第7話「露骨」
「はい、本日はここまで。何か質問がある人は終わったら聞きに来てくださーい……」
教授の声とともにガサガサと荷物をまとめる周囲の音が響く。
アリストテレスの社会学……
今まで考えもしなかったような話だ。
悠馬は大きなあくびを手で押さえながら席から立ち上がった。
「…………」
悠馬は立ち上がって数秒経った後に後ろを振り返った。
小柄で細身の女性が大きなリュックに荷物をまとめている。
見た目は清楚な印象で、桃色のセーターとスカートを着ていた。
悠馬は女性の近くに向かって歩き出した。
バタン!
悠馬が女性の近くに辿り着くと同時に女性は気を失って倒れた。
悠馬は女性を両腕で支えながら座り込んだ。
「大丈夫ですか!?」
悠馬は女性の顔を見て言った。
それと同時にセーターの袖が捲れ、手首に傷跡があることに気づいた。
周囲は生徒のざわめきに包まれていた。
「筑紫さーん……すみません!目を覚まされましたよー!!」
医務室の看護師が部屋の外に座っている悠馬に声を掛けた。
「はーい……」
悠馬は答えたものの戸惑っていた。
気を失った女性を助けたのはいいが、知らない人だ。
何と声を掛けていいかも分からない。
悠馬は恐る恐る医務室を覗いた。
「あっ……本当にすみませんでした!!助けてもらってありがとうございます!」
女性は深々と頭を下げた。
「私、貧血気味で……時折こういうことがあるんです……」
女性は申し訳なさそうに悠馬の顔を見ている。
「いえいえ……無事でよかったです。」
悠馬は女性の顔を見ながら言った。
倒れた時には気づかなかったが、女性の顔は整っていて透明感のある涼しげな見た目だった。
「とりあえず気をつけて帰ってくださいね。」
医務室の看護師が言い、2人は校舎の外へと歩き出した。
「本当にすみませんでした……」
女性はとぼとぼと歩いている。
女性はふと自動販売機を見つけ、立ち止まった。
「安いですけど、何かお礼させて下さい!」
女性は財布を取り出し、小銭を数枚自動販売機に入れた。
「好きなの押してください!」
女性は笑ってこっちを見ている。
「え……いいんですか?じゃあ……」
悠馬は自動販売機に近づき、アイスコーヒーのボタンを押した。
女性も自動販売機に近づき、ミルクティーのボタンを押し、2人は近くのベンチに座った。
「コーヒーですか……私コーヒー飲めないんですよ。人生の半分損してるってよく言われます……」
女性は買ったミルクティーのラベルを見ながら言った。
「あ、すみません……そう言えば名前を聞いてませんでした。1年生ですか?」
女性は悠馬の顔を見て聞いた。
「あ……筑紫悠馬って言います。1年生です。」
悠馬は恥ずかしそうに答えた。
「私も1年生です。赤嶺聖菜って言います。」
女性はニコリと笑った。
「クリスマス生まれなんです。赤に聖なる……って露骨でしょ?」
女性の言葉に悠馬は引き込まれて行くのを感じた。




