜の気配を含んでいて、夏の終わりみたいな匂いがする。


⸻


花音は袋を持ちながら歩く。


隣には莉緒、その少し前に新がいて、後ろからエンちゃんたちが笑いながら続く。


⸻


河川敷に着くと、誰かが言う。


「ここでいいじゃん」


⸻


地面に座って、花火を開ける。


ライターの火がついて、一気に世界が変わる。


⸻


パッ、と光る線香花火。


笑い声。


小さな悲鳴。


誰かがふざけて走る。


⸻


新は特に騒ぐわけでもなく、

でもちゃんとそこにいる。


誰かに火をつけてあげたり、

落ちた花火を拾ったり。


いつも通りの距離感で。


⸻


花音はその様子を見ながら、


(ほんとに、誰にでもこうなんだな)


と、少しだけ思う。


⸻


でも同時に、


(でも、こういう時間は楽しい)


とも思っている。


⸻


時間が進むにつれて、花火はどんどん減っていく。


空気が少し静かになる。


⸻


誰かが言う。


「もう終わりじゃない?」


⸻


片付けが始まる。


袋にゴミをまとめて、立ち上がる。


⸻


人が少しずつ帰っていく。


エンちゃんたちが先に別方向へ。


莉緒も「またねー」と手を振った。


花音も駅の方へ向かおうとして、


「じゃあ私も——」


と言いかける。


その時だった。


⸻


「ハギー」


⸻


新が少しだけ真面目な声で呼ぶ。


⸻


「……ちょっといい?」


⸻


花音は一瞬だけ目を瞬かせる。


⸻


「え?」


⸻


「少しだけ」


⸻


その言い方が、

いつもと少し違った。


⸻


「……うん」


⸻


莉緒たちはもう少し先を歩いている。


新はその背中を見送ってから、

花音の隣へ並んだ。


⸻


夜風が少し冷たい。


遠くではまだ誰かの笑い声が聞こえる。


でも、自分たちの周りだけが少し静かだった。


⸻


「帰り、電車だっけ」


⸻


「うん」


⸻


「駅まで送る」


⸻


二人でゆっくり歩き出す。


さっきまでの騒がしさが嘘みたいに、

足音だけが静かに響く。


⸻


しばらく歩いたあと、

新がぽつりと言う。


⸻


「今日さ」


⸻


花音が顔を向ける。


⸻


新は少しだけ笑ってから、


「やっぱ楽しかったね」


⸻


花音も小さくうなずく。


「うん」


⸻


そして、少し間が空く。


⸻


新が前を向いたまま呼ぶ。


⸻


「ハギー」


⸻


ここで空気が変わる。


⸻


「オレ、ハギーのこと好きなんだ」


⸻


もう一度、ちゃんと目を見る。


⸻


「付き合ってくれないかな?」


⸻



花音の足が、一瞬だけ止まりかける。


⸻


花火の余韻みたいに、言葉だけが静かに残る。


⸻


夜の空気の中で、

その一言だけが少し重さを持つ。


⸻


花音はすぐに返せない。


ただ、隣を歩く新を見ている。


⸻


夏の終わりみたいな夜の中で、

関係だけが静かに形を変え始める。


やっと折り返しです

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