第11話「最期」
練習が終わり悠馬と聖菜は並んで歩き出した。
「聖菜。ちょっと公園で話していかない?」
大学を出てすぐの公園の横を通ったとき、悠馬は聖菜に声を掛けた。
悠馬は近くの自動販売機でコーヒーとミルクティーを買い、ベンチに座る聖菜にミルクティーを渡した。
「あ……ありがとう……」
聖菜両手で渡された缶を持ちながら言った。
「なんか……珍しいね。悠馬が話そうとか言ってくれるの……」
聖菜は少しはにかみながら言った。
聖菜が缶を開け、ミルクティーを飲む。
持ち上げた左手首に確かに切り傷があった。
ふと、聖菜が自分の手首を見た。
その後、悠馬の顔を見て、悠馬が手首を見ていることに気づいた。
「あ……気になる?」
聖菜は苦しそうに笑いながら言った。
「……いつから……?」
悠馬はかける言葉が分からず、少しの沈黙の後聞いた。
「うーん……高校生の始めくらいから。親が離婚したくらいからかな……」
聖菜は下を向きながら言った。
「辛いことがあるなら話してほしいと思ってる。」
悠馬は聖菜の横顔を見ながら言った。
「辛いことか……」
聖菜は片手で頬を触りながら言った。
「辛いから死にたい……ってよく言うけど、そんなに簡単なものじゃないよ。幸せでこれ以上の幸せが望めないからここで終わっておきたいってこともある。」
聖菜は真剣な顔で言った。
「ここで終わってしまいたい……最期にしたいって思う時があるの……」
悠馬を見た聖菜の顔には涙が滲んでいた。
聖菜の言葉を聞いた瞬間、悠馬は急に胸が苦しく締めつけられる感覚を感じた。
どうしよう……聖菜が居なくなる……どうしよう……
「そんなこと言わないでくれ……」
悠馬は顔を両手で覆って俯きながら言った。
夕闇の中、もう蝉の声は静かになり、道路を走る車の音だけが響いていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
悠馬は息を切らしながら階段を駆け上がっていた。
早く!もっと早く!!
階段を登り切って屋上に着いた。
どこだ?どこだ!?
悠馬は必死で辺りを見渡したが人影は見当たらない。
ドスン!
鈍い音が聞こえた。
涙がポタポタと自然に流れる。
悠馬は必死で目を開けた。
はぁ……はぁ……はぁ……
自然と呼吸が荒くなる。
まただ。
どうしても間に合わない。
悠馬は立ち上がろうと腕に力を入れた。
ダメだ……やばい……
悠馬は目をつぶった。
「お疲れー!」
詩織がプレハブの扉を開けて言う。
「あれ?悠馬は?」
中にいた鈴音と聖菜に問いかけた。
「それが……まだ来てないんだ。おかしいね、もう来る時間なのに……」
鈴音がマイクを調整しながら言った。
聖菜は2人の会話を聞きながら不安気な表情をしていた。




